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第9話 信頼(2)

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 その日の夜、城崎さんから二通のメッセージが届いた。何かと思って慌てて確認すると、その内容は俺を更に驚かせた。


 メッセージには「ここ」という一言と写真が一枚。その写真の内容というものがなんと彼女の住所であった。

 なんと不用心なことだろう。女性の一人暮らしが住所を晒すなんて。


 訳も分からない俺はなんて返せばいいか分からず「そうなんだ!」とだけ送った。






 次の日俺は直接彼女に話を聞くことにした。


「うっす岬ぃ〜! おはよう〜!」


「おはよう健人」


 俺は健人に手をひらひらさせて自分の席に向かう。今日も、隣の席には既に城崎さんがいた。




「おはよう城崎さん」


「ん……、おはよ……」


 彼女はこくりと会釈をする。


「ねえ、昨日どうした? 住所送って大丈夫だった?」


「あ……、うん……。……あの、……今度…………」

「ん?」


 いつにも増して歯切れが悪い。


「こ、今度の土曜日……家に遊びに来ませんか……?」


「え!?」


 俺は思わず大きな声を出してしまった。城崎さんが慌てて俺の口を押さえる。


「とっ……友達って……そうするもの……だよね……?」


 そうだ、彼女が俺に対して邪な気持ちを抱いているはずがない。逆は有り得ても城崎さんから俺に対してそんな気持ちを抱くはずがないのだ。


「うん……! もちろん行かせてもらうよ……! あ、でも昼の部活はないんだけど夜はバイトがあるからあんまり遅くまでは」


 そう言ってしまうと本当は夜遅くまで居たいみたいじゃないか。俺は言葉を口に出す前に一度考える癖をつけた方がいい。


「ん……分かった。準備しとく……」


 城崎さんはそんな俺の内心などつゆ知らず、心底嬉しそうな顔をしていた。

 本当にただただ友達と遊ぶという経験をしたいのだろう。ファンであり絶対に彼女の職業を口外しないというある程度の保証がある人間と。




「よーしお前ら席に着けー──」






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆






 城崎さんにとっては何でもない友人との遊び。だが俺からしてみれば憧れの夜─YORU─さんの家、その高潔さから恐れられるクラス一の美少女の家なのだ。

 俺は土曜日まで気が気でなかった。




 そして来たる土曜日。約束の十時ぴったりに手土産と共に、高校から二駅離れた彼女の住むマンションへ向かった。オートロックでこそないが学生の一人暮らしには随分と立派なマンションだ。


 インターホンを鳴らすその瞬間まで、本当は一人暮らしの女性はそんな軽々しく男を家に入れないものだと教えてあげるべきだという考えが頭をよぎった。

 だが好奇心と下心に負け、インターホンを深く押し込んだ。




「……はい…………」


 出てきたのは私服姿の城崎さんだった。当たり前だ。休みの日に家で制服を着ている人などいない。


 休みの日スタイルの城崎さんはジャージのズボンに何かのゲームイベントのプリントTシャツ。マスクはしておらず、軽いメイクといつも通りのヘアピンで留めたヘアセットだった。


「あの……もうちょっと片付けようと思ってたんだけど……、昨日の夜に急遽案件が入って……」


「あ、これはちょっと、わーおって感じだね……」


 顔を真っ赤にする彼女の後ろに見える部屋の中は酷い有様だった。


「片付け、手伝うよ」


「お客さんなのにごめん……。ありがとう……」




 部屋の中の間取りとしては、キッチンとリビング兼配信部屋、それと寝室に風呂トイレの2DKだった。

 しかし残念なことにその至る所にゴミが散乱している。


 廊下にまで進出するゴミの山、それもエナジードリンクの空き缶やコンビニ弁当のゴミばっかり。彼女がどれだけ過酷な生活をしているかを物語っていた。

 そして俺はこんな部屋を見て女子の部屋だと興奮するような男ではなかった。


 それでもデスク周りだけは綺麗にしており、実際に配信で映るパソコン周りを見た時は感動を覚えたものだ。






「──大分片付いたかな?」


「ん……。こんな感じで大丈夫……」


 ちなみに片付けの最中に彼女の下着を見つけるなどという事態は発生しなかった。最低限そういうところは優先的に片付けたのだろう。


「ごめん……本当はもっとちゃんと用意するつもりだったんだけど……。──あ」


 その時彼女のお腹が大きな音を鳴らした。彼女は顔を真っ赤にして俯く。


 時計の針はもう二時半を指していた。


「お昼は食べた?」


「ううん……」


「冷蔵庫、見ていい?」


「え……うん……」


 俺は特に期待もしないで冷蔵庫の扉を開いてみた。ところがどっこい、意外にもまともな食材がいくつか残っているではないか。賞味期限も大丈夫そうだ。

 実家から送られてきたと思われるダンボールと、そのまま中に残された食材も片付けの時に見つけた。冷蔵庫のも恐らくその類いだろう。




「これとこれと……、あとこれ、使っていい? それと調味料」


「え……それなら私が作るよ……!」


「ホントに……? できそう……?」


 キッチンにはほとんど使われた形跡のない調理器具を横目に俺は城崎さんの方を見る。

 彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめ俯きがちに呟いた。


「よろしくお願いします……」


「うん。じゃあキッチン借りるね」




 とりあえず俺は野菜炒めを作ることにした。冷蔵庫に残っていた申し訳程度のカット野菜とベーコンを見るとそれぐらいしか作れそうになかったからだ。


「……ん、神楽くん……料理得意なんだね……」


「いや野菜炒めぐらいなら誰でも……。まあ、家でも料理を作るのはほとんど俺だからなぁ……」


「神楽くんも……一人暮らしなの……?」




 その問いに俺は一瞬固まった。

 だがここまで彼女の内情に介入して、自分は何も語らないというのもフェアじゃないと思った。そして何より、誰かに話したいこのことは夜─YORU─さんにこそ聞いて欲しいと思った。


「あー……いや。……まあでも夜─YORU─さんには聞いて欲しいな。誰でも見れるコメント欄じゃできない話をする折角の機会だし。……夜─YORU─さんはお悩み相談の雑談配信なんて絶対しないけど」

「ん……?」

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