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財産目当てと言われました  作者: 栗須まり
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金色の微笑み

「アインの回復具合はどうだ?フランツよ」


「順調です。最近では起き上がれる様になりました。しかし殿下、ポリニューの娘の処遇をユリテーヌ公爵令嬢に任せたのは意外でした」


王弟殿下は紅茶を一口すすりながら、優雅に微笑んだ。

「金色の微笑み殿下」の二つ名を持ち、そこにいる全員を虜にする極上の微笑みだ。

最も殿下を良く知るフランツにとっては、その微笑みが恐ろしくすらあるのだが。


「ポリニューの娘には程良い距離で、世の中を学んで貰わなければならん。その点ユリテーヌ公爵令嬢なら悪い様にはせんからな」


「殿下はユリテーヌの資質を大分気にされていますが、ユリテーヌの資質とはそんなに影響力のある物なのですか?」


「ユリテーヌ領は気候も温暖で海に面した広大な土地だ。その為常に近隣諸国から狙われて来た。我が国にとってユリテーヌ領を奪われると言う事は、国土の三分の一を失う事と同じだ。だからユリテーヌ領を守る為、確か5代くらい前になるかな?ユリテーヌに皇女を降嫁させたのだ。だからユリテーヌは王家の血を受け継いでいる。ユリテーヌ領を守るには王家の力が必要だったのだ。それがユリテーヌの資質だ」


「ですがユリテーヌ公爵令嬢には殿下の様な力は無い様に見えますが?」


「私と全く同じ力を持っていたら、王家はユリテーヌに滅ぼされてしまっただろうな。我が祖先はそれも考慮していた。だからこそ皇女なのだ。私と同じ力は男子にしか現れない。皇女の血から産まれるのは、何をどうすれば円満に解決するかを判断出来る決断力だ。だから其方にユリテーヌ公爵令嬢の円満な解決策を測らせたのだよ」


「成る程。ではユリテーヌ家は決して戦わないという事ですね。博愛主義というか」


「それはちょっと違うぞフランツ。戦わないという事は無い。ユリテーヌは自分達の危機には立ち向かう。自分達から仕掛ける事はしないだけだ」


「そういえば確かに思い当たる節もあります。その資質によりポリニューの娘は生かされた訳ですが、あの娘を殿下はどう利用するつもりですか?」


「ギーズ侯爵には跡継ぎがいなかったから、ギーズ領は国の預かりとなっていたが、近々外国で行方知れずになっていた息子が跡を継ぐ事になるだろう。名はアイザックでどうだ?」


「元の名に近いですがよろしいかと。ギーズ領は隣のアリタイ共和国との国境に近いですからね。あの者の能力ならば、アリタイの情報収集に役立つ事でしょう」


「上手く働かせるには餌が必要だ。そして働きに応じては褒美もな。アイザックには他の何より尊い餌となり、褒美となるだろう」


「金銭的な褒美よりよっぽど価値があるという訳ですね。しかし人の趣味とは分からない物ですね」


「その言葉はそのまま其方に返すぞ。其方の婚約者も美人だが少々活動的過ぎる。まあ、ジュールにはあれぐらいでないと嫁げぬか」


「彼女は聡明で情の深い女性です。確かに活動的という面では手を焼いていますが」


「まあ其方と結婚して3カ月もすれば落ち着いてくるだろう。其方達の結婚式の前にユリテーヌの結婚式があったな。今回の功労者として何か褒美を取らせるとしよう」


「彼等も喜ぶ事でしょう。私の結婚祝いも殿下には期待しておりますよ」


「其方も抜け目がないな。考えておこう。では引き続きアイザックの様子を報告頼む」


「了解しました。本日はこれにて失礼致します」


フランツが立ち上がると王弟殿下は残りの紅茶を口に含み、ヒラヒラと手を振って「金色の微笑み」を浮かべた。

この微笑みの裏に何があるのか、知っているのはフランツだけだ。

全ては殿下の思惑通り。

ペール卿は流刑地で、原因不明の病により近々死を迎える事となるだろう‥‥


読んで頂いてありがとうございます。

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