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第六話 変態青年ウィル

 ジンが部屋から追い出された後のこと。


 デウス教の大司祭であるリンネルが、コフィの額に手を当てて唱える。


根源に宿りし(エンサナイメント) 天命の教示(デスティノパーラ)


 すると、一瞬リンネルの手が光る。

 ほお、とリンネルが声を漏らす。


「なるほど、貴方は本物の聖女で間違いありませんな。天命の調査をしただけで、莫大な魔力が感じられましたぞ!」


「は、はぁ」


 リンネルは若干興奮して言う。

 そばに居たロンウィも、リンネルの言葉に驚いている様子。

 だがコフィにはその凄さがよく分からず、若干戸惑い気味である。


 ロンウィが言う。


「では、大司祭様」


「そうだな。では、後は任せたぞ、ロンウィよ」


「はい」


 そう言ってリンネルは部屋を後にする。


 すると突然、コフィの眼の前の机の上に、どさりと書類が置かれた。

 それを置いたロンウィはニコリと微笑む。


「さあ、天命の確認も終わったことですし、書類の処理をしていきましょうか」


「ええ、これ、全部?」


 積み上げられた書類の量は、軽く三百枚を超えるだろう。

 若干引き気味のコフィに追い打ちをかけるかのように、ロンウィは笑みを深めた。


「これも神の思し召しです」


 神様関係ないじゃん、とはコフィの思いである。


「さあ、明日は勇者パーティの選抜大会で忙しくなります。さっさと終わらせましょう」


 うんざりしつつ、コフィは人生で初めてペンを握り、書き始めた。





 ウィルと一緒に街を歩いた俺は、適当な酒場に入って適当に飯を頼んだ。

 頼んで五分ほどで出てきたのは、チャーハン的な飯料理。どんぶり山盛り。

 まあまあ美味しいそれを食べながらウィルに話を振る。


「それで、勇者パーティに入るにはどうしたら良いんだ?」


 俺と同じように飯を食べていたウィルは、少し驚いた様子。


「知らないのかい?」


「孤児院の出でな。色々あって、ここには来たばかりなんだ」


「なるほどね。じゃあ、一から説明するよ」


「そうしてもらえると助かる」


 ウィルは飯を食べるのを一旦中断して話し始める。


「まず、勇者パーティに入る方法は二つあるんだけど、それはわかる?」


「一般枠と特別枠、みたいな感じだったか?」


「そう。さっきの聖女の子、コフィちゃんだっけ? 彼女みたいな特別な天命を持った人だけが優先して入れる枠が特別枠さ。これは僕たちには無理だね」


「たしかにな」


 まあ、俺は勇者だから特別枠で入れるはずなんだろうけど。

 コフィに魚でいて欲しいと言われた以上、それはできそうにないな。


 ウィルは説明を続ける。


「僕たちが入れる可能性があるのは一般枠だけ。けど、一般枠はそう簡単に入れないんだ」


「と言うと?」


「勇者パーティに入りたいって人が世界中から集まって来て、お互いに戦う。勇者パーティに入れる枠は少ないからね。それを巡って戦い合うのさ」


「トーナメントか」


「簡単に言うとそうなるね。結構かわいい子も集まって来るから最高さ」


「それはいいから続けろ」


「そうだね。それじゃあ、テストを受けて合格しないとその戦いにすら参加できないのは知ってたかい?」


「テスト? 知らないな。体力テストでもするのか」


「正解。重いものを持ち上げたり、できるだけ素早く走ったり、長距離を走り続けたり。冒険者ギルドの昇格試験と同じ感じと言えば分かるかい?」


「まあ、な」


 冒険者ギルドの昇格試験とやらは知らんけど、要するに体育の体力テストだよな。

 異世界にシャトルランとかあるのだろうか。


「それに合格すれば、勇者パーティに入るための戦いに出場できるね」


「なるほど。じゃあ俺は、テスト受けて、トーナメントで出てくるやつを全員ぶっとばせばいいんだな」


「そうなんだけど、それにはいくつか問題があるんだ」


「問題?」


「ああ。まず勇者パーティのテストは、冒険者ギルドの昇格試験よりも数段厳しい。それに合格した人たちともなれば相当の手練だ。実力が求められるよ。生半可な覚悟で挑むのはやめておいたほうが良い」


 ロンウィとまともにやり合えるウィルが言うんだ。本当にそうなのだろう。


 だが、俺も伊達に何度も転生していない。

 流石にトーナメントで負ける気はしないな。

 というか俺勇者だし。勇者がそのへんの雑魚に負けたらそれこそ問題だろう。


 すると、ウィルが少し不安げな表情で言う。


「あと、これは実力にはあんまり関係ないんだけど……」


「なんだ?」


「テストを受けてから合格判定が出るまで少し時間がかかるんだ。と言っても一週間ぐらいなんだけどね」


「で、問題ってのは?」


「……勇者パーティに入るための戦いは明日なんだよ」


「なんだと!?」


 テストの合格判定が出るまで、一週間。

 本番は、明日。


 全然間に合わねえじゃねえか!


「おいおいおいおい、それじゃあ俺は、一般枠にすら出場できないってことになるのか?」


 それはちょっと、残念すぎる。

 というかコフィに申し訳が立たない。


「いや、一応、出場する方法はあるけど」


「なんだ、教えろっ! 今すぐに!」


「いやあ、でもこれテスト合格するも難しいよ?」


「いいから! 教えるんだ!」


「わ、わかったよ。教えるから」


 多分無理だけど、と言うウィル。


「推薦、だよ」


「すい、せん? それってあれか? 誰か有名な人から推薦状みたいなのをもらってくるやつか?」


「そう。けど、もらえる人物は限られてくるし、たいてい推薦状をもらうのは、師匠から弟子にっていうパターンだけさ」


「なるほど」


「しかも、師匠にちゃんと力を認めてもらった上でね。僕も師匠から推薦状をもらいたかったけど、力を認めてもらえなかった。多分、一日二日でどうにかできるものじゃ――」


「待て」


「え?」


「ウィル、お前の師匠は力を認めた奴に推薦状をやるってことだよな」


「ま、まあ簡単に言えばそうなるね」


「よし、お前の師匠のところに案内しろ」


「なっ、さ、さすがに難しくないかい!?」


 うろたえるウィルに向かって、俺は薄く笑みを浮かべる。


「やってみなきゃわかんないだろ?」


 ウィルは驚いた表情をしていたが、数秒すると俺と同じように笑った。


「そうだね……女の子のパンツも、スカートをめくってみなきゃわからないしね」


「ちょっと何言ってるのかっとよく分からないが、そういうことだ」


「よし、分かったよ! 案内しよう!」


「おう! いざ、お前の師匠の元へ!」


 その後、ガツガツと飯を食べる。

 ウィルのおごりということで適当にお金を払てもらい、店を出る。


 するとウィルが言った。


「さてと、そろそろ日課のスカートめくりを……」


「いいから一直線に師匠の元へ向かうんだ」


 そうして俺たちはウィルの師匠の元へと向かうのだった。

副題なしにしました

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