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隣の席の無愛想美少女の正体が天才プロゲーマーだと知っているのはクラスで俺だけ  作者: 駄作ハル


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第43話 それぞれの舞台(5)

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 道場を後にした俺たちは事前の約束通りデートへ出掛けた。


 その間夜宵は両手で俺の腕に組んできた。比較的小柄な彼女にやたら引っ張られて非常に歩きにくかったが、腕に当たる彼女の柔らかな感触を含め全てを甘受した。


 そんな密かな楽しみを見つけた俺とは対照的に彼女は依然としてご機嫌ななめなご様子だった。


「……! そ、そうだ! 何か贈らせてよ!」


「ん……、どうして……?」


「あー、えーと……。そう! お弁当のお返しと明日の大会の前祝いってことで!」


「…………」


 プレゼントを渡すぐらいしかご機嫌取りのやり方を知らない自分が恨めしかった。


「ど、どれにしようかな〜……」


 俺は何のあてもなく適当な女性向けの雑貨店にフラっと足を踏み入れる。


 今日はそんなつもりもなかったのでお財布が寂しい。できるだけ費用対効果が高そうなものはないかなどと下世話なことを考えながら店内を彷徨く。

 夜宵も自分で気になるものがないか探して欲しいが、彼女はずっと俺の顔を見ているだけで何の手がかりにもならなかった。


「……! これ……」


 ふと目に止まったのは五千円のネイルチップだった。それが高いものなのか安いものなのか俺にはよく分からない。

 だが基本使い捨てだろうそれに数千円を費やすというのは俺にとっては十分に高価なものだった。


「これはどう……?」


「ん……。どうしてこれがいいと思ったの……?」


「えっと……この黒のネイルにシルバーの装飾が、何となく夜宵っぽかったから……かな……?」


 夜宵の表情の伺うようにたどたどしくそう呟いた。

 そんな俺の様子がそろそろ可哀想に思ったのか、彼女は「あはは……」と笑い声を漏らした。


「別にいいのに……。私は怒ってないよ……。でも、ありがとう。せっかくだから、貰っていいかな……?」


「え、あ、もちろん!」


 俺は流れるようにネイルを手に取り会計を済ませた。


「はい、これ!」


「ん……ありがと……」


 夜宵は受け取ったネイルを心底嬉しそうにバッグにしまった。






 それから俺たちはカフェに入り雑談をするなどしてゆったりと過ごした。


 その雑談の内容は、柴崎のことを含めた剣道のことだった。実際に本格的な試合を見たのは初めてだったのでその迫力に感動したとの事だ。

 俺としては「岬くん格好良かったよ」の一言が聞けただけで満足だった。


 暫くはそんな風にしていたが、今度は彼女が明日大事な大会がある。練習のためにももう帰ろうということになった。


「ねえ……、プレゼントに夕飯食べていかない……?」


「え、いやいいよ! 今日は昼もお弁当貰ったし! 練習の邪魔になるといけないし!」


 夜─YORU─さんのファンとしての一面が俺の中でそう制止していた。


「近くで応援してくれたら……もっと頑張れるのになー……」


「え、いやそれは……」


 それを言われたら俺も弱い。

 結局俺は夜宵の思惑通りに彼女の部屋へ(いざな)われるのだった。





「お邪魔しまーす……」


 久しぶりに彼女の部屋へ足を踏み入れた。


 大会前ということでいつだかの惨状を思い浮かべたが、そこは極めて清潔できちんと掃除されていた。

 強いて言うなら机の上にエナジードリンクの缶が四本並んでおり、キッチンには今朝料理したフライパンなどがそのままになっていることぐらいだった。


「じゃあ、ちょっと待ってて……」


 そう言うと彼女は手荷物を片付け服を着替え始めた。

 俺は何となく目を逸らし、何も言われずともいつもの定位置に腰を下ろして彼女を待った。


 数分後、部屋着姿になった彼女はゲーミングチェアに座りPCの電源を入れる。

 万が一に備えカメラには黒い布を被せマイクのコードも引き抜き万全の体制でOPEXを始めた。


 それから約三時間、夕食の時間までの間、俺はずっと彼女の横顔を眺めて過ごした。

 普通なら手持ち無沙汰に思うだろうが、夜─YORU─さんのゲームをしている姿を横で見るのはこの上ない幸せだったし、時折こちらに視線を送りほほ笑みかける夜宵の姿は至上の可愛さで溢れていた。






 午後六時になると夜宵はゲームを止めてキッチンに立った。

 あまりに申し訳なく思い俺も手伝おうとしたが「疲れてるでしょ?」といい何もやらせてくれなかった。


 少ししてテーブルの上には豪華な夕食が並ぶ。ホワイトソースのクリームシチューにコーンスープという真冬のようなメニューに若干違和感を覚えたが、味はどれも確かなものだった。


「ご馳走様。美味しかったよ。……後片付けだけでも手伝わせてくれないか?」


「いいの。これ飲んで待ってて……」


 そう言って夜宵はハーブティーを淹れてくれた上、音楽まで掛けて片付けを始めた。

 何のハーブを使っているのか分からないが、ゆったりとした音楽と合わせて心が安らぐ。


 あ……待ってこの感覚は駄目なやつだ……。

 ふわふわと意識が遠のき始める。疲労しきった肉体は微動だにしようともしない。


「おやすみ……岬くん……」


「あ……夜宵……」


 夜宵の小さく柔らかい身体に抱き締められ、俺はその温もりと甘い香りに包まれながら深い眠りに落ちた。


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