初めてのケンカ?
ダゴベールの家を出て我が家に帰って来ましたが、ティエリーはずっと無口です。
何かを深く考えているようで、話しかけにくい雰囲気を纏っています。
それぞれに入浴を済ませ、寝室に入ってもそれは続き、ついに沈黙に耐えられずソファに座るティエリーの首を後ろから抱きしめて耳元で囁きました。
「ごめんなさい!私は貴方に心配ばかりかけているわね。呆れてしまったのでしょう?」
「‥‥ああ、呆れているよ。自分にね」
「えっ?なんで?どう考えても私でしょ?」
「‥‥違う、僕は君が僕以外の人に相談しなければならない程追い詰めていた事に気付かなかったし、相談相手に嫉妬している自分に呆れているんだ」
「ええっ!そ、そんな、それじゃあ私どうしたらいいの?」
「これは僕の問題で、君は何もしなくていい」
「いいえ!だって私が原因じゃない。ティエリーを悩ませているのは私だわ!」
「だから、君は何もしなくていいと言ってるだろ!」
「‥‥‥」
どうしたらいいか分からず、ティエリーから離れました。
背中を向けて寝室を出ようと扉へ向かいます。
こんな空気は耐えられないわ‥
「リーゼ何処へ行くの?」
「‥‥客間で寝るわ。私がいない方がいいでしょう?」
ティエリーに背中を向けたままそう言って、扉を開けました。
グイッと強い力で腰を引き寄せられ、寝室に戻されます。
扉がパタンと閉まり、視界が遮られました。
ティエリーは私を腕の中に閉じ込めて、苦しそうに囁きます。
「頼むからいない方がいいなんて言わないでくれ。何処にも行かなくていい。側にいて‥‥」
目頭が熱くなって視界が歪みます。
ポロポロと涙が溢れ頰を伝う涙がティエリーのガウンを濡らしました。
「僕は心が狭いな。君を泣かせるつもりなんてなかったのに。ごめんリーゼ八つ当たりだ。いつだって君の一番の理解者でいたいのに、そう出来ていない自分に腹が立って、終いには相談者にまで嫉妬している。君だって呆れるだろう?」
私はフルフルと首を振り、ティエリーを見上げました。
「‥やっぱり私が悪いわ。誰かに相談する前に、きちんとティエリーと話し合えば良かったのよ。私、ティエリーを怒らせて嫌われるのが怖かったの」
「僕が君を嫌う?あり得ないね!何が起きてもそれは絶対にない。君が不安に思うならそう思わせない様に努力するよ。でも約束してくれ。次からは絶対一番最初に僕に相談してくれ。助言が必要なら、2人で助言してくれる人の元へ行こう」
「‥‥ええ」
「さあ、もう泣かないで」
グズグズと泣く私の目元と頰にチュッと音を立ててティエリーが優しくキスしてくれます。
それでもまだ泣く私の唇にティエリーはキスしました。
「やっぱりこうしないとリーゼは泣き止んでくれないね」
真っ赤になった私を見て満足そうに微笑みました。
ティエリーは私を抱き上げベッドへ横たえ、じっくりと情熱的なキスを繰り返します。
頭がボーッとなり、ティエリーにしがみ付きキスに応えました。
そうして情熱のまま愛し合い、仲直りの朝を迎えました。
昨日は初めてケンカ(?)みたいな雰囲気になりましたけど、今日は元通り仲良しです。
というか、ティエリーはいつも以上に甘いです。
不安に思わせない様に努力してくれているのでしょう。
私も何かお返ししなければいけませんわね。
結局甘やかされているのはいつも私ですから。
「行ってくるよリーゼ。今日はフランツさんに連絡して、日記の入手や面会が可能か聞いてくるから、いい子にして待ってて」
「ありがとうティエリー」
そう言ってティエリーの唇にキスをして
「世界で一番愛しているわ」
と囁くと、ティエリーは真っ赤になって私をきつく抱き締めました。
「可愛いすぎて閉じ込めてしまいそうだよ」
そう言って名残惜しそうにティエリーはお仕事へ向かいました。
少しはお返し出来ているかしら?
いつもありがとうございます。




