オタク、副業部と出会う。
とある都立の商業高校。ボクはキング・オブ・モブの一年生男子。
今日も大好きな美少女フィギュアの情報をスマホで眺めている。退屈な授業が終わり、帰宅部のボクは自宅で待っている美少女フィギュアたちに癒されるため教室を出ようとした。
「ああ、好きなことだけして生活したいなぁ」
つい独り言を口にしていた。
「できるぞ、後輩」
ボクの前に立ちはだかったのは校内一の美少女で先輩ことパイセンだった。その日からボクの好きなことを仕事にする挑戦が。いや部活動がはじまった。
ピロリーン。
ボクのポケットの中のスマホから通知音がした。
(まさか・・・あれから5分もたっていないのに)
「どうした後輩。スマホの通知を確認しないのか」
美少女と呼ぶにふさわしい黒髪ロングの先輩が意地悪そうな、してやったりという顔でボクをみる。
すべてわかっているぞ。計画通りという笑顔だ。
ボクはズボンのポケットから慌ててスマホを取り出して通知をみる。それはフリマアプリの落札通知だった。
そう、ボクはわずか5分で一か月のお小遣いを稼いだのだ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
ボクはとある都立商業高校の一年生。名前なんてどうでもいい。ボクはボクだ。
小さいときからオタクで漫画とアニメにどっぷり漬かっていたため、視力も落ちて眼鏡をしている。
決して勉強のしすぎではない。これだけは断言できる。外見だって中肉中背でモブの中のモブ。なんの特徴もないキング・オブ・モブだ。
とうぜん部活もやっていない。だって漫画やアニメをチェックする時間がもったいないから。
いつものように昼休みも大好きな美少女フィギュアの新作情報をスマホでチェックしていた。
「キモイ」
「オタク」
はじめの頃は周囲の女の子からキモがられた。けれど気にする必要はない。好きなものは好きなのだから。
そのうち、何も言われなくなった。
「あー、音音フィギュア欲しいなあ」
ここ数年、円安が進んだせいで原材料も高くなり、美少女フィギュアの価格は高騰していた。数年前まで2万円しなかったモデルが倍ちかくに値上がりしたのだ。
ボクが欲しいフィギュアは、バーチャルユーチューバーの音音クミ(ねね・くみ)の限定モデル。
価格は約3万円。ボクのお小遣い半年分だ。買えないことはない。でも欲しいモデルをかたっぱしから買えるほどボクは石油王でもなかった。
ないものねだりをしないで、今日もオタクの聖地のオタク・タワーでたくさんの嫁たちを眺めて自宅に帰ろう。
「あーあ、好きなことだけして生活したいなぁ」
「できるぞ、後輩」
教室を出ようとするボクの前に、とつぜん誰かが立ちはだかった。
猫背かつ、うつむき気味に歩くボクの視界に入ってきたのはニーソとスカートの完璧な絶対領域だったのはここだけの秘密だ。
それがサイドジョブこと副業部の部長、先輩との出会いだった。
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先輩は先輩。人の名前を覚えるのはオタクには無理ゲーすぎる。
だからパイセンと呼ぶことにした。決して胸の戦闘力が高いからではない。うん、決して。
10分後、ボクはパイセンと学校から徒歩5分にある秋葉原のオタク・タワーにいた。
オタクの聖地・秋葉原。その売り場の前にパイセンと立つ。こんな美少女と並んで立つなんて、明らかに不釣り合いだ。
学校でも二人で並んで歩くボクたちは注目の的だった。明日はクラスで浮くだろうな。
「後輩、このフィギュア売り場でもっとも価値があるものを教えてくれ。コノザマとアポカリの相場もだ」
おもむろにパイセンが言う。
ボクは毎日オタク・タワーに通っているから、どの店にどんな新作モデルが入荷しているか、在庫があるのか一目でわかる。
とうぜん入手困難だったり、価値が高いモデルも把握している。
「音音の限定モデル。しかも店舗限定の特典付きです」
即答した。大手ネット通販のコノザマオーケーとフリマアプリのアポカリプスの相場もスマホに表示してパイセンに渡す。
