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むかしむかしは……

作者: 雉白書屋

 むかしむかしのはなし。


 バズーカ、ライフル、ガトリング砲、戦車。

鬼ヶ島を前に提供された潤沢な武器を手に、ほくそ笑む桃太郎。

 金太郎はジープを乗りこなし、熊の大群を引き連れ山を荒らす者を撃退。

 老兵、浦島は潜水艦で卑劣な乙姫が住まう竜宮城を爆撃し

数万匹の猿を蟹ら数十万の連合部隊が撃ち滅ぼす。

 一寸法師は針ではなく剃刀で鬼の喉を鮮やかに切り裂き

一休は軍師となり、殿に仕える。

 兎と亀は盤外戦。レース当日までに互いに相手をどう辞退させるか策を講じる。

 花咲かじいさんは木の上から毒の粉を撒き、侵略者から村を守った。

 赤ずきんは事前に決めていた合言葉で

相手がおばあさんではなく狼だと見破り、その腹にショットガンの散弾を浴びせる。

 三匹の子豚は廃材を利用し、誇れる建築技術で見事な要塞を築き上げる。

 白雪姫はまず小人に毒見をさせる。

 ある少女は雪降る中、下働きの宿の前でマッチとコンドームを配る。

 ゴーシュは兵舎で演奏。

 鶴は種族総出で機織りを続ける。

 シンデレラは舞踏会には行かない、そもそもそんなものはない。

贅沢は許されず。質素倹約が美徳。

 金の斧、銀の斧、無限回収の始まり始まり。積み上げた斧は溶かし、銃弾に。

 かぐや姫を奪いに来た月の民と徹底抗戦。降伏など以ての外。

たとえ、相手がどれほど自軍より優れた兵器を有していようとも諦めない。

 タヌキは沈む船の上で腕を組み、命乞いを拒む。

船と共に沈むなら本望。悲鳴の一欠けらも男の恥である。

 

 全て今の話。


 嗚呼、戦争、戦争よ。時代に合わせ、変えられた昔話たち。

 スポンサーとなる大企業のロゴが入ったその絵本を読み聞かせる母の顔は暗い、暗い。

よかった、よかったと誰も彼も話すのは昔のこと。

未来の話はどうなるのか、あるのかさえわからない。

 未だ灰色の空はめでたしめでたしには程遠く……。

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