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隣の席の無愛想美少女の正体が天才プロゲーマーだと知っているのはクラスで俺だけ  作者: 駄作ハル


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第42話 それぞれの舞台(4)

いつもありがとうございます!

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「そうだが、なんだ娘」


 柴崎は無駄に整った顔をタオルで拭き髪を掻き揚げる。


「い、いえ……なんでもないです……」


 そういえば柴崎の性別についてわざわざ彼女に話してはいなかった。

 喋り方はもとより、俺と一歳しか違わない柴崎は身長も173とかなりの長身だ。横に並べば筋肉量的に俺とシルエットは変わらないレベルだろう。勘違いするのも無理はない。


「カカカッ! その反応も慣れているわ! 気にするな! ……いやしかし、強くなったな岬!」


 柴崎は汗でビショビショのTシャツのまま肩を組んでくる。


「いやきたなッ!」


「なんじゃお前! 昔は汗だくのまま何時間もくんずほぐれつしていたじゃないか!」


「なんだその語弊のある言い方は……」


「恥ずかしがるな! 儂とお前の仲だろう?」


 柴崎は肩に回していた腕を俺の首に回しガッチリとヘッドロックをかましてきた。無駄に大きい柴崎の胸が頬に押し当てられる。


「むぅぅぅ……」


 そんな様子を見て夜宵はあからさまに頬を膨らませた。

 俺はその様子を察してヘッドロックから逃れようとするが、全身筋肉の柴崎のロックはビクともしない。


「離せ柴崎ッ!」


「ああん? こうでもしないとまたお前に逃げられるかもしれんからな!」


「へー……。仲良いんだね……」


 柴崎は腕に更に力を込めて俺を捕まえる。俺の顔の半分は柴崎の胸の中に埋もれていた。

 このままでは埒が明かない上、夜宵に愛想を尽かされるのも時間の問題だ。


 仕方がないので俺はこの状況のまま弁明を図る。


「聞いてくれ夜宵! こいつは親戚なんだ!」


「へー……」


「本当だって! 母方の従姉弟なんだ! 柴崎お前もなんか言え!」


「儂のこと渚ちゃんって呼んでくれたらいいぞ。ハハハ!」


 父さんが昔から「柴崎さんの方の娘さん」と呼ぶから俺もコイツのことはそう呼んでいる。今更下の名前で呼ぶ方が変に意識しているみたいで気持ちが悪い。


「従姉弟でも結婚はできるし……」


「そこで拗ねないでくれ夜宵!」


「ハハハ! 面白い女を見つけたな岬!」


 顔の八割が柴崎の胸に飲み込まれる。鼻も口も塞がれた俺は意識が遠のき始める。


「娘! 名前はやよいと言ったか!」


「え……あ……はい……」


「中々いい(ツラ)をしているな!」


「あ……どうも……」


 柴崎のまるで山賊か如き粗暴な言動に、夜宵の声には露骨な不快感が混じっていた。


「だがコイツも中々いい面構えをしているだろう? なんと言っても儂と同じ血族だからな!」


 ムカつくぐらいキリリと筋の通った目鼻立ちと、上品で凛とした口元の微笑は下から眺めても完璧の二文字だった。


「ぐがががが……」


 だが当の本人はお構えなしに俺を指すのにグイッと更に腕を寄せ、遂に顔の十割が柴崎の胸に飲み込まれた。

 俺の体は半分浮いている。


「これこれ。あまり神楽くんをいじめてやるでない」


 見かねた師匠がするりと腕を差し込み俺から柴崎を引き離してくれた。


「はぁはぁはぁ……」


「息を荒らげるなんて気色悪いぞ岬……」


「お前のせいだ柴崎!」


「大きいのがいいんだね岬くん……」


「待って夜宵! そういう事じゃなくてさ!?」


 離されたからといって問題は解決していない。


「それにしても、随分と腕を上げたな岬!」


「そりゃどうも」


「ああ! 特に下半身の鍛え方が違うな!」


「下半身……」


 夜宵は顔を赤くする。


「バッ、バスケをやってたんだ! 高校に入ってからこの前まで! だからだな!」


「ふうん……。ま、なんでもいいがな! カカカッ!」


 トラブルメーカーはお気楽でいい。


「それにしても──そうか、この娘が例のな」


 柴崎はズンと顔を突き出し夜宵を凝視する。


「安心しろ、この男は強いぞ」


「知ってます」


 夜宵は即答した。


「そうか! では儂は邪魔だな! ――じゃあな岬! 師匠(せんせい)! また呼んでくれ!」


 あんなに面倒だった柴崎はそれだけ言い残し呆気なく帰っていった。


「嵐のような奴だな……」


 柴崎の大きな背中を見送っていると後ろから夜宵に袖を引かれた。


「ん?」


「むううぅぅ……」


 夜宵はふくれっ面で俺の首に腕を回す。デジャブな悪い予感がした。

 彼女はそのままグッと胸元まで俺を引き寄る。俺は中腰の状態で夜宵の胸に顔を埋める様態となった。


「え、いや、なに、どうした」


「むふぅぅぅ……」


 夜宵はさも満足気な、どうだ! というような声を漏らす。


「ほっほっほ。じゃあ後は若いお二人さんで……。神楽くん、鍵はいつもの所に置いといてね」


 師匠はそう言って立ち去る。

 道場にはなんとも情けない格好の俺とどういう感情なのか分からない夜宵が残された。


「ご飯……食べよう……」


「そうだね。ありがとう」


 俺を解放した夜宵はトートバッグから弁当箱を取り出す。


「ん!」


「え、あ、うん、美味しいよ」


「ん!」


「うお! うむおひひいよ」


「ん!」


「ひ、ひょっとまっ──」


「ん!」


「クゴガガ……」


 夜宵は次々に俺の口へおかずを放り込んでくる。それはあーんのような可愛らしいものではなく、ほぼ拷問のようなペースで押し込んできた。

 俺はせめてもの罪滅ぼしとして、一欠片ともこぼさないように全力でそれらを食べ尽くすのだった……。

お読みくださりありがとうございます!

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