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財産目当てと言われました  作者: 栗須まり
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昔話をしましょう2

15歳になる年、王都のソワーレ学園へ通う為、私はタウンハウスへ引っ越して来ました。

ソワーレ学園は3年制。寮から通う子もおりましたが、ダゴベールやティエリーの様に自宅から通う子も多かったので、あの事件もありましたから安全性を考えて、タウンハウスから通う事にしましたの。

両親も一緒に王都へ来ましたが、父は領と王都を行ったり来たりで大変だったと思いますわ。

父には苦労をかけました。

これからちゃんと親孝行しますわね。


学園へ入学して、すぐにシュザンヌ様と仲良くなり、親友になりましたの。

2学年上のティエリーは、学園中の女の子からキャーキャー言われて、大変人気がありました。

しょっちゅうクッキーやら、カップケーキやらプレゼントを貰っていましたし。

甘い物が苦手だと言って、貰った物を私に持って来るのはお断りしましたわ。

だって、女の子達の気持ち、分かりますもの。


ある時、昼休みに中庭を歩いていましたら、遠くにベンチに座るティエリーが見えました。

横には燃える様な赤髪の、ティエリーと同学年では有名な美女のヴィヴィアンヌ様がいらっしゃいました。

その光景を見て、私は自分が勘違いをしていたという事に気付いたのですわ。

だって、私が今まで見た事もないくらい、優しく微笑んでいたのですもの。

ヴィヴィアンヌ様はティエリーの手を握って、ウットリと見つめていらしたのですもの。


それから程なく、学園中で「お二人はベストカップルよ」と騒がれておりましたわ。


この頃からですわね。私がティエリーを避ける様になったのは。

仄かな恋心に蓋をして、開かない様にティエリーに近づくのをやめたのです。


もちろん、そんなのティエリーは知らないものですから、お構いなしに今迄通り学園でも声を掛けてきましたわ。

その度に陰ではヴィヴィアンヌ様の取り巻きの方々から、嫌がらせをされてきましたが。


あの時はシュザンヌ様が随分助けて下さいました。

親友って有り難いですわね。

ダゴベールにも助けて貰いましたが、ティエリーにだけは言わないでって、口止め致しましたわ。

だって、私はティエリーにとってからかい甲斐のあるオモチャですわよ。

どうにかして貰える訳ないじゃないですか。


それでも、ティエリー達が卒業したら嫌がらせも無くなり、私の学園生活は落ち着いた物に変わりました。


それからは本当にティエリーとは会わなくなりましたわ。

事業を始め、忙しくあちこち飛び回っている様でしたし、ダゴベールも伯父の事業を手伝い始め、あまり会う機会も無く、自然とダゴベールの家から足が遠のいていきました。


16歳になり、私も社交界へデビューする事になりました。

初めて出席した夜会には、ダゴベールにエスコートして貰いました。

すると、その夜会にはティエリーが来ていたのです。

ヴィヴィアンヌ様をエスコートして。

初めての夜会は最悪の気分になりましたわ。

「人に酔った」と言って、気付かれない様1人控室へ戻り、長椅子にもたれて時間を潰していましたの。

暫くすると、控室の扉をノックする音が聞こえました。

「どうぞ」と言うと扉が開き、そこにはティエリーが立っていました。

私は驚いて声が出ませんでしたわ。

だって来るはずがない人が目の前にいるんですもの。

「エリー、久しぶりだね。気分が悪いんだって?」

「お久しぶりですランドゥール様。私は大丈夫ですので、早くお戻りになって!」

緊張して思ったより冷たい口調になりましたわ。

「何故ティエリーと呼んでくれないの?」

「私も社交界へデビューしました。これからは将来の伴侶となる、お相手も探さなければいけません。淑女として、特定の殿方と馴れ馴れしく口を聞く訳には参りませんわ」

「僕は君のお相手の選択肢には入っていないと、そういう事?」

「何をおっしゃっているのかしら?貴方には既にお相手の方がいらっしゃるではありませんか?それに、私も貴方にからかわれるのはお断り致します」

少し強く出たら、さすがのティエリーも悲しげな微笑みを浮かべておりました。

少し胸が痛みましたが、私もいつまでも叶わぬ恋心を抱いている訳には参りません。

ここでキッパリ思い出にお別れするつもりでしたの。


「エリー、僕は諦めが悪いんだ。覚悟していて」

何の事やら‥‥キョトンとしておりますと、いきなりガバッと抱きしめられました。

そう、ちょうど今と同じ様に。


そうしてティエリーは無言で控室を出て行ったのですわ。


それからは夜会も事前に出席者を確認してから、出席する様になりましたし、ダゴベールを訪問する際も、ティエリーのスケジュールを確認してから、いない隙に訪問する様にしていました。


どういう訳か、時々夜会で会ってしまう事はありましたけど。

その度に私の周りに集まる殿方を押し退け、ダンスに引っ張り回されましたけど。


まあ、それから学園を卒業し、領地に引き篭もっている間は会う事も無かったのですけどね。


昔話はこんなところでしょうか。

私がこの人を苦手としている訳は、分かって頂けましたかしら?


あら、それにしても、いつまで抱きしめているつもりなのかしら?




読んで頂いてありがとうございます。

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