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隣の席の無愛想美少女の正体が天才プロゲーマーだと知っているのはクラスで俺だけ  作者: 駄作ハル


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第48話 学校祭(4)

いつもありがとうございます!

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「お、おい! あれ三組の“眠り姫”様じゃね?」

「マジか! お前行けよ!」


 廊下で軽い騒ぎが起きていた。


「ん……あ……い、いらっしゃいませ……」


 夜宵は若干声色を変え、たどたどしく接客する。


「メニューはこちらです……」


「えーっと、じゃあコーヒー一つ!」


「ん……。砂糖とミルクはいかがしますか……?」


「ブラックで!」


「かしこまりました……」


 初々しい彼女の様子を、俺は後方彼氏面で眺めていた。いや、彼氏面というか俺は正真正銘夜宵の彼氏なのだからむしろ当然の立ち振る舞いではあるのだが。


「岬くん……。コーヒー一つ、ブラックで……」


「うん。──じゃあこれ。熱いから気をつけてね」


「ん……」


 俺は銀のトレイに淹れたてのコーヒーを乗せて彼女に渡す。


「……お待たせしました」


「ねえ、城崎さん! ここメイドカフェなんだよね? その……萌え萌えきゅん的なのってやって貰えないの?」


「あ……えっとそれは……」


 夜宵は救いを求めるように俺の方を見てくる。

 だが一応お客さんが求めてきたらそれくらいのサービスはする予定になっている。……そして俺も夜宵の萌え萌えきゅんは見たい。


 俺は敢えて気が付かない振りをしてエプロンを縛り直したり袖を捲ってみたりしながら、横目で彼女の様子を伺っていた。


 そんな時だった。


「か、代わりの者を呼びますので……」


「待ってよ! 俺は城崎さんを指名して──」


 客の男子生徒は立ち去ろうとする夜宵の細い腕を掴んだ。

 俺はそれを見るや否や、考えるよりも先に体が動いていた。


「お客様、当店はキャバクラではございませんので指名システムはございません。それと、キャストにはお手を触れないようにお願いします」


 捲し立てるようにそう言いながら、俺は夜宵の腕を握る男子生徒の腕を掴む。


「あっ、す、すみませ──」


「コーヒー、冷めないうちにどうぞ」


「は、はい……っアッチィ!?」


「やけどしないようにお気をつけください。それでは」


 全く、不埒な輩がいたものだ。


「ありがと……」


「ああ」








 その後は特に問題もなく午前のシフトを終えた。


「豆はもう全部焙煎したから、後は注文が来たらお湯を注ぐだけだからな。じゃあ任せたぞ」


「大丈夫大丈夫〜!」


 本当に大丈夫なのか分からないが、健人はメイド服姿の桜花をパシャパシャ写真に収めつつ親指でグッドマークを作った。


「じゃあ行こうか」


「ん……」


 俺はメイド服を着たままの夜宵と共に学校祭へ繰り出した。

 メイドさんが横で歩いているというのは、どこぞの御曹司になったような気持ちが味わえてとても気分が良かった。


「回る前にお昼ご飯にしようか」


 俺たちは人がごった返す校舎を出て、外の各部がやっている出店のコーナーへ向かった。

 そこでは室内で出来ないような焼きそばやらホットドッグやらをやっている。


 中には山盛り肉のオリジナルバーガーなんて採算度外視の攻めたものもあって楽しめた。


「どこか見たいところある?」


「ん……。せっかくだから全部見たい……」


「よし、じゃあ全部行っちゃうか!」


 そんな彼女の要望により、俺はパンフレットから完璧なプランを立案した。


 吹奏楽部の演奏と合唱部の合唱を合わせたパフォーマンスは圧巻のものだった。

 吹奏楽部は演劇部のBGMまで担当していて忙しそうだ。


 書道部の作品は、俺には良さがあまりよく分からなかったが、夜宵はすっかり魅入っていた。

 逆に俺は美術部の見事なヌードデッサンに目を奪われていたが、頬を膨らませた夜宵に袖を引かれ早々に退散することとなった。


 俺と夜宵が並んで歩いていると、何やらコソコソと話す生徒を何人も見た。

 付き合っていると公言してはいないが、別に無理に隠しているつもりもない。夜宵が夜─YORU─さんとさえ結びつかなければさしたる問題ではないのだ。


 そんなこんなで俺たちは学校祭を満喫しつつ、本祭一日目を終えるのだった。







 そのまま普通に帰ろうと思っていたが、メイド役に興じた夜宵はいつものお礼に俺の家の手伝いをしたいと言い出した。

 正直に言ってその必要は全く無かったのだが、何より彼女がやりたがっていたのでやってもらうことにした。


「その……なんだ……岬……」


「いや……父さん……。言いたいことは分かるよ……」


 とてつもなく気まずい雰囲気の中、俺と父さんはリビングで俯いている。

 夜宵だけは心底楽しそうにメイド服のまま俺の部屋の掃除をしたり、夕飯を作ってくれたりした。


「いつもお世話になってます……! どうぞ……!」


「あ、ああ……。ありがとう城崎さん」


 この空気に耐えかねたのか、それとも裏で取り引きがあったのかは分からないが、父さんは「仕事だ」とだけ言い残して家を出た。


 ……この時点で俺も色々と察した。


「お風呂、湧いてますよ……」


「あ、ありがとう」


 ご丁寧に用意された着替えを持って風呂場の方へ行くが、俺の数歩後ろに夜宵もついてくる。


「えっと……なんかある?」


「お背中……お流ししますね……」


「え──」


「沢山御奉仕させてください……」


 フィクションでしか聞いたことがないそのセリフに、俺は卒倒しそうな思いだった。


「はは……。お手柔らかにお願いします……」

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