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隣の席の無愛想美少女の正体が天才プロゲーマーだと知っているのはクラスで俺だけ  作者: 駄作ハル


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第19話 体育祭(1)

「よっす岬ぃ! おはよ〜」


「おはよう健人……」


「なんだ〜お前、眠そうだな〜!」


「うんちょっとな……」


「ほほ〜ん。昨晩はお楽しみでしたね、ってやつか〜?」


「違ぇよ!」


 俺はいつも通り軽口を叩く健人をいなして自分の席へ向かう。




「おはよう夜宵さん」


「ん……おはよ……」


 昨日の格好を見てしまっては他の生徒と同じ制服を着ている彼女がまた違って見えた。

 だが流石に彼女の右手にあの指輪はなかった。ツーブロック禁止のような変な校則はないが、アクセサリーは禁止となっている。


「昨日のあれは攻めすぎだよ……!」


「でも……誰もコメントしてなかった……」


「そうだけどさ……」


 寝れないので掲示板なんかを巡回していたが特に変な勘ぐりをした書き込みはなかった。あったのはせいぜい誕生日だから自分へのプレゼントかな程度のものだ。


「堂々としてたら……大丈夫……」


「それならいいんだけど……」




「よーしお前ら席に着けー。今日は朝の連絡あるぞー」


 俺と夜宵さんの会話はチャイムの音とはまやんの声で遮られた。


「お前らにいいお知らせがあるぞー。楽しみにしていた諸君も多いだろうが、いよいよ体育祭の練習期間が始まる。体育祭本番は六月末だ。まーぼちぼち頑張っていこうな」


「よっしゃ〜! これで部活も休み増えるな〜岬!」


「その分体育祭の練習になるだけだろ? ……でもま、楽しみだな」


「応援してあげるから頑張りなさいよアンタたち。一番点数が高い最終競技のクラス対抗リレーは男子たちの足の速さが鍵なんだから」


 この体育祭というイベントはまさに運動部の男子たちが女子にいいところを見せる絶好の機会なのだ。

 運動の苦手な人たちは放課後まで練習させられて最悪だろうが、運動神経のいい健人はこの時期毎日ウキウキしている。


 桜花は去年かなり泣かされたそうだが、今年は新学期の挨拶で盛大にカマしていたので俺がファミレスに呼び出されて延々と愚痴を聞かされるイベントは発生しないだろう。

 ……そうあって欲しいものだ。




「あー、それで全員出るリレー以外に個人競技と男女別のチーム競技があるから、去年の競技見て考えとけよー。明日の朝に多数決で決めるからなー」


「岬お前はどれにする〜?」


「俺は去年と同じでいいかな。個人がハードル走で、チームはドッジボール」


「無難だな〜。ま、俺もそうするんだけど!」


 そんな話を健人や桜花たちとしていたらふと気になった。夜宵さんの運動神経のほどはどうなんだろう。

 体育は男女別だからよく分からない。見るからにあのか細い体躯では体力はなさそうである。




「夜宵さんはどうするの?」


「私は……足をひっぱるから……休む……。去年はそうした……」


「え……」


 気まずそうに視線を泳がす彼女はあまりにも不憫に見えた。


「仕事で……放課後の練習も……あまり参加できないし……。足も遅いから……」


「そっ……か……」


 過去にどのような言葉が彼女に投げかけられたのか、俺は知る由もない。

 しかし教室で話すことすらできなかった彼女が、ほんの少し、俺や信頼できる桜花とかと話せるようになったのだ。これはただの俺のエゴになるかもしれないが、彼女に変わって欲しいと思ってしまった。

 ……ただ体育祭での俺の姿を彼女に見て欲しいだけかもしれないが。


「ちょっとだけ……、ちょっとだけやってみない……!? 俺や桜花、健人もいるし! 高校は中学と違って皆大人だから、運動ができなくても気にすることないよ!」


「ん……。考えとく……」


「う、うん……」






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆






「よーしお前ら席に着けー。朝の連絡始めるぞー。今日は昨日言ってた体育祭の競技だー。まず個人競技からいくぞー。先に男子諸君は好きな競技のところに自分の名前書いてけー」


 俺と健人は一緒にハードル走のところへ名前を書く。


「ふんふんふん……。まーこのバラツキなら大丈夫そうだな。じゃーこれで決定ー。次、女子いくぞー」




 俺は夜宵さんがどうするか、意識を左側に集中させる。とその時、彼女はすっと立ち上がった。


「……!」


 彼女は前へ行き、黒板に名前を書き始める。彼女はシンプルに徒競走に出場するようだ。

 だが競技なんてなんでもいい。彼女が体育祭を休まないという選択をしてくれたことが何よりも嬉しかった。自分の言葉で彼女が変わってくれたことが嬉しかった。


「よし、女子もいい感じだなー!」




「ありがとう夜宵さん。俺のわがままで」


「ん……違う……。岬くんに言われたからじゃない……。けど……岬くんのおかげ……」


「え?」


「ううん……! なんでもない……。今年は出てみようと思ったから……」


「そっか……」






 そんなこんなで結局うちのクラスのチーム競技は男子が綱引き、女子が玉入れになった。


「まー、こーゆーのは勝ち負けより楽しむことが大事だからなー。全力でやるのもいいけど熱くなりすぎるなよー」


「あの……頑張ろうね……岬くん……」


「チーム競技は残念だったけど、頑張ろ〜ぜ〜岬ぃ!」


「私は適当にやるけどアンタたちは頑張りなさいよ」


「おう!」


 今年の体育祭は、去年より楽しくなりそうだ。

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