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悪役令嬢に転生したおっさんだけれど、やっぱり王子より女の子の方がいいよね  作者: 於田縫紀
第3章 夏休みの予定外? な過ごし方 ~夏休みその2~

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第36話 カモン! チート戦闘力!

 スパゲティ関連の素材を作る指導をしながら考える。

 私は転生者だ。だがチートな戦力は無い。だから今回の件は自分では解決できなかった。結果、警備兵に守られつつここの別荘に閉じ込められている状態だ。


 それでも今回は運が良かった。たまたま昼食時に蕎麦の話になって午後の攻略を中止した。そのおかげで地竜クラスの魔物と闘わなくて済んだのだ。

 もし予定通りだったら間違いなく人生が終わっていただろう。私だけでなくリリアやリュネット、ナージャやナタリアも道連れにして。


 何らかの方法で自衛できるチートに近い力が欲しい。今の私の特殊能力は自分や人のステータスを見ることが出来るくらいだ。確かに暗殺者等が近づいた場合に身分を偽装していてもわかるという意味では役に立つ。でも相手の力量が自分より遥か上であった場合には結局殺られるだけだ。


「これはもう伸ばしていいのかにゃ」

「もう少し放置しておいた方が伸ばしやすくなります。ですからあと1時間はそのままでお願いしますわ」


「このトマトを潰して煮たものはそのままでいいの?」

「もう少しの間かき混ぜながら熱を加えて下さい。量が今の半分になるまでお願いしますわ」


 そんな指示をしつつ、更に自分はバジルソースを作りつつも考える。

 私が持っていてこの世界に無いもの、それは知識だ。21世紀の科学技術をもとにした知識とゲームで得たメタ知識。これで何とかチート戦闘力に類する事が出来ないだろうか。


 なろう系の小説でよくある神から得たチート能力は私にはない。イメージするだけで自動小銃が出現したり、その辺の素材から作ってしまったりなんて事も勿論出来ない。


 大体適した素材も無いのに単なる鉄とかといい加減なイメージだけで銃だの自動車だのを作るなんてのは現実的に考えて不可能だと思うのだ。せめて素材の配合や製法、部品の一つ一つの形状や組み立て方を全て知っていれば何とかなるかもしれないけれど。


 その辺の内部構造すら知らず、せいぜい原理と使用方法を知っているだけでその機器を作れるなんて事はどう考えてもありえない。そんなの21世紀の世界から自由に取り寄せられるのと同じレベルのチートだ。

 

 いや今はなろう小説のチートに怒っている場合ではない。私の知識からチート的武器、あるいは魔法、戦闘方法を作り出す方法を考えるんだった。


 拳銃に類するものは作れるかもしれない。連発出来ないけれど。ライフリングを刻んだ筒の片方の穴に開け閉め可能で頑丈で、閉めた状態でしっかりロックできる蓋をつけたものを作ればいい。弾は筒の内径あわせて。


 この銃もどきに火薬はいらない。蓋を開けて弾を込め、蓋を閉める。その後筒の開口部をターゲットに向けた後、筒の内部、弾の後方に水魔法で水を発生させ、熱魔法で瞬時に蒸発させてやる。そうすれば水が水蒸気になった際の膨張で弾が発射される筈だ。


 最適な水の量や加熱温度は実際に作って研究する必要がある。でも設計次第では攻撃魔法以上の速さと威力を持つものが出来るかもしれない。この世界は魔法を使えるので工作精度も高い。質のいい鉄と弾用の鉛があればその辺の鍛冶場でも簡単に製造可能だ。


 ただ単発だし威力も微妙に心もとない。簡単なリボルバー形式にすれば6連発くらいは可能かもしれない。でも銃で相手出来るのはせいぜい人間とか魔獣ではない熊程度まで。チート戦闘力の為にはもっと強力な何かが必要だ。だが武器はこの銃くらいしか今は思いつかない。


 武器が駄目なら魔法だ。勿論21世紀の日本には魔法など無かった。でも21世紀日本の知識で新しい魔法を創造出来ないだろうか。仮想敵は予定を変えなかったら戦う事になっていた地竜として。


 地竜は分厚い皮鱗で大概の攻撃は弾く。しかも自身の魔力が人間以上に強いので通常の攻撃魔法は弾いてしまう。


 だから竜狩人(ドラゴンスレイヤー)

