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弟の裏バイトと兄の密会と。

「日曜日、デートをします」


なんだろう、この有無を言わさぬライムの文章は。まるでスカートの中に文房具を隠し持っているヒロインみたいだ。


きっと断ったら「ぶち撒けろ」とバラバラにされちゃうんだろうな。武装○金みたいに。


ボクは美少女フィギュアの知識だけは誰にも負けない高校一年生のオタク。そんなボクに初めて女の人からデートのお誘いがきた。


相手は部活の部長で先輩だ。夏休みの肝試しで同じ組になり、そのとき怪しい雰囲気になってしまった。


ハッキリいって嬉しい。なにしろ相手は学校一の美少女だから。きっとボクの運は高校生で使い切ってしまうのだろう。


それでもいい。けれど問題が一つある。そう弟の兄大大大好きっ子のこよりである。アイツにバレたら確実に邪魔される。もしくはギャン泣きされて家から出してもらえない。


さて、どうしたものか。頭痛がいたい。


「お兄ちゃん、ボク日曜日に百合ゆりちゃんとお出かけするから」


妹にしか見えない弟のこよりが言う。へぇ、こいつもとうとう女の子の素晴らしさに目覚めたか。


「ち、違うよ!服を買いにいくだけ!デートじゃないんだからね!!」

「なんでツンデレなんだよ」

「あぅう」

「まあ、楽しんでこい。百合ちゃんも喜ぶだろう」

「ボクがいないからって浮気はダメだよ、お兄ちゃん」


(ドキっ)


「そ、そんなことするわけないジャマイカ」

「なんか怪しいなぁ」


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


日曜日。


「じゃあ行ってくるね、お兄ちゃん!」

「ああ、車に気をつけてな」


よし邪魔者はいなくなった。パイセンとの待ち合わせ時間まであと一時間。急いで私服に着替えて家を出る。


先輩との待ち合わせ場所は駅の東口。なんとか五分前に到着できた。場所はここで間違ってないよな。時計をみる。


その時だった。腹を震わす重低音が聞こえてきた。


ドドドドドドドドド・・・・・


これはスポーツカーのエンジンとマフラーが発するサウンドか。その音の発生源はゆっくりと駅のロータリーに滑り込んできた。


ドドド・・・ドゥン。


そして停車した。ボクの前に。


(オッサンNTR!?しかもオスモ仕様で確か二千万円以上する高級スポーツカーだぞ)


