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隣の席の無愛想美少女の正体が天才プロゲーマーだと知っているのはクラスで俺だけ  作者: 駄作ハル


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第25話 進展(2)

いつもありがとうございます!

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「うっす岬お疲れ〜! じゃあな〜」


「お疲れ健人、また明日」


 席が変わっても隣は夜宵さんであり、俺の日常もそこまで激変などはしなかった。


 強いて言うなら、隣の健人や桜花が遠く離れ離れになったのでとても静かになった。そして静かになると夜宵さんはよく眠り、俺はそれを良いアングルから見守ることができるようになったことぐらいか。




 それともう一つだけ変化がある。昼食の集まりに夜宵さんも参加するようになった。

 というのも、バラバラになった健人と桜花が集まるのに、俺と夜宵さんがちょうど二人でいるので効率がいいとこっち側に来るのだ。それで夜宵さんもなんとなく席を立ちづらく、そのままここで食べるうちに定位置となったのだ。


「岬くん……何か考えごとしてる……?」




 俺がそんなことをしみじみと考えていると夜宵さんに袖を引っ張られた。


「ん? ああいや、なんでもないよ。行こうか」


「ん……行こう……」




 俺たちは同じ電車で、同じ場所へ向かう。そして彼女の家の近くのスーパーで食材を買い、彼女の部屋へと帰っていく。

 こう聞くとまるで同棲でもしているかのようだと思われるかもしれないが、俺もほとんどそうだとそう思っている。だが本当はただの第一回料理教室の準備なのだ。


「お邪魔します……って、中綺麗だね……」


「べ、別にいつもあんなに汚い訳じゃない……! あの時は世界が懸かった大会だったからで……! って、いいから早く奥にすわって!」


「お、おう……」




 俺は彼女の小さな手にぺちぺち背中を叩かれながらリビング兼配信部屋の方へ押し込まれる。

 そこには前はなかった芳香剤や観葉植物なんかもあり、明らかに人を出迎えるために設えたものだと分かった。


「床でごめんね……。麦茶でいい……?」


「あ、うん。ありがとう」


 テーブルに出されたコップも夜宵さんと俺のが二つセットの

 ものであることから、わざわざ新調したのだと伺える。これはかなりの気合いの入りようだ。




「なんか、随分変わったね」


「ん……、大会ない時は自主練みたいな感じだから……、プロゲーマーたちは配信したり案件の仕事をしたりしてお金を稼いでる……。でも私は今配信もあんまりしてないから……、時間ある……」


「うん。部屋もすごく綺麗にしてる。でもそうじゃなくて、夜宵さん自身が、すごく変わったなって。いい意味で」


 俺がそう言うと彼女は目を丸くして驚いたような顔をする。


「これは……桜花ちゃんが色々おしえてくれて……」


「そうなんだ」


「うん……。でも、私が変われたのは……岬くんのおかげ……」


「そうかな」


「ん……、そう……」


「そっか」


 ここで俺がすっと立ち上がると、彼女は後ろに手をつき伏し目がちにこちらを見上げる。彼女は一体何を考えているのだろうか。


「……さ、早く作ろう。今から始めたら晩御飯にはちょうどいい時間になるよ」


「え、あ、うん……」




 俺たちは二人でキッチンに並ぶ。傍から見ればその様子は恋人、あるいは夫婦にも見えるかもしれない。

 だが夜─YORU─さんファンの方々は安心して欲しい。俺の類まれなる理性がその一線を決して越えさせはしない。今のこの曖昧な関係が、夜─YORU─さんのファンとして、城崎夜宵さんの友達としてのバランスが取れたベストな関係なのだ。




「おっ! ちゃんとご飯は炊けてるね」


「うん……これぐらいは……」


「それじゃあまずは具材を切っていこうか。玉ねぎの切り方は分かる? 中学の家庭科では一応習ったはずなんだけど……」


 彼女は頭を横に振る。


「分かった。なら一緒にやっていこう──」




 玉ねぎ、じゃがいも、人参の皮を剥き適当な大きさに切ったら牛肉と一緒に鍋へ入れる。ある程度火が通ったら水を入れて沸騰させ、灰汁は丁寧に取っていく。

 具材が柔らかくなるまで十分に煮込んでからルウを入れてとろみがつくまでまた煮込んでいく。


 そう、今日俺たちが作ったのはカレーだ。これなら簡単に作れるし、作り置きもできる。野菜も摂れて彼女向きの料理と言えよう。






「よし! これで完成。今日は少し多めに作ったけど、この時期は食中毒の危険もあるから残った分は粗熱が取れたら後で別の容器に移して冷蔵庫に入れようね」


「すごい……! 本当にできた……!」


「うん。よくできました」




 それから俺たちは二人で作ったカレーを、二人同じ食卓を囲んで食べた。


「どう? 自分で作った料理の味は」


「美味しい」


「そう、よかった」


「……でも、これは岬くんと一緒に作ったから……。岬くんと一緒に食べるから……美味しい……」


「え……?」


「最近分かった……。誰かと一緒に食べるご飯は……美味しい……」


「……そうだね」


 触れようと思えば触れられるこの距離が、永遠のものであればいいと思った。こんな時間がいつまでも続けばいいと思っていた。続くと思っていた。






 あの事件が起きるまでは──。

お読みくださりありがとうございます!

完結まで毎日投稿実施中!

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