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とある少年Aの話  作者: 青葉
4/10

とある女子生徒の話

 白石先生は、本当に優しい先生でした。



 えっと、今日はよろしくお願いします。……私、インタビューとか初めてで、上手くできるかわからないんですけど……


 は、はい。……ありがとうございます。



 私、白石先生には本当にお世話になったんです。……恩師、だったと思います。


 はい、なんでも聞いてください。答えられるものは、全て答えます。




 ……は、はい。確かに、緊張しています。はは、こういう経験はないですし、初対面の方と話すのはあまり得意じゃないので。……はっ、す、すみません! そんな失礼なことを言ってしまって……え、ええと。


 ……ありがとうございます。もう大丈夫です。



 素敵な喫茶店ですね。文ロスのバーにそっくり……あ、えっと、その、「文豪ロストキャット」っていうアニメにこのお店そっくりのバーが出てくるんです。だから、つい。近くにこんな喫茶店があるならもっと早く知りたかったなあ、って。


 ……あ! ……すみません、急に変なことを話しちゃって……

 いえ、すみません!



 すみません、話が脱線してしまって。




 ……えっと、私は二年間、白石先生のクラスでした。


 私、去年の夏に引っ越してきて、あの学校に転校したんです。

 すでに仲良しグループが完成したような時期だったし、人見知りで根暗だから、クラスにうまく馴染めなくて、なんていうか、……不登校、になっちゃって。学校に行かず、ずっと家に引きこもていました。……あの頃が一番辛かったな。自分が嫌になるし、親とは喧嘩ばっかりだったし。


 そんな状況を救ってくれたのが、白石先生でした。



 白石先生は本当に優しい先生です。

 私が学校に来れるようにいろいろなことをしてくれていました。


 別室に登校できるように空き教室を用意してくれたり、そこに通うようになってからも教室に入れない私のためにクラスのことを教えてくれたり。どうしても学校に来れない日はわざわざ家にまで来てくれて、相談に乗ってくれていました。



 教室に入れたときも、先生は私が誰かと話せるようなきっかけを作ってくださいました。……でも、これは最初、すごい嫌だったんです。


 私、太っててブスだしコミュ障だから……だから、こんな私と心から仲良くしてくれる人なんていないでしょ、って。みんな先生に言われて仕方なく話しているんだろうって思い込んでいました。



 その後、先生の勧めで美術部に入ったんですが、その時から、私の学校生活に光が差しました。


 そこにはアニメ好きの子がいっぱいいて、教室ではオドオドしながら話してた私も共通の趣味のお陰で楽しく会話できました。こうして性格も少しだけ明るくなって、それがきっかけでクラスの子たちとも話せるようになって、クラスに馴染むことができました。



 私、将来は教師になりたいんです。白石先生みたいな生徒に寄り添ってあげられるような教師になりたい。……私が先生になったら、白石先生と一緒に仕事をしたいと思っていました。



 ……先生が殺されたと聞いた時は本当に辛かったです。なんで、って気持ちしか浮かばなくて、本当に悲しくて……

 す、すみません、……続けますね。



 ……井上くんはいつも一人でいました。

 それがどこか不登校になる直前の自分と重なって、なんとなく気になっていました。……だから、白石先生が井上君を気にかけてくれていると知った時、本当に安心しました。これで井上くんもクラスに馴染むことができる、って。それなのに、どうして……

 


 井上くんがなぜ先生を殺してしまったのかはわかりません。でも、先生が悪かった、ということは絶対にあり得ません。先生は人に恨みを買うような人ではありません。もしもあったとすれば、それは井上くんの逆恨みです。


 第三者の仕業か、不慮の事故か、それか井上くんが____



 どんな理由でも、先生が悪くないということは確かです。

 

 


 ……今日はありがとうございます、お話を聞いてくださって。また何かあったら連絡してください。

 それでは、失礼します。……ありがとうございました。




 7/15・被害者の生徒

 ×××××




 アイツが嫌ならならそもそも学校なんか行かなきゃいい。そんな考えは浅はかだった。



 学校に行かなくなって一週間が経ったときだった。午後一時頃、数学の問題集を解いていると、控えめなノックと共にドアが開かれた。


 ドアの前にはアイツが立っていた。その後ろでは母さんが困ったような顔で俺の顔色を窺っている。



 母さんが席を外し、アイツと二人きりになる。

 また質問攻めだ。どうして学校に来ないのか。意地悪されているのではないか。



 ____一人でいるのが嫌だからか



 違う。全然違う。何度も言ってるじゃないか。

 アイツはよく「一緒に考えよう」と言う。そんなのは口だけだ。結局は持論を押し付けて、自分の思うように俺をコントロールしようとする。



 母さんに相談しようかと思った。でも心配かけたくなかったから、やめた。

 他の先生に相談しようかと思った。でも、また否定されたら?



 そうすれば、今度こそ心が壊れてしまう。

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