見届け人
誤字報告、訂正致しました。
ありがとうございます。
父上とリーゼの隣を争った結果、リーゼが角に1人で座り、父上と向かい合う形になってしまった。
くそっ!父上め!
どこまでも邪魔をしてくれる。
不機嫌な僕を他所に、リーゼはニコニコしながら父上と話している。
父上は時々リーゼの口から「お義父様」という言葉が出ると、子供の様に喜んでドヤ顔で僕に訴えてくる。
全く大人気ない。
結局デザートまでそんな感じで過ぎてしまった。
しかしそろそろここら辺で話を切り出さなければ。
「父上、リーゼ、聞いて欲しい話があるんだ」
「なんだい改まって?」
と父上が言うと、リーゼは何の話か分かったらしく、ハッとした顔を向けた。
そんな顔も愛しくて可愛い。
「ティエリー、フランツ様は何と?」
「実は‥‥」
僕は今日のフランツさんとの一部始終を2人に話した。
リーゼは怖がるだろうか?
もしリーゼが嫌がったら、この作戦は無かった事にして貰おう。
「分かりましたわ。流石はフランツ様ですのね。それで、具体的な日付はいつにしましょうか?」
「えっ!?リーゼこの作戦でいいの?」
「ええ。何の異論もございませんわ。元より私が言い出した事ですし。そりゃあちょっとは怖いですわ。でも‥‥」
「でも?」
「ティエリーが一緒にいてくれるんでしょ?貴方がいてくれるなら、私は大丈夫ですわ」
「エリーゼ嬢の覚悟を君は尊重してやるべきだ」
フランツさんの言葉が頭に響く。
彼女の意思、彼女の気持ち、彼女の責任。
これら全てに覚悟を決めて、愛する人は戦おうとしている。
だから僕も覚悟を決めよう!
「もちろんさ!僕は絶対君から離れない!!」
「はい、そこまで!」
ずっと黙っていた父上がいきなり会話を止めた。
「エリーちゃん、こんな危険な作戦は褒められた
物じゃないね。それにティエリー、私が賛成するとでも?」
「父上に賛成して貰おうとは思っていません。僕だって反対したんですから。ただ、ポリニュー邸の使用許可だけ頂きたいのです」
「許可しないと言ったら?」
「何としても許可して貰います。これは僕達の覚悟です!」
父上の目をじっと見つめ、お互いに睨み合う。
リーゼはニッコリ笑って父上に言った。
「お義父様、許して頂けないかしら?でないとおじ様と呼びますわよ」
「うっっっ!!そんな、エリーちゃん!」
父上は涙目でリーゼに今にも縋り付く勢いだ。
「分かって下さいお義父様。私達は自分達の力で乗り越えたいのです。これは私の父ユリテーヌ公爵からのテストみたいな物でもあるのですわ」
父上は長い溜息を吐き、リーゼに向かって口を開いた。
「意地悪を言って悪かったねエリーちゃん。実はお父上のユリテーヌ公爵から、君とうちの愚息がどの様に自分達で道を切り開くか見届けて欲しいと言われて来たんだよ」
「「ええっ!!」」
「君達の覚悟がどれ程の物か、私の判断に任せると公爵は仰っておられた。今日ティエリーはジュール殿に面会へ出掛けて行ったと聞いたので、そろそろ君達が動き出すのではないかと思ってね、それで夕食を一緒にと言ったのだが案の定だったね」
「それでは最初から父上は‥‥」
「作戦の内容は知らないよ。だがジュール殿の立てた作戦ならば、不安要素は一掃されるだろうとは思っていた。少々危険ではあるがね」
「父上が反対されたのはわざとですか?」
「どんな作戦を聞かされても反対するつもりだったよ。君達の覚悟を見届けるのが私の役目だからね。エリーちゃんは心配ないと思っていたが、お前は次男で嫡男としての責任感が無いのをいい事に、ただエリーちゃんが好きだから結婚したいと言うだけだった。それが心配だったのだよ。家を継いで守っていくという事を理解していないお前がね」
「父上の仰る通りです。ですが今はでしたと言わせて貰います。それを教えてくれたのはリーゼとフランツさんです」
父上は真っ直ぐに僕の目を見て微笑みながら言った。
「やっといくらかマシな顔をする様になったじゃないか。でもまだまだだ。公爵に学びなさい。そして自分の役割を自分で考えて行動しなさい。言うだけなら誰でも出来る。私はお前の行動と君達の作戦を見届けよう」
リーゼは立ち上がって父上の元へ行き父上の頰にキスをした。
「お義父様、いいえランドゥール伯爵、父と私達の無理なお願いを聞いて下さって感謝致します」
「エリーちゃんもう一回!今度はこっちの頰に!」
流石に父上は抜け目がない。どさくさに紛れてとはこういう事だろう。
リーゼは言われるまま父上の反対側の頰にキスをした。
僕も立ち上がり父上の元へ行きリーゼを引き剥がす。
「僕からも感謝のキスをしましょうか父上」
「えーやだよ気持ち悪い!せっかくエリーちゃんがキスしてくれたのに汚れる」
「冗談はともかく、父上ありがとうございます」
「我が家の可愛い娘を必ず守るんだぞ」
「はい!必ず!」
母上にバレるといけないからと、父上はその後すぐ帰って行った。
帰り際にリーゼにあの箱をプレゼントとして渡して、喜んだリーゼにハグされた所は流石に抜け目がない。
寝室のベッドの上でリーゼが父上からのプレゼントを開けた。
「わあ!可愛い!!」
上質なシルクで仕立てられた真っ白なベビー服が一式入っている。
「でもまだ気が早いんじゃないかしら?」
僕はプレゼントを傍のチェストへ移動させ、リーゼを抱き上げベッドへ横たえる。
「父上の期待に応えなければね。こういう期待なら大歓迎だよ」
真っ赤になるリーゼの唇を奪って、労わりながら愛し合った。
これから先何があろうと、僕は彼女とこれから増えるであろう家族の、盾となり剣となろう。
読んで頂いてありがとうございます。