「たいしたものだ」
パシャリ。先輩はボクのスマホのカメラでおもむろに売り場の音音フィギュアを撮影した。
(撮影禁止では・・・)
「大丈夫だ。撮影禁止の張り紙はここにはない」
気が付くと先輩はボクのスマホを勝手に操作している。どうやら、さきほどの写真をつかってフリマに出品したようだ。
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「どうだ後輩、これが好きで稼ぐということだ」
いや・・・脳みそに汗をかくといったほうが伝わるかな・・・パイセンは独り言のようにつぶやいた。
(これはセドリか)
セドリとは売れる商品を店頭やネットで仕入れ、フリマやオークションで利益を乗せて売る副業だ。
かくいうボクもアポカリでは何度もいらなくなったフィギュアをドナドナした経験がある。
あ、ドナドナとは処分することね。でも儲けるつもりで売ったことは一度もない。
「さあ、レジで買ってくるといい」
とにかく音音の限定モデルを購入して、帰宅したらコンビニから発送しよう。
レジに並ぶ。振り返ると後ろにパイセンが同じ音音フィギュアを手にしていた。小声でボクはパイセンに話しかける。
「先輩もフリマで売るのですか」
そりゃそうだ。出品して5分で即売れする人気商品。
フリマの手数料と送料をひいても五千円は確実に利益がでる。すぐに売れることも確認済みだ。買わないほうがどうかしている。
きょとんとした顔でパイセンが口を開いた。
「なぜそんな面倒なことをわたしがしなければならない」
(え・・・だって、じゃあなぜ買うの。自分用にするの、保存用なの)
「いいから付いてこい」
意味がわからない。音音フィギュアを手にしたボクとパイセンは店を出る。
パイセンはエスカレーターに乗ると二つ下のフロアにある店に向かっていった。
(あ・・・アキバのオセッセ)
そこはオタクグッズの高額買取店だった。
アキバのオセッセの店頭POPには音音の限定モデルの買取金額が表示されていた。
(ボクのフリマで売れた金額より高い買取金額だ)
しかも買取店だから手数料も送料も引かれない。まるまる利益だ。なによりも現金がすぐ手に入る。
「確かにフリマは人気商品ならすぐに売れる」
「だが手数料と送料が引かれるうえ、相手とのやり取りも面倒だ」
「すり替え詐欺や嫌がらせのリスクだってある」
10分後、フリマで売る倍の利益をパイセンは手にしていた。
なるほど。いろいろな金儲けの方法が存在するわけだ。
じゃあ、買取店をボクに教えてくれればいいのでは・・・と思ったのはクラスのみんなにはナイショだよ。
「それではつまらんだろう。売れた喜びも実感できない」
なるほど。そんなものか。確かに5分で売れたときは脳みそが興奮した。
その日はパイセンにお礼を言って別れた。欲がないのか、パイセンはお礼を求めなかった。
「気にするな。この借りは体で返してもらう」
いやん。そんな態度も男らしい。ボクなんかよりずっと。
翌日、教室にあらわれたパイセンはサイドジョ部こと「副業部」の入部届をもってきた。ボクが断ることなんてまったく考えていない様子で。
ここからボクの好きな美少女フィギュアを仕事にする生活が。
いや、副業部での部活動がはじまった。
前書きってなにそれ美味しいの。じつは真剣にググりました。どうも異世界シニアです。男性です。
ついカッとなって小説もどきを書いてしまいました。後悔なんてあるハズない。
趣味は副業と資格取得。アフィリエイト、優待株取引、せどり、一通りやっています。ないのは美少女との出会いくらい(号泣)。高校も男子校でした。
次回のプロットはまだ考えておりませんが、セドリのもっと突っ込んだ内容にするか、それともアフィリエイトにするか。
なんにせよ、自分の好きなことでお金を稼ぐ。生活することを目標にするアナタのお役に立つ内容にいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。