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財産目当てと言われました  作者: 栗須まり
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婚約指輪


私の好きな人が、私の事をずっと好きでいてくれた。

こんな幸せな事ってないわ!

私はティエリーの首に腕を回して、繰り返される彼のキスに応えています。

ティエリーのキスはどんどん情熱的に変わり、なんだか頭がポーッとしてきました。


不意に唇を離してティエリーが苦しそうに言いました。

「このまま君をベッドへ運んで、君の全てを僕の物にしてしまいたいよ。でも、まだ結婚式前だ。理性が働く内に我慢する事にするよ」

私は顔がカッと熱くなりました。

ベッドって‥‥そういう事ですよね。

「恥ずかしいですわ」

「うん。そうやって恥ずかしがるリーゼも可愛いね」

「嫌ですわ。私だって貴方の瞳がどれだけステキだと思っているか、分かりませんの?」

私がそう言うとティエリーはあっという間に真っ赤になりました。

「ヤバイ!君にそういう事を言われるのは、凄く照れ臭いよ」


思い起こせば今迄ティエリーには「可愛い」とか「僕の天使」とか、顔から火が出そうなセリフを散々言われて来ましたけど、私って何も言ってなかったわ。


「ティエリー私ね、ずっと貴方が好きだったの。子供だった馬鹿な私は、貴方が私をからかっているとしか思えなかったの。そして勝手に勘違いして、貴方とヴィヴィアンヌ様がお付き合いしていると思い込み、貴方を避ける様になったわ。好きな人が振り向いてくれないのなら、側にいるのは辛いだけだと思ったから。この婚約にしても、貴方が私の肩書き以外興味が無いのだと思っていたわ。でも、そうではないと知った今、貴方に素直な気持ちを伝えたいの。私は貴方を愛してるって」


ティエリーは益々真っ赤になって、片手で顔を覆いました。

なんだか悶絶している様な?

フフフ。こんな顔が見られるなら、これからはもっと甘い言葉を囁きましょう。


少し落ち着きを取り戻したのか、ティエリーはシャツのボタンを2、3個外して首から金色のチェーンを取り出しました。


金色のチェーンには指輪が二つ通してあり、それぞれに小さい宝石が嵌め込まれています。


ティエリーはチェーンから指輪を外して立ち上がり、私の前に片膝をついて跪きました。


「いつか君に渡したいと思って、ずっと身に付けていたんだ。凄く遠回りをして、やっと君に渡せるよ。エリーゼ・ド・ユリテーヌ嬢、心から君を愛してる。今の君も、これから先もずっと君を見ていたい。僕と結婚して下さい」


そう言って私の手を取り、ティエリーの瞳と同じ色のサファイアが嵌め込まれた指輪を、私の右手の薬指に嵌めました。


嬉しくて目を潤ませると「僕の指にも嵌めてくれる?」と言って、もう一つの指輪を私に渡します。


私も渡された紫色のスピネルが嵌め込まれた指輪を、ティエリーの指に嵌めました。


「これでやっと君の婚約者として胸を張れるよ」

「私、幸せですわ。こんなサプライズが待っているなんて、思ってもいなかったんですもの」

「それじゃあ毎日君を驚かせる努力をしよう。結婚式が楽しみだね」

「毎日じゃ心臓が持ちませんわ。私だって毎日貴方に甘い言葉を囁くつもりですから、覚悟なさってね?」

そう言ってティエリーの唇にキスをすると、ティエリーは悶絶していました。


幸せですわ。

幸せですけど、そういえば色々な事がまだ解決していませんわね。

思い切って聞いてみましょう。思い出すだけで身震いしますけど。


「ティエリー、あの、私を攫ったあの男はどうなりましたの?」

ティエリーは顔をしかめて嫌悪感を露わにしながら説明してくれました。

「あんな奴殺してやりたいぐらいだが、君には聞く権利があるからね。今は牢屋の中だけど、近い内に然るべき処分が下るだろう。ブロア子爵は馬鹿息子を絶縁したよ。だからあいつはもう庶民になった。庶民が貴族の令嬢を誘拐したとして裁かれるだろうね。ただ、どうもあいつはそそのかされたという様な事を喚いているんだ。馬車を用立て、君の居場所を教えて攫ってしまう様そそのかされたと。つまり、他に協力者がいるので、自分だけが裁かれるのは公平ではないと」

「協力者ですって!!」

「ああ。君を恐がらせたくないから本当は言いたくなかったんだけど、万が一協力者がいた場合、また君が狙われる可能性がある。だから君にはその可能性を知った上で、十分に用心して貰いたいんだ。明日から僕は君に護衛を付けるけど、承知してくれるかい?」

「ええ。なるべく出掛けるのを控えますわ。それにしてもゾッとする話ですわね。私は誰かに狙われているんですのね‥‥」

「君の事は必ず僕が守ってみせる。だけどやっぱり心配だから、外出は控えてくれないか?いつでも君の側にいられる訳じゃないから」

「ティエリー、お願いがあるの」

「なんだい?」

「ここに一緒に住んで下さらない?両親が戻ってくるまででいいから。そうすれば毎日貴方に会えますもの」

「そんな顔でお願いされて断れると思うかい?ただ、僕の理性が働かなくなったら、君には覚悟して貰わなければならないよ」

「‥‥覚悟なら‥とっくに出来ていますわ」


ティエリーは真っ赤になって私を抱きしめ「愛してる」と何度も囁きました。


お父様、お母様、意外と早く孫の顔が見られるかもしれませんわ‥‥

読んで頂いてありがとうございます。

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