表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生したおっさんだけれど、やっぱり王子より女の子の方がいいよね  作者: 於田縫紀
第6章 神の力の使用要領

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/93

第75話 国王陛下執務室で

 ちょっと待ってくれ。情報が多すぎる。


「何で巡検使なんてものまで命免されているんですか」

「地方で調査をするのに便利な役職だ。陛下の方も各領主に睨みをきかせるのにちょうどいい。両者の利害が一致した結果だ」


 はいはい。もうサクラエ教官に関しては何でもありという事が良くわかった。


「ところでアンフィーサ君、先ほど2回程遠隔移動魔法(ワープ)を使ったが、覚えられそうか」


 それについては答えられる。


「解析はしました。まず純粋魔力を爆発させ空間を歪める波を発生させる。更に魔力による爆発で重力を発生させて推進力にして、横波を突っ切る方向へと移動を開始する。そして目的地まで来たら同じ方法で停止する。

 ただどう爆発させれば適切な振幅の波を作れるかや、移動推進力の調整などは相当練習してみないと加減が掴めませんわ」


 実際は2回目の移動でかなり掴めたと思う。


 教官は頷いた。


「そこまでわかったなら上出来だ。ただ最初は自分ではなく何か物を移動させて練習した方がいい。最初の移動方向に失敗するとこの空間に戻ってくるのが大変だ」


 彷徨えるオランダ人(フライングダッチマン)になりかねないという事か。なかなかヤバいな。心しておこう。


 さて、それではこちらからの質問その2だ。


「それで王宮まで来て何をする気ですか?」

「陛下に御報告だ。協定を破った旨及び破った事を認めた旨を報告する。協定違反の解釈は国のトップである国王の判断事項だ。それにエンリコ殿下も危険に遭った。詳細報告が必要だろう」


 ちょっと待ってくれ。


「私はこのまま帰っていいでしょうか」


 陛下に会いたくない。これ以上顔を売りたくないのだ。


「今回の件は元々アンフィーサ君が被害者だ。それに私とアカツカ枢機卿の会話を直接見ている。いざという際に事実であると証言する為に必要だ」


 全てにおいて先手を打たれている気がする。勝てない相手というものはいるものだ。今の私で特級冒険者に勝てるとは思わないが、それにしても強すぎる。どうにかならんのか、この教官は。


 侯爵令嬢の私でさえ来たことが無い宮殿の奥廊下を歩きながら考える。これ以上ヤバいフラグが立つ前にこの国から逃げた方がいいだろうかと。


 でもリリアやナージャが惜しい。リュネットやナタリアもまだ味わっていない。あと最近何となくマリアンネ様やアニーの事も気になる。


 我ながら百合ビッチ志向が強すぎると思いつつ歩いているうちに階段を上り降りし、廊下を歩く。そしてある一室の前で教官は立ち止まった。両側に護衛官が控えていて、更にカウンター状の受付で秘書官2名が待機している。


 これは間違いない、陛下の執務室だ。来たことは無いが直感でわかる。


「サクラエだ。今日は陛下から依頼を受けたカンナミ・ゴウトとして来た。こちらは私の助手でアンフィーサ・レナルド・フルイチ君だ」


 依頼なんて受けていたのか。いつの間に。どうやら魔法大会に引き続きまたしても陛下とサクラエ教官の罠にかかってしまったようだ。


「話は聞いております。どうぞお通り下さい」


 秘書官はあっさり入室許可を出す。

 サクラエ教官は何でもない事のように国王陛下の執務室をノックした。


「サクラエです」

「入り給え」


 あっさり。サクラエ教官は扉を開けて中へ。仕方なく私も同行する。背後で衛兵により扉が閉められた。閉じ込められた! という訳では無いだろうがびくっとする。態度には出ていないと思うけれども。


 国王陛下の執務室に入ったのは初めてだ。基本的に陛下は下々に対しては大中小ある謁見室で相対する。その際は通常2腕(4m)程度は離れているし、床も臣下側が2段下だ。


 つまり執務室で話をするなんてのは直属の高官や秘書官以外ではまず無い事なのだ。それがわかっているので否応にも緊張する。まあ私は以前舞踏会で似たような感じで招かれてしまった事があるし、研究発表の会場で真正面に座られてしまった事もあるけれども。


「こっちで話を聞こう」


 奥の執務机から国王陛下が立ち上がり、部屋に設けられた応接セットへと招いてくれる。おい待てこれ完全に特別待遇だろう。ああ余計なフラグがまたひとつ……


 サクラエ教官は恐縮する様子も無く、ごく当たり前という感じでソファーへと着席する。でも私は座っていいものかどうかちょい戸惑う。何せ陛下の前なのだ。侯爵令嬢たる私だってこんな状況になった事は……若干あったか。でも、流石に……


「座り給え、話は長くなる」


 サクラエ教官に言われてしまった。仕方ない。遠慮しつつ浅く座らせて貰う。


「さて、話を聞こうか。ヴァルサルデ中央教会へ行ったのだろう」

「ええ。結果的に犯人は中央教会の者であり、中央教会に責任があると認めさせました。具体的には……」


 サクラエ教官は中央教会で起こった事を順番に話し始めた。


 ◇◇◇


「なるほど。中央教会の責任者を自認した枢機卿自らが犯行を水晶玉の範囲内で喋ったか。しかもその事を既に自覚していると」


 サクラエ教官は頷く。


「その通りです。そこで参考までにお伺いしますが、こういった協定違反の場合、通常、国としてどんな措置を取らせるでしょうか」


 そう言いつつ教官は懐から誓いの水晶玉を取り出して私達の前に置く。あ、これ絶対参考とかそういうものじゃない。協定を破られた側の国王としての意見を水晶玉経由で神に聞かせる気だ。


 そういう事が出来るのかは私は知らない。でもおそらく出来るのだろう。そしてその事を教官だけでなく国王陛下もわかっている。明らかに陛下、にやりとしたし。


「そうだな。基本的には協定違反に対しての処罰、そして再発防止対策の2点について要求するだろう。

 まず処罰は個人ではなく協定を破った組織全体に対してだ。内容としてはイルワミナ国内における特権の剥奪と金銭又は相当する価値のものの要求になる。


 具体的にはまず、国内における施療院への施設無料貸与及び補助金の停止。施療院については国で施術士を雇って運営した方が安く効果的だと既に試算が出ている。

 次いで未公開となっている第三段階の治療魔法呪文の公開要求。金銭よりこの方が将来的にも国の為になるだろう。

 処罰としてはこの2点を中心に考えているが、サクラエ殿はどう思う」


「妥当な線でしょう」


 2人の問答で気付いた。これ絶対、シナリオが既に出来ている。試算が出来ているなんて事前に検討していなければありえないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