「待たせたな、後輩」

「パイセン!?」

「さあ乗りたまえ。ドライブに行こう」

「よし乗ったな」

「シートベルトよし!デッパツだ!」


白い重戦車と呼ばれる国産高級スポーツカーは、重低音を響かせて駅のロータリーを滑らかに走り出した。


頭の中がいろいろとパニックだが、これだけは言おう。


やっちゃえオッサン。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「こよりちゃんとデート、嬉しいな」

「百合ちゃんはかわいいなぁ」

「こよりちゃんのほうがかわいいよ!」


ボクの左腕に抱きついて嬉しそうに歩く幼なじみ。告白もされたけれど彼女とこれ以上の関係に進むことはない。それでもいいと彼女は言ってくれる。


「どこに服を買いにいくの?」

「ああ、あれ嘘。裏バイトに行くのさ」

「裏バイトって危ないことはしちゃダメだよ」

「ごめんごめん、ファッション雑誌の撮影に行くんだよ」

「なんだ、びっくりした」


こよりちゃんが女に変身するための費用はざっと一千万円。中学生が手にできる金額ではない。


それでも彼は絶対に諦めない。それがわかるからわたしも応援することに決めたのだ。


今日の撮影場所は人気アウトレット。わたしたちが現地に到着するとスタッフさんたちが慌てふためいていた。


「どうするのよ、モデルがいないんじゃ撮影なんてできないじゃない」

「コロナじゃ仕方ないですよ」

「今日しか撮影できないのよ。いまから代役なんて間に合うわけないでしょ」


「おはようございまーす」

「あ、こよりちゃん、おはよう」

「何かトラブルでもありましたか」

「そうなのよ、モデルの子が病気で急にこれなくなって・・」


「「え・・・この子・・」」


スタッフさんとカメラマンさんがボクと手を繋ぐ百合ちゃんに注目した。


「お願いします!」

「日当はこよりちゃんと同じ三万円。撮影に使った服もプレゼントしますから!」

「あなた今回のテーマにぴったりなの!」

「あうあう」


今回のテーマは仲良し姉妹のアウトレット・デートと聞いていた。どうせ百合ちゃんはついてくるだろうし、スタッフさんの目にとまればくらいに考えていたのだが。


どうやら結果は想像以上だった。


「百合ちゃん、無理しなくていいから」

「ううん、わたしこよりちゃんと撮影したい!」


アメリカに五年もいた彼女はメンタルが強くなっていた。物怖じせず、いま自分のできることを前向きに考える。本当に凄い女の子になった。


ズキン。そんな子の大切な青春の時間をボクは奪っている。心が痛んだ。


「こら」

おでこを軽くデコピンされた。

「本当に嫌ならわたしやらないよ!こよりちゃんとだからやるんだよ!」

(そうだった。彼女はそういう子だった)

「そうだね。ありがとう。百合ちゃん大好き!」

(抱きっ)

「ふえええええ」


そこからの撮影は順調だった。ボクたちは本当の双子のようにカメラに写り込んだ。


「あの子、凄いわね」

「本当に素人か」

「こよりちゃんのリードもあるけれど、あのメス顔はとても演技とは思えない」

「これは化けるぞ」


翌月発売されたティーン向けファッション雑誌のポップティーン。人気読者モデルの"こよりん"と新人モデル"ゆりりん"の姉妹デート企画が大当たり。


ポップティーン初の増刷がかかるほど売れた。一部では足りない百合需要を満たした結果とささやかれている。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


ボクとパイセンは三十分ほどバイパスを走行したところにあるハンバーガーチェーンで昼食をとることにした。


「運転免許は先月とったばかりだ」

「なんで初心者がNTRなんですか」

「姉がキミとデートすると言ったら貸してくれた」

「それで二千万円の重戦車ですか」


この姉妹はスケールが違いすぎる。


そんな凄いお姉さんとチューしたんだよなボク。思わずパイセンの唇をみながらあの夜を思い出してしまう。


少し前かがみになってしまった。


「株主優待チケットがあるからここはわたしが出すよ」

「ありがとうございます。株主優待はパイセンの得意分野でしたね」

「ああ、基本さえ外さなければ株式投資は簡単だぞ」

「教えてください」

「いいだろう」


部室ではないので紙ナプキンにボールペンで文字を書くパイセン。


・業績

・安く買う

・判断は自分でする

・売らなければ赤字は確定しない


この四つになる。


「業績が悪ければ潰れる」

「潰れたら株券は紙くずになる」

「とにかく業績の良い会社を安く買う」

「判断は自分でする。誰かを頼らない」

「なによりも株は売らなければ損も利益も確定はしない。これ重要だぞ」

「はい」

「ちなみに一万円でお釣りがくる銘柄もある」

「なるほど、勉強になります」


パイセンとの楽しい時間はあっという間に過ぎていった。


はい異世界シニアです。


いつもベッタリの兄と弟。


それぞれ別々の女性とお出かけ回。


さてどうなりますか。


後書きを書きながら寝落ちしました。


わたしの小説を書くスタイルは、とにかくやってみる。だからスマホで直接投稿しています。そのため後から修正、手直し、改稿ばかりを繰り返します。


でもそれでいいと思っています。なにごともやらなければ始まりません。ブログアフィリエイトのようにある程度は設計図を作らなければならないものもありますけれど。


このサイドジョブもエピソード10までは学園ギャグ物で考えていました。こよりや百合ちゃんの登場で少し計画が変わっています。


次も今回の続きになります。


次回、サイドジョブ「株主優待制度とサードインパクト」。


エピソードタイトルをオタク、株主優待優待制度を学ぶ。にする予定だったのはここだけの秘密だよ!


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