表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
財産目当てと言われました  作者: 栗須まり
12/51

切ない夢

シュザンヌ様のお陰で、私の目の腫れも引いてきました。

気付けばとっくに夜で、シュザンヌ様の勧めもあって、泊めて頂く事にしましたわ。

エマにはその旨を連絡しました。

家主不在でも、我が家の使用人達はしっかりと家を守ってくれるでしょう。


入浴をして、シュザンヌ様の寝間着を借りました。

ちょっとしたファッションショーみたいになってますけど。

シュザンヌ様の着せ替え人形みたいになってますけど。

まあ、シュザンヌ様が楽しそうだからいいんですけどね。

こういうのって、女の子同士しか出来ませんもの。

シュザンヌ様も、近い将来結婚してしまいますから、今の内しか出来ませんわ。

ちょっと寂しい。


そんな風に盛り上がっていましたら、メイドさんが来客だとシュザンヌ様を呼びに来ました。

耳打ちでしたので、どなたかお名前は聞き取れませんでしたけど、こんな時間に来るなんて、よっぽどお急ぎの用件なのかしら?


シュザンヌ様も、顔色を変えて出て行かれました。

出て行かれる時、私に凛々しい笑顔を向けて

「しっかりおしおきをしてきますわ!眠くなったら、先に休んでいらしてね」

と仰っていましたが、なんの事でしょう?

それにしても、今日は色々あって疲れました。

シュザンヌ様のベッドの横に用意して貰った、簡易ベッドへ潜り込みます。

目を瞑るとすぐに眠気が訪れました。


「‥‥多分お休みになっていらっしゃるわ!本当に一目だけですわよ‥‥」

「‥‥感謝します‥‥」

ウトウトと浅い眠りの中で、誰かの話し声が聞こえます。

近くに人の気配を感じますが、眠くて目が開けられません。

私の頰に何かが触れると、懐かしく感じて、無意識にスリスリしました。

大きくて温かい誰かの手の感触。

この手はティエリーの手と同じ様に温かい。

もう、触れられる事もない‥‥

眠いのに涙が頰を伝わる感触がありました。

「‥‥苦しめてごめんね。‥‥僕の天使‥‥」

聞き覚えのある声が耳を掠めます。

唇らしき柔らかな感触が涙をなぞり、頰に移動して離れていきます。

待って!行かないで!

叫びたいのに、叫べません。

多分、私の願望が夢になって現れたのでしょうから‥‥


翌朝目覚めると、見慣れない風景で驚きました。

そうでしたわ!お泊まりをしたのを忘れてましたわ!

なんだか切ない夢を見ました。

シュザンヌ様はもう既に起きていて「おはよう!お寝坊さん!」と、笑っていました。

あらやだ!お昼近くではありませんか!

恥ずかしいですわ!


遅めの朝食を頂いて、食後は庭でお茶を楽しみました。

他愛の無い話をしておりましたが、急にシュザンヌ様が真剣な顔をして言いました。

「エリーゼ様、物事は表面だけ見てはダメよ。昨日の状況を鑑みるに、貴女は見落とした点がいくつかあるわ」

「‥‥見落とした点ですか?」

「ええ。まず、ヴィヴィアンヌ様がランドゥール様を追い掛けて来た点」

「‥‥あの方はティエリー様の腕に縋り、私を見て笑いましたわ!」

「あの女狐がやりそうな事ですわ」

えっ!?今シュザンヌ様女狐って言いました?

聞き間違いかしら?

「ほほほ。私、あの女狐の事は以前から大嫌いですの!」

あ、聞き間違いじゃなかったようですね。

女狐でした。

「あの高慢な女狐は、社交界でも嫌われてましてよ。特にランドゥール様へ執拗に迫っている姿など、ご婦人方から節操がないと大変に不評ですの。生憎とランドゥール様は全く相手にされておりませんけど。いくら侯爵家といえど、内情は火の車ですからね。なんとしてでも、ランドゥール家の財力を手に入れたいという気持ちなのでしょうけど」

あ、やっぱり噂通りポリニュー侯爵家は没落寸前なのですね。

ん?全く相手にされてないって、お二人はお付き合いされているんじゃないの?

