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姉と妹のNTR 2(略してアネイモ)

彼は旦那とどこか似ていた。


「店長、焼きそばできました!」

「あいよ!!どんどん焼いて!!」

「はい!!」


カンカンカン、ジャージャーという小気味よいヘラと鉄板のぶつかる音とソースの焦げる匂いが屋台の周囲に充満する。


何年ぶりだろう。このソースの焦げる匂いと男の汗ばんだ背中をみながら露天で焼きそばを売るのは・・・。


わたしは店長。都立商業高校・副業部の部長の姉。妹のデートにいちばん安い国産自動車、オッサンNTRエヌ・ティー・アールを貸して、その見返りにアルバイト人員を確保させた計算高い女だ。


今日は年に一度、静岡県静岡市清水区で開催されるフジヤマ・コスプレ・フェスティバルの飲食のまとめ役を頼まれている。ついでに売り子のコスプレ・ウェイトレスも調達しなければならなかった。


本音をいえば助かった。なぜなら副業部の部員たちは有能かつ美少女ばかりだったから。おかげで夏休みの海の家では稼がせてもらった。


あ、そこのキミ。ちゃんとエピソード13「ファースト・ラブ」を読み返すように。


このオタク眼鏡くんにもお礼をしないとな。彼の熱気で汗ばんだ背中をみながら昔をつい思い出してしまう。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


時は七年前。そして舞台はあの海の家。


わたしは高校生さいごの夏休みに彼の海の家でアルバイトをしていた。


「店長!わたし店長のお嫁さんになってこの店を大きくします!」

「ははは、こんなオジサンのどこがいいんだい」

「だってカッコいいじゃないですか。わたし枯れ専ですし」

「うん、じゃあ君が高校を卒業してお互い独り身なら考えようね」

「はい!わたし頑張って卒業します!!」


高校卒業後、わたしはすぐに枯れ・・・いや彼と結婚した。年齢差はあったが幸せだった。けれど、その幸せも長くは続かなかった。


彼に腫瘍がみつかったのだ。そこからはあっという間だった。わたしの新婚生活は二年も続かなかった。


彼は飲食店チェーンのオーナー。財産に惹かれたわけではけっしてなかった。そこからは彼の会社を守るために必死に努力した。


取引先に女性かつ若いオーナーと舐められることもあった。テレビで特集されることもあった。おかげで会社はどんどん大きくなった。気が付くと独り身のまま二十五歳になっていた。


金だけはあるからつい自動車ばかり買ってしまう。車は彼の唯一の趣味でもあった。じつはオッサンNTRは彼の形見だ。


「再婚どころか、若いツバメと遊ぶ心の余裕もなかったな」


だって本当に愛していたんだよ、わたし。アナタのこと。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「店長!つぎも焼けました!!」

「あ、はい!」


彼の声で我にかえる。いかんいかん。感傷にひたっている場合じゃない。


「さあ、次もどんどん焼きますよ!!」


彼の元気な姿を横目にみながら、胸がキュンとした自分にとまどうわたしだった。


「こよりん!こっち目線ちょうだい!!」

「ゆりりん!そのメス顔さいこう!!もっとひっついて!!こよりんに腕をからませて」

「ゆりりん!キスぎりぎりで顔をとめて!」


カメラマンさんの指示が熱い。


わたしはゆりりん。ティーン向けファッション雑誌・ポップティーンの読者モデル。本名は百合ゆりだ。


雑誌の看板企画「姉妹デート」の撮影で今日は静岡県にまで出張している。お相手はわたしの大切なひと「こよりん」こと、こよりちゃん。


今回は世界的に有名なコスプレイベント会場でコスプレしてデートという設定で、ソシャゲで有名な双子のキャラクター、アルナとプルナをわたしたちが演じることになった。


肩までの短い水色のウィッグを揺らしてこよりちゃんのアルナが舞う。

それにあわせて灰色のウィッグを揺らしたプルナも舞う。


わたしたちはコスプレ会場でダンスを踊っていた。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「百合ちゃん、おつかれさま」

「こよりちゃんもおつかれさま!」

「楽しかったね」

「うん本当に楽しかった。こよりちゃんリード上手なんだもん」


午前中で撮影も終わり、ポップティーンの撮影班は東京に帰って行った。


ボクたちも一緒に車で帰るかと聞かれたが、お兄ちゃんが会場にいるのにボクだけ帰るわけにはいかない。なにしろお兄ちゃんの隣にはあの女。ぼくの上位互換かつ天敵てきがいる。


自費で帰ると伝え、そのままコスプレ会場に残ることにした。衣装もつぎに返却すればいいとのことで、そのまま着用していた。


百合ちゃんはとうぜんのように残ってくれた。ボクの隣にわたしがいるのは当たり前みたいな顔をして。ボクは一度、彼女からの告白を断っている。それでも彼女は隣にいようとしてくれている。


心が痛まないといえば嘘になる。


「こら」

コツンと彼女のゲンコツがボクのおでこをノックする。

「また悩んでいるんでしょ。ほんとこよりちゃんは優しいんだから」

「だって・・・百合ちゃん」

「しつこい!そんなこと言ってるとまたキスしちゃうよ」

「いいよ」

「へあっ」


彼女の心を知りながら裏切っているのはボクだ。結婚の約束をしたのに反故にしたのもボク。いまも彼女の青春の大切な時間を奪っているのもボク。せめて彼女のしたいことを叶えてあげたい。


「えっと・・いいの。本当にしちゃうよ。するよ」

「うん」


周囲を見回し、人がこないことを確認したあと百合ちゃんはボクにキスをした。


(お兄ちゃん)


