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とある少年Aの話  作者: 青葉
2/10

とある友人の話

 悠真が担任の先生を殺したって、本当なんですか? 何かの間違えです。悠真はそんなことをする奴じゃない。はい、俺が知っていることは全てお話しします。


 いえ、場所は変えなくていいです。この公園はこの時間、ほとんど人がこないので、誰かに聞かれることはありません。


 はい、悠真と俺は友人で、親友だと思っています。小学校の頃から一緒でクラスもずっと同じでしたし、中学は別ですけど何度も会っています。


 最後に会ったのは、ですか。……五月の終わりくらいですかね。以前はもっと頻繁に会ってたんですけど、最近はメールの返信が来ていなかったので。中間テストで忙しかったんだと思います。

 いえ、特に変わらない様子でした。いつも通りの穏やかで優しい悠真でした。




 ……はい、そうですね。あまり人と関わりたがらない奴です。俺も最初は苦労しました。なかなか心を開いてくれなくて。


 はい、初めて話したのは小学校に入学してすぐでした。

 ……俺が悠真と仲良くなれたのは、俺がしつこく話かけ続けたからですかね。嫌がっては……確かに、最初はちょっと困ってたっぽいです。でも、ひたすら話しかけるのではなく、悠真のペースに合わせてゆっくりと距離を縮めていったので、悠真も心を開いてくれたんだと思います。



 悠真が人と関わらないのは人が嫌いだからではありません。なんていうか、悠真は本当に繊細なんです。些細なことで傷ついてしまうから、人付き合いを避けるようになったんです。


 俺がクラスの人から悪口を言われたときも自分のことのように落ち込んでいました。



 悠真は優しい奴です。


 俺、一時期仲間外れにあったことがあるんです。誰も話しかけてくれないし、話しかけても無視されていました。……ああいうのは誰か一人が始めると、みんな同じように後に続くんです。みんなやってるんだから自分だってしてもいいだろう、って。


 でも、悠真は違った。悠真だけは以前と同じように接してくれました。

 傷つくことを恐れているけど、友達のために集団に逆らう強さを持った奴です。それくらい良いやつなんです。




 担任の先生のことですか。……確かに、苦手だとは言っていました。悠真が人のことをそういうふうに言うのは珍しかったので、よく覚えています。四月の終わり頃だったと思います。


 ……まさか、それが殺害動機だなんて言いませんよね? 人には相性があるし、他人のことを苦手だって言うことなんて誰にでもあります。それに、悠真がそう言っていたのは一度だけです。殺意なんかあるはずがありません。

  


 悠真は人を殺したりなんかしない。ありえない。そんな奴じゃない。証拠は? 証拠はあるんですか!

 ……そうですよね。すみません、記者さんにそんなことを聞いてもわからないですよね。


 でも、ありえないんです。悠真は人を殺すような奴じゃないんです。優しくて、繊細で、強くて、ーーーー本当にいい奴なんです。だから、悠真が傷つくような記事は絶対に書かないでください。お願いします。



 ……はい、それでは、失礼します。




7/9・少年の友人

×××××



 唐突なことだったが、俺にはアイツが話そうとしていることがなんとなくわかっていた。俺がいつも一人でいることを気にかけているのだ。去年の担任の先生も俺が友達がいないことを心配して、こうやって話をしようとしてきた。


 だから俺は、その誤解を解くため、自分の考えを話す。

「俺はこういう考えを持っていて、そのためにこうしているのだ」と。それを聞いた去年の担任は、俺の気持ちを深く理解してくれて、クラスで俺が過ごしやすいように配慮もしてくれた。


 俺は、去年の担任にしたようにアイツにも自分の考えを伝えるつもりだった。



 俺が一人でいるのには、ちゃんと理由があるから。

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