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財産目当てと言われました  作者: 栗須まり
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朝を迎えて

鳥の鳴き声が朝がやってきた事を告げます。

なんだか体の自由が利きませんわ。

重みを感じて目を開けると、隣にはティエリーの端正な横顔が‥‥


キャ〜!!

そうだわ、昨夜私達は‥‥結ばれたのだわ。

こんな時どんな顔したらいいのかしら?


私の体はガッチリティエリーに抱き締められていて、思う様に動かせません。

もぞもぞしているとティエリーの腕に力が入りました。


「リーゼ、起きたの?」

「ええ‥」

「体は大丈夫?痛い所はない?」

「ええ‥」

「朝起きて隣にリーゼがいる。夢みたいだ‥」

「私も。でも、なんだか恥ずかしいわ」

「どうして?顔を見せてよ」

「嫌よ。恥ずかし‥‥んっ!!」

ティエリーに唇を塞がれました。


「ずっとこうしていたいけど、起きないといけないね」

「そうね。ティエリー先にベッドから出て」

「どうして?恥ずかしがる事ないだろ?」

「‥どんな顔したらいいか分からないんですもの」

「じゃあ僕の顔を見て」

「えっ?」

ティエリーは顔をほんのり赤く染めて潤んだ瞳で私を見つめています。

「フフッ。同じなのね」

「そう。同じだよ。一緒に起きよう」

そう言ってティエリーは起き上がり、ベッドから私を抱き上げました。

「マリアを呼んでくるから着替えておいで。一緒に朝食を摂ろう」

軽く抱き締めて頰にキスをして、ティエリーは部屋から出て行きました。


甘いわ‥‥

甘過ぎて心臓が持たないわ‥‥


着替えて朝食に降りて行くと、ティエリーはすっかり支度を整えて新聞に目を通していました。


改めて見ても‥カッコいいわ!

入浴後のラフな姿もステキだったけど、お仕事へ行く時のスーツ姿も、後ろへ撫で付けた髪型も、新聞を読む真剣な表情も!


これじゃあ他の女の人達だってほっとかないんじゃないかしら?


私に気付いたティエリーは顔を綻ばせ隣に座る様促します。

素直に隣に座ると甲斐甲斐しく私の世話を焼き始めました。

パンを一口大に千切って私の口へ運んだり、コーヒーに私の好む量のミルクと砂糖を入れて取りやすい位置に置いたり。


「ティエリー、自分で出来るわ!子供じゃないんですから」

「えー!やらせてよ。この後仕事へ行ったら夜まで会えないんだから」

「それとこれとは別よ。それにあんまり時間が無いからお話しながら食べましょう」

「分かったよ。残念だけどね」

「ティエリー昨夜の話なんだけど、フランツ様に協力頂けないかしら?」

「囮の話?」

「ええ。一口に囮と言っても、確実に捕える場所や警備、情報操作が必要だわ。フランツ様なら良い案を出してくれるのではないかと思うの」

「確かにそうなんだけど、シュザンヌ嬢に知られたらややこしくなるかもしれないね」

「シュザンヌ様?ティエリーと同じ様に止めようとするって事?」

「いいや、その逆さ。シュザンヌ嬢なら自分も囮になると言い兼ねない。僕はフランツさんに恨まれるのは避けたいし」

「シュザンヌ様なら言い出しそうだわ。と、するとやっぱり自分達で何とかするしかないわね」

「う〜ん‥そうなるかな。情報操作は新聞社に伝手があるから、なんとかなりそうだけどね。例えば君が出席する夜会の招待客リストを載せたりとか」

「夜会はダメだわ。他の招待客に迷惑がかかってしまうもの。何より夜会用ドレスでは動きにくくって」

「そうだね。それで一つ考えたんだけど、ポリニュー元侯爵邸に視察へ行くっていうのはどうかな?実は今借金のカタにランドゥール商会の持ち物になっているんだ」

「ええっ!!いつの間に?」

「事件直後だよ。王弟殿下がその様に判断なされたんだ。売るよりは改装してホテルとして使えば、いずれ負債分は取り戻せるからと。派手好きらしく贅を尽くしてある建物だからね、宿泊したい市民や貴族は多いだろうと。今は話題性十分だし」


「ハァー王弟殿下って先見の明をお持ちなのね。でもこれはチャンスですわね!ポリニュー元侯爵邸ならかつて知ったるなんとかで、油断しておびき出されてくれるかもしれませんわ!」

「問題は警備だね。もしかしたら我々の知らない抜け道なる物が存在する可能性だってあるし」

「そうね。代々続いたお屋敷という物は大抵そういった抜け道が存在するわ。やっぱり警備だけフランツ様にアドバイスを貰うというのはどうかしら?あくまでアドバイスだけで」

「僕から連絡しておくよ。君からの手紙じゃシュザンヌ嬢に気付かれ兼ねない」

「そうね。今シュザンヌ様はジュール邸に滞在なさっているんですものね。シュザンヌ様の行動力には頭が下がりますわ」

「僕はシュザンヌ嬢の行動力に何度も助けられたけど、フランツさんは気が気じゃないだろうね」

「シュザンヌ様から聞いたんだけど「困った人だ。でも断れないから仕方がない」っていつもフランツ様に言われているんですって」

「あーその気持ち良く分かるよ。僕だってこんな作戦本当は断りたいよ」

「あら!今更反対なさるつもり?」

「いいや。断れないから仕方がない」

「まあ!ウフフフ!」

「ハハハハハ!」


こんな風に毎朝これからもティエリーと過ごしていきたいわ。


あ、勿論出掛ける時には浮気しないでねって釘を刺しましたけど。

なんだか自分がティエリーに対して、ドンドン欲張りになっていく気がして困りますわ。


読んで頂いてありがとうございます。

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