ボクは百合ちゃんの唇を感じながら、黒縁眼鏡でレンズの奥から優しい瞳でボクをみる兄を思い出していた。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


そこに天国があった。


だってボクの大好きな音音ネネクミのカラバリ三人組がコスプレ会場でウエイトレスしてるんだよ。感動しないほうがどうかしている。


もちろんクミを演じるのは合法ロリでホモ大好きな副部長。水色クールな雪クミを演じるのは部長のパイセン。元気一発ガンバルゾー的なピンク、桜クミは同級生のオナチュー。


「本当はウェイトレス姿を考えていたんだけど、ここはコスプレ会場だからね」


店長ナイス。しかもあの衣装はオーダーメイド版じゃないか。


「副業部で買い取ったの」

「こんなこともあろうかと・・・だ」

「姫、先輩、ナイス判断っす!!」


ミニスカートがひらひら翻る。スパッツを下に履いているとわかっていても注目してしまうのは男のさがだろう。


「ふーん・・・ボクというものがありながら他の女の尻を凝視するんだね、お兄ちゃん」


ゾクっ。振り返るとアルナとプルナのコスプレをした弟とその幼馴染が立っていた。


「本当よ、この鬼畜眼鏡!!男ってイヤラシイ!!」

「あ、百合ちゃん。ボクもいちおう男なんだけど」

「ちがっ。こよりちゃんはこよりちゃんだものっ」

「遺伝子半分以上は同じなんだけどね、ボクも」

「うるさい!!このエロメガネ!!」


いまは休憩中。空いたテーブルで自分がつくった焼きそばを食べているボクの隣にこよりが座る。とうぜんその隣には百合ちゃんが座った。


ボクの隣にこより、こよりの隣に百合ちゃん。この並びは鉄板だ。きっと三人いっしょに歩いたら邪魔だろうなあ。横に広がっちゃって。


「お兄ちゃんの焼きそば美味しそう!一口ちょうだい!!」

「ああ、いいぞ」

「あーん」

「「え」」


こよりはいまかいまかと餌をまつペンギンみたいに目を閉じてボクのあーんを待っている。後ろにはわたしでさえしたことがないあーんをするだと、ロコすぞこの野郎みたいな顔をして百合ちゃんが睨んでいた。


えい。こよりの小さな口に焼きそばを放り込む。


「うん、お兄ちゃんの・・・・美味しい」


だからそれやめろって。誤解を招くだろ。こよりの後ろの百合ちゃんの瞳からハイライトが消えていたことには恐怖を少し感じたけれど。


「お、こよりちゃんと百合ちゃんじゃないか」

「店長!大繁盛ですね!!」

「ああ、君たちも仕事だったのか」

「ええ、撮影は午前中に終わりました。あとは帰るだけです」

「ほーう」


あ、このひといま悪いこと考えてる。


「どうだろう二人とも。四時までアルバイトしないか」

「日当は一人二万円。帰りの新幹線代も出そう」

「「やります!!」」


そりゃやるよなあ。こより、お前今日だけで五万円以上稼いでることになるぞ。末恐ろしい中学生だよ。


そこから四時までは地獄だった。


なにしろクミ三人組とレッドストレージの二人組がウエイトレスをする露天だよ。カメラマンだけでなく、同じコスプレイヤーたち、一般の見学者たちも露天に殺到した。


「こよりん!焼きそば三つ!!」

「ゆりりん!わたしも!!そして食べさせてええ!!」

「はーい。おまたせ、お兄ちゃん」

「ほら、さっさとお口を開けなさい。食べさせてあげる」


おい、お前らサービスしすぎ。


結局、ボクたちの焼きそばは三時には完売してしまった。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「お疲れ様、もう仕事はないから四時まで裏で休んでおきな」

「はあい店長」


もうクタクタだ。完全にグロッキーだ。後片付けは他のスタッフさんがしてくれるらしい。


露天裏には簡易ベンチがいくつかおいてあった。早朝から動き回ったボクの意識はいまにも飛ぶ寸前。ふらふら・・・すとん。このまま横になって寝てしまおう。


すとん。あれ・・・誰か隣に座った。誰だ。こよりだろうか。それともパイセンだろうか。


「お疲れさま。いいから少し寝なさい」


誰だ。だめだもう意識が途切れる。ボクは彼女の膝を枕にして寝てしまった。


後輩がいない。こよりちゃんたち二人は忙しそうに給仕している。今日は彼とまったく話ができなかった。恋人なのだから、せめて数分でも話がしたい。できればキスもしたい。


そういえば露天の裏にスタッフ用の休憩所があった。そこで休んでいるのならこれはチャンスだ。


客のオーダーが途切れたところで露天の裏に回る。いた。


でも彼は女の膝枕でスヤスヤと寝ていた。あの女は誰。見覚えのあるTシャツ。わたしより大きな胸。見慣れた顔。


姉さん。


声をかけるタイミングを失った妹のわたし。


姉はわたしの彼氏である後輩の前髪をそっとかきあげて、彼の顔にあたまを降ろす。


大人のキスをしていた。


はい異世界シニアです。


ケンとメリーで、ケンメリ。


姉と妹でアネイモ。


つまらないですね。そういえばこの作品、キーワードに恋愛を入れてないのですけれど。毎回恋愛モノになっていませんか。


きっと気のせい。木の妖精。


パイセンのお姉さんの設定を考え深堀りしたら今回のお話になりました。やはり人の設定を深く考えるのはいいですね。


読者様にもお姉さん、こよりちゃん、百合ちゃん、オタクくんのせつない気持ちが伝わってくれることを願っています。


次回サイドジョブ。エピソードタイトル未定ながら帰り道。



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