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隣の席の無愛想美少女の正体が天才プロゲーマーだと知っているのはクラスで俺だけ  作者: 駄作ハル


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第20話 体育祭(2)

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「よーしこれで帰りの連絡は終わりだー。放課後はチーム競技の練習するぞー」


 俺たちはジャージに着替えグラウンドに移動する。


「岬くん私……」


「あ、夜宵さん!ちゃんと来たんだね」


 初めて見たジャージ姿の夜宵さんはまた衝撃的な物だった。少し大きいジャージに着せられている感があって可愛い。


「そっちは男子、女子はこっち。チーム競技なんだから岬と一緒には居られない。ほら行くわよ」


「あ……斎藤さん……」


「桜花、でいいわよ」


「お、桜花さん……」


「行きましょ、夜宵ちゃん」


「うん……」


 桜花は俺の隣から夜宵を引っ張っていく。すれ違う時に桜花は勝ち誇ったような顔をしていたが、俺は呼び捨てで彼女の名前を呼んだこともあるのだ。

 ……あれはノーカウントみたいなものだけども。




「残念だったな〜岬! 結局眠り姫様と別々で」


「別に?」


「そうは言っても顔は正直だぜ〜?」


「うるせ」


「痛て!」


「うーし、始めるぞー」




 はまやんはヨレヨレのジャージを着て出てきた。


「今日は初日だから同じ綱引きの全クラス、一年二組、一年四組、二年一組、三年五組、三年六組とやってくぞー。まー今日負けても本番までに鍛えていけばいいからなー。……でも、一年には勝って欲しいところだがなー」


 何故か参加はしないはずのはまやんがほっほっと準備運動を始めた。それを見てなんとなく俺たちも各々で準備運動を始める。


「よーし、じゃあまず一年とやるぞー──」







 結論から言おう。俺たちのクラスは全敗だった。


「一年ラグビー部多すぎだろ! なんなんだよ〜!」


「それに三年は気合いの入り方が違うしな」


「でも最下位から優勝ってのもドラマチックでいいよな〜!」


「はは、そうだな」


「うーん、とりあえずクラス内で色々練習していくかー。作戦も重要だからなー。戦法なんかも調べて作戦会議もしていくぞー」


「なんかはまやん気合い入ってんな〜!」


 普段は気だるそうにしているはまやんだが、その実、意外にも熱い男だ。


「ほら切り替えて練習していくぞー」







 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆






「昨日はチーム競技だったが、今日はリレーやってくぞー」


「ちょっとはまやん! 男子の結果はどうだったのよ? 女子は練習試合優勝したのよ?」


「まー聞くな斎藤。ジャンプ的展開には敗北はつきものなんだ」


「ほらやっぱり負けてるじゃない!」


「はは〜バレちゃったか……」




「すごいね、勝ったなんて」


「うん……」


 夜宵さんは胸の前で親指をグッと立てる。運動する時はマスクを外しているようで、そのドヤ顔も愛おしい。


「バトン順は体育の先生から五十メートル走のタイムをもらって俺が決めてきたぞー。この順番で並べー」


「よくここまで細かく決めてんな〜! そのクマは絶対これだろ〜!」


「うるせーやるぞー。負けられない戦いがここにある!」




 リレーは同学年で一から六組が一斉に走る。リレーは本番までのお楽しみで昨日のようなリハーサルは行わない。


「まずバトンの受け渡しとかを前後の人と確認するのに、軽く走ってみるかー」


 俺たちはそれぞれトラックの内側四箇所に別れて並ぶ。ちょうど俺の四人前の走者が健人だったため待機場所も同じだった。


「おおぉ……。四組の吉村さんスゲェ……」


「馬鹿お前、今向こうで走ってる一組の志穂ちゃん見ろよ!」


「うひょぉ!」


 具体的な名詞が存在しなくとも、男子高校生の会話の内容というものは大体察しがつくものだ。

 こんな時健人も一緒に混ざってお得意の軽口を披露しそうなものだが、彼は至って真剣な表情でグラウンドを見渡していた。冷静に敵情視察を行うその熱い眼差しははまやんにも負けないほどだ。




「いやしかしウチのクラスの斎藤さんを忘れてもらっては困るね」


「馬鹿お前後ろ!」


「あ──」


「……健人言われてるぞ」


「まあ落ち着け岬」


 悟りを開いたかのように無我の境地で腕を組む健人。


「見ろ岬、あれは教育実習の東さんではないか。わざわざジャージに着替えて生徒と共に走るとは感心感心。いやはや、ご立派なものをお持ちで……」


「…………」


 教師としての立派な志のことを言っているのだろう。きっとそうだ。そうであって欲しい。


「ふむ。岬、眠り姫様が走っているぞ」


「おう……」


 今は皆手を抜いているとはいえ、夜宵さんは全力を出しているような雰囲気だった。それでも以前彼女が言っていたように運動は苦手なようで、何度か見たことがあるトットットッと小走りのような走り方だった。


「……まぁなんだ岬、あれは少し残念な感じだな」


「本人が苦手と自覚した上で今回は頑張っているんだ。そんなこと言わず応援してあげてくれ」


「ん? いやそうじゃなくてほら……。あれでは俺の桜花は目に毒かもしれないが、物事は必ずしも大小で優劣が決まるのではない。精進したまえ」


「いやあれは着痩──」


 危ないところだった。ここでヤツの話に乗れば俺まで同じ次元に落ちるところだった。それにあの時見た光景を人に話すのは紳士ルールに反する。


 俺はそっと健人の靴の隙間に小石を入れ、カッコつけて全力で走ると足の裏がめっちゃ痛くなるというささやかな反撃を行い矛を収めるのだった。

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