パートナーの真相
馬車に乗り込み、いざ婚約披露パーティーへ!
と、思ったら、なんで私の隣に座っているのかしら?
そしてなんで当たり前の様に、私の腰に手を回しているのかしら?
「ティエリー様、何故向かい側の席へ座らないんですの?」
「リーゼに久しぶりに会えたのに、離れて座るなんて無理だね」
「は?」
「君は昔から僕のお気に入りなんだよ、可愛いリーゼ」
はいはい。ぱっと見、口説き文句に聞こえますが、そうでない事は百も承知ですわ。
「昔から貴方のお気に入りのオモチャであったという事は、理解しておりますけど?」
「オモチャね‥‥」
あら?ちょっと哀しそうに見えますけど、まあ気のせいですわね。
「とにかく、もうオモチャで遊ぶ歳でもありませんし、私もオモチャは卒業致しました。からかうのはお止めになって。今日だけパートナーを務めて頂けるのは、感謝致します。でも、それだけですわ」
「今日だけで済むと思ってる?このパーティにパートナーとして出るのにどんな意味があるのか、君は理解しているの?」
「は?」
「リーゼは最近引き篭もっていたから、知らないとは思っていたけど、2か月程前に王弟殿下の婚約披露パーティーがあったのは知ってるよね?」
「ええ。確か、お相手の決まった貴族の子女をパートナー同伴で招待して、一斉に全員のお披露目も兼ねたとか‥‥」
「うん。だからそれに習って、最近の婚約披露パーティーは、招待客全員パートナー同伴で、全員のお披露目も兼ねた物になっているんだよ」
「えっ!!」
「つまり僕等はパートナーとして、公に認められる。だから親密度を上げる必要がある」
「な、なんですって!!」
「言ったよねリーゼ。僕によろしくって。もう後戻り出来ないよ」
「なんて事‥‥それじゃあ貴方と婚約しなくちゃならないじゃない!貴方だって、それは本意じゃない筈よ」
「僕は君自身の財産目的だから、一向に構わないよ。婚約したって解消出来るんだから、君だってその間にゆっくり相手を探せばいいさ。もっと気楽に考えて」
「‥‥残酷だわ‥」
ええ、本当残酷ですわ。
だって私、この人と関わらない様に避けて来たんですもの。
それなのに、偽りとはいえ婚約しなくちゃならないなんて。
本当この人はいつも私の心を平気で傷付ける。
さっきだって、口説き文句の様に囁いたかと思ったら、財産目的だから、勝手に相手を探せって突き落とす。
だから苦手。
本心が分からないんですもの。
「リーゼ、こっち向いて」
「え?〜!!!!!!」
いきなり目の前に端正な顔とサファイアの瞳が現れたと思ったら、次の瞬間私の唇にこの人の唇が重なって‥‥
「‥‥んむっ‥‥うっ‥」
逃れようとしたら何か変な声出てしまいましたわ。腰はガッチリ引き寄せられて動けないし、ちょっと〜〜長いんですけど!
「やっぱり可愛いねリーゼは。反応も全部」
「い、いきなり何をなさいますの!!」
「何って、婚約者ならキスしなきゃ。君とは何度もキスしたでしょ。最後にキスしたのは4年前だね」
「あ、あんな子供の頃の、しかも貴方はからかう為にしてただけじゃなくて?」
「う〜ん、僕は君を見るとキスしたくなるんだから、しょうがない」
「は?」
「可愛いリーゼ。今度は君からキスをして」
「嫌ですわ!」
「婚約者だよ?そんな態度じゃシュザンヌ嬢がどう思う?幸せな席なのに、君に気を使う羽目になると思わないかい?リーゼ、これは練習だ。婚約したらその間は親密度を示す必要がある」
「‥‥‥‥」
「さあ、諦めて君からキスをして」
もう、言ってる事メチャクチャって思うのは私だけ?
それでも私はこの悪魔の囁きに逆らえないのですわ。
「‥‥チュッ!」
思いきってキスしましたわよ。
あ〜もう!恥ずかしいったらありゃしない!
ってまた、私とした事が!
きっと今、顔どころか全身真っ赤になってますわね。
あら?ティエリー様?
何だか貴方のお顔も真っ赤ですわよ?
光の加減かしらね?
それにどことなく、狼狽えていらっしゃる様な‥‥?
読んで頂いてありがとうございます。