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隣の席の無愛想美少女の正体が天才プロゲーマーだと知っているのはクラスで俺だけ  作者: 駄作ハル


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第15話 お礼(2)

いつもありがとうございます!

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「よーし、お前ら席に着けー。帰りの連絡始めるぞー。帰りの連絡はー……なし!」


「起立。気をつけ。さようなら」


「はいさよならー」




「ふ〜! よっしゃ部活行こ〜ぜ〜岬」


「おう」


「あっ……、あの……!」


「ん?」


 夜宵さんが俺の袖を掴む。


「この前の……お礼をしたいので……。いつ……空いてますか……? 斎藤さんも……」


「私はいいからコイツと行ってきなさい」


「そう……ですか……」


 桜花はウインクして親指をグッと立てる。ナイスアシストのつもりだろうがここで残念な事実が浮上する。


「あー、俺は毎日部活で、部活ない日はバイトを入れてるから……」


「はぁ、ホント仕事馬鹿ね! そのうちアンタも体壊す──あっ……」


 うっかり口を滑らせた桜花の反応を見て健人も何か察したようだ。


「ふ〜ん……? ま〜一日くらい部活休んでも大丈夫だろ!」


「休んでもいいんだけどさ……」


 うちの高校は悲しいことにどの部活も強くない。部活に力を入れている人は、そもそもこの高校は選択肢に入れないというほどに部活が緩いことで有名である。


「じゃあ……都合がいい日に……連絡ください。それじゃあ……さようなら……」


「おう。じゃあまた」


 夜宵さんはトットットッと駆け足で消えていった。




「お前また部活の予定表見て空いてる日全部にバイト入れただろ?」


「うんまあ……」


「それやめろよな〜! 俺らとも遊べね〜じゃん!」


 付き合いの悪さは自覚している。健人たちと遊ぶのは急遽部活がなくなった日ぐらいだ。だがどうしても何かしていないと気分が落ち着かない質なのだ。

 部活もバイトもないのはテスト前ぐらいしかない。


「来月から店長にシフト減らしてもらうよ」


「その方がいいわ。体のためにも、恋のためにも、ね」


「ちがっ! 俺は別にそんなつもりじゃ!」


「まどろっこしい男ねアンタも。ただの友達にあそこまでできる訳ないじゃない」


 桜花はそういうのに興味がないから夜宵さんがプロゲーマーとは気づいていないようだが、俺と彼女の関係は既にただの友達ではないのだ。


「ま〜知らんけど、お前も早く幸せになるんだぞ〜? はっはっは〜」


「ちょっと!もう……」


 健人は桜花と肩を組んで去っていった。まあ健人と俺は部活があるから体育館でまたすぐ会うのだが。




 自分でもその感情にはとっくに気づいている。だが夜─YORU─さんの一ファンとして、活動者にそのような行動を起こすのは御法度だ。

 クサイ言葉で言えばこれはまさに禁断の恋。少なくとも俺から手を出すことはしないだろう。いや、そう自分自身を縛っておかなければならないのだ。




 俺はなんだかんだで仲良さそうに歩く健人と桜花の後を追った。





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 次の日、ちょうどバイトだったので店長に相談してみることにした。


 俺が働いている喫茶Dinnerは店長が奥さんと二人で経営する路地裏の小さな喫茶店だ。某人気コーヒーチェーンとは比べられないが、駅前ということもあって学生のバイトを雇うぐらいには賑わって儲けもある。


「あの店長……」


「はい?」


「来月からシフトを少しだけ減らしてもらうことってできますか……?」


 俺がそう言うと店長は驚いた顔をする。


「な、何かあったのかい? 病気が見つかったとか……」


「いえ!そういう訳では」


「そ、それならいいんだ……。でもバイトを始めて一年とちょっと、そんなことを言い出すなんて初めてじゃないか」


「そうですね……」


 中学二年の事故以来、剣道は続けられなくなり半分引きこもりのような生活を送っていた。だが高校に入ってからバイトを始めると、動いている方が気分が楽であることに気づき、それからずっとこの喫茶店に働き詰めている。


「何か心境の変化が?」


「ええまあ……」


「……分かった。減らしておくよ」


「ありがとうございます」


 店長は微笑みを浮かべた顔に刻まれる深い皺をなぞりながら「うんうん」と頷いた。




「──ああでも、神楽くんは有給が残ってるよ」


「え、うちバイトでも有給あるんですか?」


「神楽はバイトなのにとんでもないぐらい出勤しているからね。それに、うちみたいな個人経営の喫茶店はそういう部分もちゃんとしておかないとね」


「そうだったんですか……」




「……さっそく使うかい? 来週辺りにでも」


「……! すみませんちょっと確認してきます!」


「行ってらっしゃい」


 俺は急いで休憩室に戻りスマホを手に取る。もちろん連絡する先は夜宵さんだ。


 慣れた手つきでアプリを開き、「例の件だけど、来週の日曜日はどう?」と入力して送信ボタンを押す。

 それから数秒後にはもう返信が来た。「その日って……」「わかった」「楽しみにしてて」その三言だけで顔が熱くなるのが分かった。




「店長! 来週の日曜、お願いします!」


「うん、そう調整するね。──っと、いらっしゃいませ! ……それじゃあ今日もよろしくね」


「はい! ……いらっしゃいませ! ご注文がお決まりになりましたら──」


 少し先にに楽しみがあるというのはいいものだ。目の前のことに対しても気持ちの入り方が違う。

 俺はいつもより楽しく仕事に打ち込むことができた。

お読みくださりありがとうございます!

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