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閑話 おもしれえ女仕種をしないと生き残れません

 大長谷皇は長谷の地で酒宴を開いた。彼は大きな槻の木の下に席を置いた。

 伊勢の国三重の出身である采女(うねめ)が皇に酒を献上した。酒盃(さかずき)を捧げて頭を下げていた彼女は気づかなかった。その時、槻の大樹から葉が三枚落ちてきて酒盃の中に入ってしまったのだ。

「無礼な!」

 皇は三枚の葉に気づき、采女を打ち倒して首に刀を押しあてた。その刀を引こうとしたところ

「お待ちください!」

 采女が声を上げる。その声には動揺は滲みもせず、堂々とした響きであった。


「申し上げたいことがございます!」

 彼女はその姿勢のまま、歌を歌い出した。


「日代の宮は朝日が輝き、夕日がさす、竹の根は木の根のようにしっかりと根を下ろした立派なお宮。たくさんの土で土台を作った立派なお宮。

 その宮の御殿に生えている立派な槻の木の枝は、上の方の枝は天を覆って、中の方の枝は東の国を覆い、下の方の枝は西の国を覆ってます。

 上の枝の葉は中の枝の葉に落ちて触れ合い、中の枝の葉は下の枝の葉に落ちて触れ合い、下の枝の葉は三重に着物を重ね着た三重の采女の酒盃に浮き脂のように落ちて浮かびました。

 浮き脂はそう、大昔の神々様が塩水をこおろこおろとかき混ぜて脂から我が国を御造りになったというお話であります。

 そのように畏れ多くも勿体ない出来事が起こったのであります。日の御子様」


 皇は故事を交えて即興で歌ってみせたのを聞いて、途端にこの女を許す気になった。また、后が内心慌てつつも改めて即興で歌を歌った。


「大和の国のこの高い地で、小高くなっているこの市の高台で、この新たなる御殿の地に生えている広葉の椿の木。

 その椿の葉のように広くあられ、その椿の花のように輝いておられる、日の御子様にお酒を献上しなさい」

 后の歌にも気をよくした皇は改めて酒宴を続けたのだった。


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