【最終回】二人の歩く道
嵐のような一年だった。
その中心にいたのは一人の男の子。わたしが見出した二歳年下の少年だ。
季節は春。そして三月は別れの月だ。わたしは都立商業高校副業部の部長パイセン。今日、わたしは卒業する。この学校から。そして年下の彼氏からも。
体育館の裏。この学校ではなんらかの告白をする定番スポットになっている。彼がやってきた。
「卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
「伝えたいことがあります」
「わたしもよ。先に言ってもいいかしら」
「はい」
「別れましょう」
「はい」
「驚かないのね」
「同じことを考えていましたから」
「よかった。じゃあわたしがアナタをふったことにしてもいいかしら」
「遠慮なくどうぞ。そして、ごめんなさい」
わかっていた。彼の心に別の誰かが棲んでいることは。それでも諦めきれなかった。女として贋作に負けたくなかったから。
どちらを選ぶかを決めるのは彼だというのに。恋愛ははじき出された者の負けだ。結局、わたしは彼の世界に留まることができなかった。
「本当に楽しかった。そして好きだった」
「ボクもです」
「こよりちゃんと仲良くね」
「はい。こんなボクを見つけてくれてありがとうございました」
「副業部をお願い」
「はい」
「さようなら」
振り返り正門に向かって歩き出す。涙は見せたくなかった。正門をでるとひときわ大きくて白い外車が止まっていた。猛牛社の白い悪魔。姉さんの愛車だ。
「よっ」
「姉さん、違法駐車よ」
「卒業式くらい大目に見なさいよ」
「仕方ないわね」
「お別れしてきたか」
「うん」
駄目だ。もう我慢できない。わたしは姉に抱きついて声をあげて泣いた。
わたしの初恋。さようなら。
ちゅんちゅん
「あんたたち!いいかげん起きなさいよ!!」
母さんの声がした。今日から二年生か。また騒がしい新学期が始まる。ワクワクするようなドキドキするようなウンザリもしそうだ。
ガチャ
「「あ」」
部屋を出ると弟のこよりと鉢合わせした。ボクの学校の真新しい制服を着ていた。もちろん女子の。
こよりはニッコリ笑って口を開こうとする。
「かわいいぞ」
先制攻撃だ。どうボクかわいいかな?と聞くつもりだったのだろう。弟の顔をみると真っ赤になっていた。
本当にこいつはかわいい。いますぐ抱きしめてキスしたいくらいに。
「あんたたち!百合ちゃんいつまで待たせるの!」
「行くぞ」
「うん」
四月。ボクたちの新学期が始まる。
(終わり)
はい異世界シニアです。
なんとかゴールすることができました。やはり作品はちゃんと終わらせることに価値があると思います。
副業部のこれからですが、三年になった合法ロリ先輩が部長になり、オタクくんとオナチューは副部長に。そして新入生のこより&百合も入部します。
副業部は三美姫から四美姫にパワーアップ。
続きも書いてみたい想いもありますが、マンネリ化しそうなのでいまはやめておきます。夏になれば恒例の海の家のアルバイト、同人誌即売会も楽しそうです。
もちろんポンコツ店長にパイセンもそこには現れます。
百合ちゃんは、高校を卒業するまでこよりちゃんを諦めることができそうにありません。
野獣先輩もいろいろと関わってくるでしょう。
出会いと別れを繰り返して人は生きていきます。世の中はきれいごとばかりではありません。
それでもオタクくんとこよりちゃんが幸せに暮らせる未来をわたしは信じています。
ありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう。