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隣の席の無愛想美少女の正体が天才プロゲーマーだと知っているのはクラスで俺だけ  作者: 駄作ハル


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第27話 暴走(2)

いつもありがとうございます!

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 週末、俺は夜宵さんのマンションを訪ねていた。料理教室で何度も来てはいるが出掛けるのは彼女の誕生日以来であり、少し楽しみだ。


 そわそわしながらチャイムを押して待っていると、彼女はすぐに出てきた。


「お待たせ……。いこ……!」


「おう……」


 休みの日スタイルの夜宵さんは黒スキニーにダボパーカーというシンプルな出で立ちだった。

 しかしスタイルがよく顔もいい彼女がそんな格好をしていると映えてしまうのだから驚きだ。まあ彼女のことだからそもそものアイテム一つ一つが俺の知らないブランドなのかもしれないが。


 だが一つだけ俺にも分かるアイテムがあった。それは彼女の右薬指に輝く指輪だ。






 図書館は彼女の家から徒歩十分ぐらいの場所にある。

 休日ということもあり、新聞を読むおっさんや漫画を読む若者、老眼鏡を使って小説を読む老人など、多くの人が利用している。


 俺たちはそんな図書館の二階にある自習室へ向かった。





「ここは来たことある?」


「ない……。家の近くに図書館があるのも知らなかった……」


「はは……。それじゃあ俺も普通に勉強するけど、分からないことがあったら遠慮せずなんでも聞いてね」


「ん……。お願いします……」


 俺たちは机に教科書とノートを広げ、勉強を始めた。




 それから俺が二問ほど宿題を解いたところで早速彼女に袖を引っ張られる。


「これ……分からないです……」


「どれどれ? ……これはそのまま教科書の公式に問題の数字を当てはめればいいだけだね」


「やってみる……!」


 他の利用者の迷惑にならないよう小声で話すこの感じは、教室でのやり取りと似てて落ち着いた。

 だが彼女のこの服装も、表情も、指輪も俺だけしか見ることができないのだと思うと、どこか心が満たされる。


「できた……!」


「おっ、早いね。どれどれ? ……うーん……」


 彼女の出した答えは二次方程式なのにプラスマイナスの符号が抜けていた。これは先が長そうだ。




 どの教科もこんな調子で中々に手がかかる生徒だったが、日が暮れる頃には今日やろうと決めていた分の課題は終えることができた。


「さて、そろそろ図書館も閉まるしもう帰ろうか」


「ん……」


 気がつけば自習室には漫画を積み上げて読み耽っている若者一人しかいなかった。






「じゃあまた今度」


「ん……ねえ……」


 彼女の部屋前まで送ると、別れ際に彼女は俺の袖を掴んだ。


「勉強教えてくれたお礼に……今日は私が晩御飯作るよ……」


「本当に! じゃあお言葉に甘えようかな」


 いつもは俺が逆通い妻のようなことをしていたが遂に彼女から料理を振る舞われる立場になるとは……。

 俺は生徒の成長に感動を覚えた。


「本当にやばかったら呼ぶから岬くんは座ってて……」


「分かったよ」


 俺はリビング兼配信部屋から見えるキッチンでせかせか働く彼女の背中を眺める。

 彼女は俺が色々教えたものを書きとったスマホのメモを見ながら、鍋を出したりフライパンを出したり忙しなく作業していた。思わず口出ししそうになるがここはそっと見守ることにした。




「──できた……!」


「これは……」


 彼女は野菜炒めと味噌汁を二つ同時進行で作っていたようだ。


「最初に遊びに来てくれた時のお礼ができてなかったから……」


「そういえばそうだったね……」


 あの時の野菜炒めプラスアルファで作りたかったのだろう。

 食卓には大皿に盛り付けた野菜炒めと、二人分の味噌汁とご飯が並べられた。




「それじゃあ、いただきます」


「どうぞ、めしあがれ!」


 俺はまず野菜炒めに箸をつける。それは火加減も味もしっかりできていた。食欲をそそる匂いに身を任せ、白米をかき込む。

 そしてそれらを流し込むように味噌汁を一口。味噌汁もインスタントではない夜宵さんの手作りだ。大根と油揚げの味噌汁は体を中から温めていった。


「うん……美味しいよ!」


「ホント……!? よかった……!」


「俺よりも上手だよ」


「そう……かな……」


 俺がそう言うと彼女は少し恥ずかしそうに、そしてどこか寂しそうに俯いた。




 本当に美味しい料理というのは言葉数を減らすものだ。俺は彼女の料理を夢中になって平らげた。


 そしてせめてこれだけはと言って後片付けは俺は俺が済ませて帰ることにした。


「それじゃあ、今度は本当に帰るね」


「うん……」


 玄関先で彼女は俺の袖を掴み離そうとしない。俺とて名残惜しかったがずっとこうしている訳にも行かないのだ。


「またね」


「うんまた……」


 俺は袖を掴む彼女の手を取り、軽く握って彼女が驚いた隙にすっと一歩後ろに下がり、そのまま帰路についた。

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