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姉と妹のNTR

「姉さん、お願いがあるのだけれど・・・」


珍しい。妹がわたしに頼るなんて。部活の夏合宿で部員をアルバイトさせてほしいと頼まれた以来だ。


「いいわ、なんでも言いなさい」

「・・するから車を貸して欲しいの」

「え?なんて??何をするって」

「デートするから車を貸してほしいの!!」


驚いた。あのカタブツの妹がデートだなんて。しかも車を借りたいときた。ということは相手は免許も持っていない年下くんか。


ふと夏に酔った勢いで大人のキス(ベロチュー)をかました純情童貞メガネくんを思い出して、すこし胸が熱くなった。


「ぶつけてしまうかもしれないから、一番安い車でいいの」

「わかった。一番安いのね」

「ありがとう」

「整備も万全。保険もしっかりしてるから遠慮なくぶつけてきなさい」

「ぶつけないわよ、たぶん」

「あと車内ではキスまでにすること」

「!!」

妹の顔が興奮で真っ赤になる。本当にその男が好きなんだろう。なんだかうらやましくなった。


「車は貸してあげる。そのかわりわたしの頼みも聞いてちょうだい」

「頼み?」

「アルバイトよ。静岡で開催されるフジヤマ・コスプレ・フェスティバルでうちも出店するの」

「その手伝いを副業部でして。女の子はコスプレ、男は調理。日当は一人三万円。静岡まで車は出すから」

「やるわ。車のためなら」

「日程とかはそこのチラシで確認して。よろしくさん」

「ええ、おやすみなさい」


数日後、わたしの持っている車のなかで一番安いオッサンNTRを妹に貸してあげた。帰宅した妹が鍵を返すときの嬉しそうな顔が忘れられない。


きっと年下の彼とうまくデートできたのだろう。こちらもなんだか嬉しくなった。


「でもエンジン音とかうるさくて車内で会話がほとんどできなかったわ」


それはしゃーなし。だってあれ、ほとんどレーシングマシンだもの。国内最強のバケモンよ。伝えなかったけど。


知らないということは恐ろしい。そんなバケモンを平然と貸す姉と乗りこなす妹であった。


「FCFでアルバイトをします」


ホワイトボードの前で部長のパイセンが宣言する。すでに皆の前にはチラシが配布されていた。


「静岡っすかー!行きたいっす!!」

「本場でみる富士山もいいわね」

「日当などの詳細はチラシの裏だ」

「女子はコスプレですか」

「ああ、こよりちゃんと百合ちゃんにも声をかけてくれ」


大丈夫。こよりはボクの行くところなら黙っててもついてくる。そして百合ちゃんもついてくることも確定している。


キーンコーンカーンコーン。


「それでは解散!!」

「姫、お先に」

「姫、オタクくん、お先っす!」

「お疲れです」

「あ、後輩。部室の片付けを手伝ってくれないか」

「わかりました」


パタン。部室のドアが閉まる。振り返るとパイセンが抱きついてきた。


「キスをします」


パイセンとのセカンドキスは一度目よりも少し長いものだった。


ふと頭の片隅で制服についたパイセンの残り香をどうやって消そうと考えている自分がいた。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


某月某日の日曜日。


早朝の新東名高速道路を真っ赤な自動車が静岡県にむけて走行していた。


ドロドロドロドロドロドロ


これ猛牛社のウルズ・ハントだよなあ。たしか三千万円とかする。


「すまないね、うるさい車で」

「仕方ないですよ、店長。猛牛ですから」

「お、車くわしいんだ」

「男の夢ですからね、スーパーカーは」

「そうかそうか。いいよなスーパーカーは。ガハハハ」


今回の副業部のアルバイトは静岡県の清水区で開催されるフジヤマ・コスプレ・フェスティバル。略してFCFだ。


年に一度のお祭りで世界中からコスプレイヤーが静岡に集まる。とうぜんカメラマンやマスコミの取材もくる。


そうなると飲食系は稼ぎ時だ。


パイセンのお姉さん(店長)はそのまとめ役で、調理のできる男子とコスプレでウエイトレスできる女子を探していた。


すでに夏、海の家で働いたボクたち副業部に声がかかるのは必然だったのかもしれない。


「それにしても・・こよりちゃん達は残念だったな」

「読者モデルの仕事が先に入ってたんですから仕方ないですよ」


みんなに妹と思われているこより(男子)と幼なじみの百合ちゃん(女子)は、ティーン向けファッション雑誌「ポップティーン」で読者モデルのアルバイトをしている。


二人の姉妹デート企画はいまや雑誌の看板になっており、その撮影とFCFが重なってしまったのだ。


「どんなことをしてもお兄ちゃんに付いていく」

「こよりちゃんの行くところがわたしの行くところ」


てっきり駄々をこねられるかと思ったのだが、二人とも意外にあっさり折れた。


「仕事だからさ。お兄ちゃん楽しんできてよ」

「わたしはこよりちゃんさえいればいいもん」


なんだか拍子抜けした。あいつも百合ちゃんと一緒に過ごすことでお兄ちゃん大好きっ子も卒業していくのかな。


ズキン。なんだろう、この胸の痛みは。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


東京から高速を飛ばして約二時間半。ぼくたちは静岡県の清水区に到着していた。


天気は快晴。降水確率もゼロパーセントで絶好のイベント日和だ。


バタン。車を降りるボクたち。


「よし女子は妹に付いていけ。オタクくんはわたしと料理の仕込みだ」

「「「はい!!」」」


よーし頑張るぞ。すでに会場はできあがっており、男女あわせて数十人のコスプレイヤーが富士山をバックに撮影していた。


あれが富士山か。大きいな。


ふと、ひときわオーラを放つ二人組のコスプレイヤーが目に入った。あれはソシャゲで一番人気なレッド・ストレージのキャラクターだ。


たしか髪の毛とハイロー(天使の輪)が水色の女の子がアルナ。髪の毛は灰色でハイローが赤色の女の子がプルナだったか。


とにかくクオリティが高かった。あまりの可愛さに少し見惚れてしまう。


いけない。よそ見ばかりしていたら店長に置いていかれてしまう。


その時だった。ボクに向かってアルナが全速力で走ってくる。


いや突っ込んできた。


「お兄ちゃん!!」

(抱きっ)

「こよりちゃんから離れなさい!この鬼畜眼鏡!!」


なんとアルナはこより。プルナは百合ちゃんだった。


「お兄ちゃん!ボク待ってたよ!」


あー、撮影でFCFへ来ることになってたのか。どうりで大人しく引き下がるわけだ。


それでもこよりの姿を見て心の底から元気がわいてきたボクであった。


はい異世界シニアです。


今回もいきなり後書きから書いています。エピソードタイトルがNTRネトラレの略なので敬遠された読者様もいるかもしれません。


本作でのNTRは、パイセンお姉さんが乗る自動車の名前です。メーカー名はオッサン、車名はエヌ・ティー・アールと読みます。


ね、健全でしょ。


もちろんわざと誤解されるような単語を選んでつけております。BLにしてもNTRにしても。


初めにパイセンがデートに乗ってきたエピソードもわざわざ後から車名をGTRからNTRに変更したくらいですから。


次もFCFアルバイト編となります。


次回サイドジョブ。エピソードタイトル未定。


どうぞお楽しみに!!

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