「あの、シュザンヌ様、お二人はお付き合いされているんじゃ‥‥?」

「まあ!そんな勘違いされているのはエリーゼ様だけですわ!どう見てもあの女狐が一方的に言い寄っていますのに!学園時代からそうでしたわ!」

「でも、私見ましたわ。お二人で学園の中庭のベンチに座ってティエリー様は微笑まれ、ヴィヴィアンヌ様はティエリー様の手を握っていらしたの。私、あんなに穏やかなティエリー様の微笑みは、見た事ございませんわ。それに、その後お二人はベストカップルと噂が広がって‥‥」

「氷の微笑みですわね」

「氷の微笑み?」

「一見すると、とても穏やかに見えますけど、対峙した相手には、氷の様に冷たく感じますの。威嚇とでも申し上げましょうか?ティエリー様お得意の微笑みですわ。一部では有名ですのよ。あの方おモテになるでしょう?熱を上げて不用意に近付いたご婦人方は、皆様氷の様だったと仰られてましたわ」

シュザンヌ様は私と違って、社交界にお詳しいわ!

いつもしっかりなさってて、私、おんぶに抱っこですわね‥‥

「でも、噂が‥‥」

「あんなの、あの女狐が取り巻きを使って広めたに決まってますわ!いい事、エリーゼ様。くだらない噂や、あからさまな見せ付けに振り回されちゃダメですのよ!」

「‥‥はい」

「私はエリーゼ様が何も言わないなら、傍観者に徹しようと思っておりましたの。でも、エリーゼ様が苦しんでいる姿は見ていられませんわ。それに、肝心な事が何も伝わっていないじゃありませんか。エリーゼ様はご自分の気持ちを、伝えなくてはなりませんわ」

「私の気持ち‥‥?」

「ええ。エリーゼ様の本心ですわ。貴女はお優しいから、誰かが悲しんだり、苦しんだりするのはお嫌いになる。そのせいでご自身が苦しまれるのですわ。そういう貴女だから、私は大好きなのですが、あの女狐に至っては、貴女の優しさに気を良くして、付け上がっていますの。私、それだけは絶対に許せませんわ!」

「シュザンヌ様?」

「まあ、ほほほ。少々お口が過ぎましたわ。でもエリーゼ様、あの女狐に遠慮はいりませんわ。学園時代、貴女にした仕打ちを私は忘れてはおりませんの。貴女は黙って耐えてらしたけど、本来貴女の方が階級も家柄も全て上ですのよ。外見の美しさだって、貴女の足元にも及びませんのに、何を勘違いしているのでしょうあの女狐は!」

「‥‥私、あの方の様な華やかさは持っておりませんわ。それに、私に寄って来る殿方は、財産目当ての方ばかりです。ティエリー様にも、はっきり言われました。財産目当てだと」

「その財産目当てという意味は、本来の意味ではありませんのよ。貴女自身の価値と仰られたのでしょう?」

「ええ」

「本当、こじらせていますのね。あの方。それから、貴女はご存知ないでしょうけど、本来貴女は大変殿方からおモテでしたのよ」

「そんな訳ないですわ!」

「そんな訳ないと貴女に思わせる程の、圧力があったとだけ申しておきましょう。それから、ランドゥール様に、財産目当ての本当の意味をお聞きになって!」

「‥‥でも、私、もう会えませんわ。さよならしましたし‥‥」

「手紙という手もありますわよ。それに、エリーゼ様は本心を伝えないままお別れして、後悔しないと言い切れますの?」

「‥‥‥」

「お好きなんでしょう?ランドゥール様の事」

「‥‥はい。知ってらしたのね」

「大好きなエリーゼ様の事ですもの。隠しても分かりますわ。あの方がこじらせさえしなければ、こんなにややこしくならなかったというのに!どうしてくれましょう!」

「シュザンヌ様?」

「あら、またお口が過ぎましたわ。とにかく、早く手紙を書いてお互いに理解された方がよくてよ」

「‥ありがとう!シュザンヌ様、大好き!」

「私も大好きですわ。それと、私も狐退治を致しますので、まあ、見ていて下さいな」

シュザンヌ様はニッコリと微笑まれましたが、なんだか後ろに黒い物が‥‥

狐退治!?

読んで頂いてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