オタク、副業部に入部する。
「借りは体で返してもらう」
学校一の美少女先輩の「パイセン」に5分で一か月分のお小遣いを稼がせてもらった後輩くん。美少女フィギュアが好きなだけのオタクな後輩くんは本当に「好きを仕事にする」ことができるのか。
待望の第二話解禁!!
「喜べ後輩、キミの願いはようやく叶う」
パイセンはどこかのヤヴァイ神父みたいなセリフを口にしながら振りむいた。
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ここは都立商業高校・副業部の部室。
放課後、わざわざ教室まで迎えにきたパイセンをブッチして帰宅する胆力、ボクにはない。入部届をカバンに入れたまま、パイセンの後ろをついていく。
校内一の美少女の制服のスカートとニーソの絶対領域に目を奪われない男なんていない。もちろんボクだって男。それにしても見事な絶対領域だ。男の癖をよくわかってらっしゃる。
バーチャルユーチューバー音音クミ(ねね・くみ)のコスプレしてくれないかなあ。そんなことを妄想しながらテクテクとパイセンの後ろを歩く。
「さすがにその視線はわたしでも気づくぞ後輩。ごほん、ついたぞ」
(ほんとすいません)心の中で謝るボク。一年生の校舎とは別、旧校舎の三階に副業部の部室はあった。
副業部とは文字通り副業を研究する部活だ。サイドジョブをもじってサイドジョ部とも呼ばれている。部室の右奥にはデスクトップパソコンが二台並んでいた。
「オタク、おっすー!」
「後輩くん、いらっしゃい」
パソコンのキーボードをブラインドタッチしながら先に挨拶したショートカットの元気印はクラスメイトで同じ中学の女子だった。名前は覚えていないのでオナチューとしておこう。
同じ中学でオナチューだからね。誤解なきよう。
後に挨拶してくれたのは二年生の上級生さん。テーブルの上でなにか商品の撮影をしている。上級生なのに小さな体とツインテールで見た目は完全にようじょだった。だから失礼のないように合法ロリと名付けよう。
「それはやめておけ」
ボクの心を読んだパイセンが釘を刺した。しかたない上級生さんと呼ぼう。てかパイセンを含めたこの三人って「三美姫」じゃん。
都立商業高校には校内一の美少女が三人いる。いるったらいる。いるんじゃないかな。ま、いるということにしておけ。副業部は三年生で部長のパイセン、副部長で二年生の上級生さん、一般部員で一年生のオナチューで成立していた。
「じゃあ、ボクはこれで」
この空気はボクにはあわない。長居をしたらきっと死んでしまう。太陽を盗んだ男のジュリーみたいに。きびすを返したボクの前にまたも立ちはだかったのは絶対領域ニーソパイセンだった。
「忘れたのか。借りは体で返してもらうと」
「ひゃ・・・ひゃい」
パイセンの後ろでドアの閉まる音がした。パタン。
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「さて冗談はここまでにしよう。新入部員の後輩くんだ」
「よろしこ!」
「よろしくお願いします」
困った。誰もが入部したがる美少女だらけの部活にボクみたいな限界オタクが入部だと。しかもこの部活、パイセンが認めた人間しか入部できないという噂なのに。
「あの~、ボクは誰かと間違われていませんか」
そうだよ、ボクなんて単なる美少女フィギュアスキーのキモオタ野郎だぞ。
「いいや、キミは美少女フィギュアが三度の飯より大好きなオタクくんだろ」
本当のことだけどご飯も好きよ。バーキンとか。美少女フィギュアの次だけど。
「ほら間違いない」
パイセンはうんうんと首を縦にふる。しかたないボクを入部させる理由だけはちゃんと聞いておこう。
「金は人の命よりも重い」
このひと、またヤバイセリフを吐いたぞ。
「すまん、間違えた。キミが何かを極めた人だから選んだ。それだけだ」
たしかにボクは美少女フィギュアのことだったら誰にも負けない自信がある。でもたったそれだけで。副業の何に役立つというのだろう。
ハッと気づく。きのうの秋葉原オタク・タワーのことを。たった5分で一か月分のお小遣いを稼いだじゃないか。つまりボクの知識は金になる。そうパイセンは判断したんだ。
「さすがだな、もう気づいたか」
パイセンが感心した顔でほほえむ。
「自己紹介しよう。わたしは優待株取引を研究している」
「はーい、ボクはアフィリエイトだよーん!」
「わたしは物販全般ね」
こうなったら覚悟を決めろ。男なら覚悟完了。そう大胆に魂に火をつけちゃえ。
「後輩です。美少女フィギュア大好きです。よろしくお願いします!」
こうしてボクは四人目の副業部の部員になった。
はい異世界シニアです。不思議なものでブログでも資格試験の勉強でもやり始めると止まらなくなりませんか。
本当は一週間後くらいに書くつもりだった第二話ですが、書き始めたら二時間くらいで書いてしまいました。
嫌なこと、後回しにしたいこともやり始めるとやってしまう。まずはやってみる。これ大事ですね。
さて次回は「せどりのメリット、デメリット。権利収入を手に入れろ」みたいな内容をお送りいたします。いたしまーす。