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悪役令嬢に転生したおっさんだけれど、やっぱり王子より女の子の方がいいよね  作者: 於田縫紀
第5章 魔法大会と発●期

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第58話 2日目の予定はメタ知識から

 さて、今度はリュネットの出番だ。

 時刻はもうすぐ夜7の鐘。空はすっかり暗くなって星が見えている。そして風はほぼ無い。まさに花火日和といってもいい。


 主役のリュネットは特設された小さなステージの上で緊張した表情。私達は観客席というか外野からそれを見ている状態にある。


 公式パンフレットにも記載されているからだろうか。観客は私達だけではない。おおよそ300名くらいだろうか。


 夜7時の鐘が鳴り始める。


「聖なる根源なる神よ、我に光の力を貸し与え賜え。我望むは……」


 リュネットが呪文を唱えはじめた。そして……


 光の球が真っすぐ上に上がっていく。ドン、ドン、ドン、ドン。音がするたびにカラフルな光の花が夜空を彩る。そして最後により大きな音で大きく広がる光の花。打ち上げ花火のしだれ柳をフルカラー化したものだ。


 最後の光が消えたところで歓声が巻き起こった。よしよし、大成功だ。


「これでリュネットも有名人なのにゃ」


 うんうんと私は頷く。


「この魔法は華やかだしわかりやすくていいな。いかにも祭りの終わりという感じだ」


 確かにそうだなと私も思う。


 リュネットが舞台から下りてきた。群衆の皆さんに思い切り囲まれている。もう少ししたら助け出しに行ってやろう。そう思いながら状況を見守る。


 6半時間(10分)くらいしてやっとリュネットは解放された。


「何か思った以上に大変な事になっちゃった。これって本当はアンの魔法なのに」


 いやリュネット、それは違う。


「この魔法はリュネットだからこそここまでの効果が出るのですわ。私でも何とか起動は出来ますが、ここまで綺麗には発動できませんから」


「確かに綺麗だった。しかもこれならカワルマタのどこからでも見る事が出来ただろう。父や母も見ただろうと思う。明日はもっと見る人が増えるだろう」


「でも魔法さえ教えれば私以外でも使えるんじゃないかな」


 リュネット、それは甘い。


「この魔法は所々で聖属性魔法の加護を使っています。ですのでリュネット以外が使う事は難しいですわ」


 そういう風に作ったのだ。だからサブルーチン部分の呪文を全部知ったとしても普通の魔法使いでは起動が困難。リュネット以外では器用貧乏の称号持ち(なんでも屋)で最大MPが大きい私が何とか使える程度だ。


 まあサクラエ教官あたりなら余裕で起動してしまいそうだが、ああいう特殊なのは無視するとして。


「これだけ綺麗でしたら、魔法大会だけでなく収穫祭などの祭りのたび、この魔法をお願いされたりしそうですね」

「そうだな。父上あたりが言いだしそうだ」


 そうだそうだ。どんどん出してやってくれ。そうすればリュネットが有名になる。そのうちエンリコ殿下の相手にふさわしいという話も出るだろう。そうすれば私はあっさりサヨナラ出来る訳だ。


 でもリュネットを殿下に取られるのは惜しいよな。まだムフフな事をしていないし。可愛いし身体もなかなかいい感じだし、どうしてもそう思ってしまう。


 いや待て私、目的を間違うな。私はムフフする事が目的なのではない。本来ならデッドエンドになるこの世界で生き延び、全国漫遊の旅をするのが目的なのだ。そう強く自分に言い聞かせる。


「それでは帰りましょうか。リリアとナタリアは明日も試合ですから」

「ひとっ風呂浴びて帰るのにゃ」


 そうそうナージャ、その通りだ。大会期間中は風呂も少し遅くまでやっているし、ここは楽しまないといけない。

 途中で殿下と別れ、私達は女子寮の風呂を目指して帰って行くのだった。


 ◇◇◇


 翌日、朝食のために食堂に行く。


「おはようございます」

「おはようございます、サミア様」


 なんてやりながらいつもの連中のところへ。おや、1人余分で1人足りない。余分なのは勿論エンリコ殿下だが、足りないのは……


「あれ、ナージャはどうしたのでしょうか」

「今日はちょっと別行動をとるって言っていたよ。体調は悪くないから心配しないでだって」

「どうしたのでしょうね」


 ちょっと気になるのでここから魔力探知でナージャを探ってみる。自分の部屋にいる。そして魔力の状態がいつもと少し違う。一緒に行動している連中の魔力の感じはだいたい憶えている。そして今感じるナージャの魔力は明らかに変だ。


「体調は悪くないって言っていたのですよね」

「うん。扉ごしだから直接見てはいないけれど」


 体調が悪いならリュネットに頼めばいい。聖女候補なんて称号を持っているだけあって大抵の病気や怪我なら魔法で治療できる。治療室の教官より頼りになるのだ。


 それなのに頼まないという事はきっと病気等では無いのだろう。


「心配だな」

「でもナージャは病気や怪我じゃないよ。それなら扉越しでもわかるから」


 確かに聖女候補なんて称号持ちにはわかるのだろう。それでもやっぱり気にはなるのだ。


 そもそもあの食意地猫(ナージャ)が朝食をパスする事すらおかしい。かといって朝早く起きて食べたなんて事も考えられない。猫は朝に弱いのだ。夏の旅行でその辺はよくわかっている。


 そこまで考えた時、ふとあるイベントを思い出した。ゲーム『プリンセス・リュミエール』のイベントだ。2年生の魔法大会の時、選択肢を間違うか余分なものを持っていると発生してしまう。


 あのイベントは2年生の時の発生だった。でもこの時期なら1年の今でも起こる可能性は高い。


 そしてリュネットと扉越しに対応したというのが私の推理の補強材料になる。あのイベントは扉越しに対応した後、ある種のアイテムを持っているか扉を開けてしまった場合に発生するイベントだ。


「今日の御前試合は午後からでしたよね」

「ええ、午後1の鐘からですわ」


 なら試合までに確かめる時間はある。

 あのイベント、発生したらトゥルーエンドに向けては大きなマイナスになる。でも登場人物がリュネットでは無く私で、その辺の事情を知っているとしたら……


 うん、ゲームでは無く現実だけにかなりセンシティブなイベントになる可能性がある。間違ってもリュネットを連れてはいけない。連れて行くとしたらリリアだが、試合前だしやめておこう。私単独で、皆の目を盗んで行かなければなるまい。


「私は名目上だけですが研究発表に名前が出ていますので、今日は少し発表文を確認してから行きますわ」


「あれ、アンはそんな事までやっているのか」


 しまった。エンリコ殿下に知られてしまった。ここは少し誤魔化さないと。


「大した内容ではありませんわ。手順込み魔法の設計についての簡単な方法論です。基本的にはサクラエ教官にやっていただいたので、単に名前上だけですわ」


「サクラエ教官は名前だけなんて事はしないだろう。魔法研究者としてその辺強烈なプライドを持っている人だから」


 何でそんな事をエンリコ殿下(おまえ)は知っているのだ。確かにそういう人だけれども。ああ面倒くさい。その辺の弁明はまた後でということにしよう。


「まあそんな訳で後程合流致しますわ」


 断固としてそう言い切って誤魔化す。それより今はナージャ対策だ。私の欲望が赤く萌えている。ついにあの胸を、耳の後ろを尻尾の付け根を……


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