振り向かないで。
掲載日:2019/10/07
振り向かないで、踊る心が恥ずかしい。
枷が外れた仔犬のように、跳び跳ねる想い。
まるで私じゃないような、思わせ振りな笑顔を見せる。
振り向かないで、咲き誇る期待が恥ずかしい。
檻を知らない野良犬のように、気ままな想い。
まるであなたじゃないような、願いを叶える仕種を見せる。
心地いいその声が、干からびた夢に染み渡る。
止めることはできない架空の時間で待っていて。
錨を持たない難破船のように、潰えた想いもそのままに。
あなたの声を響かせたまま、消え失せるのもいいでしょう。
あなたの姿も思いのまま、見棄てられるのもいいでしょう。
手の施しようのない時間の中で待っていて。
そこなら、あなたの期待に応えられる。
ここなら、あなたは希望に応えてくれる。
私が耳を塞いでいるのは、あなたの声を忘れないため。
私が口を閉じているのは、あなたとの秘密を洩らさないため。
私が目を隠しているのは、あなたとの秘密を忘れないため。
そんな私を見つけても、優しく声を掛けないで。
こんな私とすれ違っても、決して振り向かないで。
決して、振り向かないで。
決して、振り返らないで。




