第二十話 デモンVSグラトム
闘技場中央。
グラトムというヒーローに希望を見出した観客たちが見守る中、デモンとグラトムの激しい戦いが始まった。
グラトムの強烈な拳を片手で掴み止めるデモン。
グラトムは掴んできた腕を蹴り上げ、次いで体を大きくひねり二連蹴り。狙いは頭。
しかし二回とも首を捻り回避される。
反撃とばかりに放たれる闇魔法の矢、数十本。
全てスレスレで回避しながら距離を詰め、グラトムは強く踏み込んで鉄拳を放つ。
それをデモンは再度片手で掴むが、スパン、と乾いた音が響き、若干のけぞる。想定外の威力に崩れるバランス。左足に重心が偏る。
グラトムの足払いが放たれるが、直後に張られた闇の障壁で威力を殺される。
近接戦で不利を悟ったデモンはグラトムから距離を取り、闇魔法の準備に入る。
瞬時に距離を詰めるグラトム。膝蹴りを入れるが、闘気と闇の障壁で耐えられ殴られる。
グラトムはそれをしっかりガード。次いで飛んでくるパンチをしゃがんで回避し、床を這うような低い姿勢からかかとを押し上げるように蹴り上げ。
デモンの体が若干浮く。
強く踏み込んで、グラトムは再度鉄拳を打ち込む。
デモンの巨体がいとも簡単に吹き飛んだ。
闘技場の壁に激突。砂埃が上がりデモンの姿がその中に消える。
グラトムは注意深くデモンへと近づいていく。
突然、目を見張るような速度で砂埃から闇魔法の槍が飛来。
間一髪回避するグラトム。
砂埃が晴れると、そこには数百の槍を浮かべて笑みを浮かべるデモンの姿が。
ブオン、と殺意のこもった槍が休む間もなく飛んでくる。
グラトムはスッと自然体で立ち、ゆらりゆらりと揺れるようにして次々と回避。
その後方では衝突した槍によって闘技場の壁が破壊されていく。
回避中のグラトムの眼前に、いきなりデモンが出現。拳を構えている。
すかさず両腕でガードしようとするグラトムは、ぎょっと目を見開いて瞬時に横へ移動。
デモンの手のひらが開かれる。
次の瞬間、そこから数十本の闇の槍がショットガンの如く発射。グラトムが先程まで立っていた場所に五メートルほどの深さの穴が開く。
警戒したグラトムは、一旦距離を取った。
「ナルホド、見切ルカ」
デモンは感心するように言った。
「人間ニシテハヤルナ。痛カッタゾ、少シダガ」
グラトムは不機嫌を顔に出す。
「黙れ魔族。すぐ殺してやるからそこ動くな」
素のポテンシャルや魔法を使った、武術もクソも無い戦い方をするデモン。
そんな相手を押しきれずにいる状況に、グラトムは歯ぎしりするような心持ちであった。
「面白イコトヲ言ウ。我ガ先ニ死ヌトデモ?」
すると、デモンの後方から槍の大群が飛来。
グラトムは全て回避しながらデモンへと迫り、上段回し蹴り。
しゃがんで槍を回避、続けて一瞬で右左右左と四発の拳を叩き込む。
足元に来る槍を跳んで避けそのまま飛び蹴り。片足ずつの二段蹴りを放ち一旦距離を取る。
が、攻撃を加えられ動けないはずのデモンが、いつの間にかグラトムの前に。笑いながら腕を大きく振りかぶっている。
グラトムは一瞬でガードするが、ほぼ無意味だった。
闇の魔法を纏ったその拳の破壊力は強力無比。
闘気も使ったグラトムのガードを難なく弾き飛ばし、衝撃波を発生させながら振り抜かれる。
グラトムが槍と同じような速さで壁に激突。
飛来する槍によって既に削られていた壁が、ついに貫通。闘技場の壁に大きな穴を開けながら、意識を失ったグラトムはその外へと吹き飛んでいった。
「コンナモノカ」
つまらなさそうな表情で呟くデモン。
「サテ、次ハ誰ガ相手ダ?」
この都市で一番と言われているグラトムが敗北した。
それは、観客にとっては圧倒的な絶望。もはや、助かることはできないと言われているようなものである。
「誰モ来ナイカ……ナラバ一人ズツ殺ストスルカ――」
「待て!」
誰もが絶望に打ちひしがれた時、その男は姿を現した。
おとぎ話に出てくるような精悍な顔。腰には一本の黄金の剣。
「俺はウィオル・クラウン・ライオネアス! 今代の勇者だ!」
新たな希望が、姿を現したのである。




