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おもひでぽろぽろ

作者: 天澤馨

86歳のおばあちゃんになりました。

あなたたちは今、どうしてる?おじいちゃんになった?あんな小さかったのにねぇ。

私はこれがね、とても不思議で毎日がとても楽しいの。

孫も大きくなって、遊んでくれないけれど。男の子ばっかりだからね。子どもも男の子ばっかり。まぁどうしてでしょう。姑からはとても喜ばれたけれど、私は娘が欲しかった…。


娘がいるよそのお母さんが羨ましくなったりね。男の子も男の子で楽しいことばかりでしたよ。

今でも思い出しますよ、おじさんになった息子たちがやんちゃだったころ。おかしなポーズしたり、心臓が止まるかと思うような、女の子じゃとても思いつかないことばかりやるのよね。ケガも多くてね。


主人もとても優しい人だった。

あんまり感情出さない人だけれどね。私が柄にもなく、フランス料理とか行きたがるから、まだ子どもがいないときはときどき連れてってくれて。

けれど、主人の実家が、珍しく大家族でね。それで、集まるとだれか喧嘩したりして。私は女の子ばかりの家庭で育ちましたでしょ、あんなに大きな声で泣いたり怒ったりする女の人はじめて見ましたから、とっても驚いてね。主人に聞いたら「あれが普通だよ」と笑ってましたね。


私たちの頃は、まだガラケーの時代でしたでしょ。主人なんかは新しもの好きで、スマホにすぐ変えてねぇ。まだiPhoneがソフトバンクしかないときだったから、勝手にソフトバンクに変えちゃって。家族割が結婚してすぐなくなっちゃったって。新婚だからそんなことが悲しくて、さめざめ泣いたらオロオロしてましたねぇ。ああ懐かしい…。あの時のiPhoneだって、とってあるんですよ。まだ使えるのかしら。


息子が生まれてからは私もスマホにして、たくさんかわいいお顔を撮りましたねぇ。孫たちとちがって小さな写メだけれど。でもこの画質の荒さがいい味になって、鮮明に思い出せるのよ。あのときをね。


私のおばあちゃんもまだ存命でしたから、ひ孫と一緒の写真でも撮ってあげればよかったわねぇ。私みたいなおばあちゃんでも、ちゃんとおばあちゃんがいるんですよ。昔の人ですからね、とっても辛抱強くって。苦労した世代ですからね。今でもおばあちゃんが私の守り神だと思ってるのよ。

私も、あなたたちの守り神になってるといいんだけどね。


ああ、こんなことばかり喋っちゃう。でもね、そんなことばかりがキラキラとね、輝いて見えるんです。だから、とても楽しいの。


お父さんはこんなこと意味ないなんて言うもんだから、私はずいぶん寂しかったんですよ。墓に来ると見れる動画なんてね。新しもの好きのくせにね。だから、私のためにやってみたの。どうせ私は分からないんだから、気晴らしに見てちょうだい。たまーに来て、同じ動画ばかりで飽きちゃうかもしれないけどね。


またお参り来てちょうだいね。でも無理なんかしなくていいの。ありがとう。会えなかった子どもたちも、ありがとう。女の子はいるのかしら?みなさんいつまでもお元気で。笑顔を忘れずにね。

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