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財産目当てと言われました  作者: 栗須まり
23/51

出迎え

フランツが家に着いたのは夜中に近い時間だった。

北の離宮からフランツの家までは大分距離がある。

家人も殆ど寝ているだろう。

日頃からフランツの不規則なスケジュールは皆理解している為、あえて待たない様指示してある。

執事だけは必ず出迎えているが。


今夜も執事が1人待っているだろう。

そう思いながら扉を開けて中に入った。


「フランツ様!もう!私、待ちくたびれましたわ!」

寝間着にガウンを軽く羽織ったシュザンヌが、玄関ホールで腕を組んで待っていた。


「えっ!?シュ、シュゼ!どうしてここに!?」

「手紙が届いたからですわ。危険だから外出しない様になんて書いてあるのですもの」

「それで、何でこうなる?」

「あら、私身を守る為に来ましたのよ。私を守るのは貴方ですわ」

「ククッ‥ハハハハ!」

「まあ!笑い事じゃありませんわ!でも、本当は会いたかったからですの。フランツ様は最近お忙しいのですもの。ですから私、花嫁修行と行儀見習いの名目で、こちらに当分滞在致します」


フランツはシュザンヌの肩に頭を乗せ、長い溜息を吐いた。


「本当に困った人だ。でも、断れないから仕方がない」

「フフフ‥‥私、懲りませんのよ」

「知っている」

そう言うとフランツはシュザンヌを軽々と抱き上げ階段を登り、二階の自室へ入りベッドの上にシュザンヌを下ろした。

そして、シュザンヌの上に覆い被さり、シュザンヌの首筋にキスをした。


「ちょ、フランツ様!どうなさったの?」

「シュゼにはお仕置きが必要かと思ってね。それに、夜中にそんな格好で男の前に来てはダメだ」

「男ではありませんわ。私の愛する人ですわ」

「シュゼ、僕だって男だよ。愛する人がそんな悩ましい姿で目の前に現れたら、理性だって吹っ飛ぶよ」

「そ、それは私がうかつでしたわ。で、でも、ダメですわ!」

「シュゼは僕と結婚するんだよ。それなのにダメ?」

「ダメじゃないけど、ダメですわ!だって結婚式前にお腹が大きくなってしまったら、ウエディングドレスの着たいデザインが着られませんもの!」


シュザンヌがそう言うと、フランツは小刻みに震え出した。

どうやら笑いを堪えているらしい。


「フランツ様ったら!私をからかったのですね!」

「いいや本気だよ。でもシュゼの可愛らしい望みは叶えてやらないといけないから今夜は我慢する。そのかわり、抱きしめていい?」

「ええ。勿論ですわ」

フランツはシュザンヌの豊かな胸に顔を埋め、腰の辺りを軽く抱きしめる。


「シュゼに会いたかった‥‥」

「私も。だから会いに来ましたの。大人しく待ってなんていられませんわ。疲れた貴方を癒して差し上げたかったのですわ」

そう言ってシュザンヌはフランツの頭を優しく撫で、子供をあやす様に背中をポンポンと軽く叩く。

フランツは目を閉じてそのままじっとしていた。


「フランツ様?‥‥寝てしまわれたのかしら?」

「‥‥起きてるよ。気持ち良くて寝てしまいそうだけどね」

そう言った後フランツは体を反転させて起き上がり、シュザンヌを抱きおこす。

ベッドの上で、2人は向かい合って座る格好になった。


「シュゼ、明日から大きな動きがある。今は言えないが、君もこの国の全員も数日の内に知る事になるだろう。今言える事はポリニュー侯爵が投獄されたと言う事だ。恐らく犯罪者として全てを奪われ重い刑を受ける筈だ」

「な、何ですって!!‥‥それじゃあ、あの女狐は‥‥!こんな事を言うのは何ですけど、憐れというか、自業自得というか‥」

「優しいね。僕はいい気味だと思ったよ」

「最初はチラッとそう思いましたわ。でもあの女狐には諭してくれる人が誰もいなかったのですもの。ですから憐れとだけ。今はそう思いますの」

「うん。僕のシュゼは流石だね。だけど、侯爵は投獄されたが娘は行方を眩ましているんだ」

「ええっ!!」

「娘1人なら大したことないんだけどね、あの支店長だった男も一緒に行方を眩ました。名前はアイン。アインは娘の為なら何だってやる。人殺しでもだ。そして今、娘は怨みを持っている。それが自業自得だとしても。あのバカ娘は我儘が通るのは当たり前で、通らない時は誰かのせいにする。だから君と君の親友のエリーゼ嬢が狙われる恐れがあるんだ」

「エリーゼ様は、エリーゼ様はその事をご存知?」

「多分明日にもランドゥールが伝えるだろう。僕も出来るだけ協力はするが」

「私も手紙を書きますわ。それにしても、なんて事!どこまでも忌々しい女狐ですわ!!」

シュザンヌが眉間に皺を寄せて腹立たしげに言うとフランツはシュザンヌを引き寄せ抱きしめた。

「大丈夫だよシュゼ。僕が必ず守るから。大人しく守られてくれるかい?」

「‥‥ええ」

「じゃあ、約束だ」


フランツはそう言ってシュザンヌの唇に自身の唇を重ねた。


唇は温かく、お互いの存在がより近く感じられて、守るべき大切な人を深く刻み込んだ。


読んで頂いてありがとうございます。

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