  ① 魔剣だの聖剣だのといったとんでもない切れ味の刀剣類を装備して

  ② パーティの他の面子の援護をうけつつ竜の腹部に接近して

  ③ ①で装備してとんでもない刀剣類で腹に傷口を作り

  ④ 傷口へ爆破系統の攻撃魔法を直接流し込む

なんて方法を使うのが一般的だ。


 勿論私も他の皆も①が可能なとんでもない武器を持っていない。②と③が可能な速度や防御力、体力も無い。そもそも普通の攻撃魔法は弾かれる。最初はどうしても斬るなり突くなり物理的な攻撃で傷口を作らなければならない。


 うーん、詰んでいる。そう思った時、ふっとひらめいた。

 銃で駄目なら大砲! もしくはロケット弾だ!

 

 勿論私の知識ではそんな物を作る事は出来ない。基本的には先ほど考えた単発式銃もどきのバリエーションだ。ただ筒を大きく頑丈にして、弾をより大きく重くして、弾速をさらに上げればいい。魔法が駄目なら物理で殴るまでだ。手で殴るわけではないけれど。


 弾のエネルギーは重さと速度の2乗に比例する。だから優先するべきは弾の速度。もちろん地竜を倒せるほどのエネルギーを私が受けたら吹っ飛んでしまう。だから弾はロケット弾形式で発射後も加速するようにしてと。うーん、より詳しく考えたい。考える事に専念したい。よし、そうしよう。


 ねりねりしながら水分を蒸発させていたバジルソースもどきを、ちょうど手の空いたナタリアに押し付ける。


「ごめんなさいナタリア。これをもう少し、3分の2位の体積になるまで煮詰めていただけますか?」


「わかりました」


 ナタリアは素直に鍋を受け取ってくれる。なおコンロは無い。自分の魔法でじっくり熱を通すのがこの世界の煮込み料理の方法論だ。


「ごめんなさい皆さん。ちょっと私、集中して考えたい事がありますの。あとは水分を飛ばす事、麺をお湯に入れてゆでる事、茹でた麺にソースのどれかをからめる事だけです。ある程度そのメモに書いてありますので、その通りお願いしますわ」


「どうかしたの?」


「ごめんなさい。後で説明しますわ。ちょっと部屋にこもりますので、自分で出てくるまで放っておいていただけると助かります」


 アイディアがどんどん湧いてくる。時間が惜しい。


 私は歩きながら清浄魔法をかけつつ2階の自分の寝室へ。狭いが一人で考えるにはちょうどいい。机もある。紙とペンは持ってきた自在袋に入っている。


 机に到着するなりとにかくイメージを描きまくる。ロケット弾といってもあのミサイルのようなものではない。RPG-7のような、推進剤入りの砲弾のイメージだ。直進しやすいように細長くし、安定翼をつけ、装弾筒をつける。とすると形は対戦車用のAPFSDS弾みたいな感じか。なら筒にライフリングがない滑空砲でいい。


 推進剤は水でいいだろう。水と言うか氷か。氷を爆発的に昇華させればいい。氷なら魔法でその場で生成できる。昇華させる制御も魔法で可能だ。何なら魔法陣にして氷に押し付けてやってもいい。


 弾体は理想を言えばタングステン。だがそんな希少金属が大量に集められるとは思わない。一応タングステンについては入手できるだけ集めていざという時用にとっておこう。普段はそこまで高性能なものはいらない。鋼鉄あたりで充分だ。


 発射時の反動を殺すには魔法を使える。発射時に筒本体に停止魔法(クリッピング)がかかるようにすればいい。これなら筒本体がどの方向にも動かなくなる。なら筒そのものをそこまで丈夫にしなくても大丈夫かな。動きながら射撃というのはしない方向で。これならロケット弾にする必要もない。だから構造が更に簡単になる。よしよし。


 状況に応じた威力をという事で大きさも何タイプか用意しよう。自在袋に入れておけば持ち歩くのに支障ない。必要な時は身体強化魔法をかけた上で取り出せばいい。


 ふふふふふ、これで敵が相当凶悪な魔獣でもある程度は戦えるぞ……


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