第十五話 選抜戦、二日目
選抜戦、二日目。
ウィルと共に闘技場へと足を運び、ウィルはAブロック代表、俺はBブロック代表として最終トーナメントへ出場することになった。
勇者パーティに入れる枠は二つ。
Aブロック対Bブロック、Cブロック対Dブロックの二試合を行い、勝利した人物が選ばれる。
選抜戦最終日とあってか、闘技場は昨日にも増して混み合っていた。
ウィルにサインを求める人だかりが押し寄せてくる中、俺達はそれを避けまくって、なんとか控え室へと入った。
控え室の中は、選抜戦のスタッフ以外誰もいなかった。
「昨日はあんなに人がいたのにな」
「そうだね、少し寂しい感じがするよ」
二人で話していると、スタッフが近づいてきて、そろそろ始まるので位置についてください、と言ってくる。
分かりました、とウィルが受け答えし、俺の方に向き直って言う。
「じゃあ、行ってくるよ」
「おう」
「……お互い、頑張ろう」
「そうだな」
「……戦うなら女の子が良かったな」
「おい、本音漏れてるぞ」
「おっと、すまないね」
変態発言を残して、ウィルはスタッフに案内されて部屋を出ていった。
変わらないな、あいつは。
少しすると、会場内にアナウンスが流れる。
『これより、選抜戦最終トーナメント、第一試合を開始します。選手は入場してください』
近くにいたスタッフに案内されて、俺は闘技場へと出ていく。
すると、大量の観客達が目に入った。
「うわぁ、うじゃうじゃいるな」
こんな都市のどこに、こんな人数がいるんだと思うほど。
五桁以上いるんじゃないか?
しかも全員、熱狂してテンション高めだ。
ワーワーと騒ぐ声が耳につく。
うるさいなあと思いながら闘技場の中心に行くと、反対側からウィルが歩いてきた。
ニコニコ笑顔で来るかと思ったけれど、ウィルは既に集中しているようで、かなり真剣な表情。
ここで実況席が喋りだす。
『選抜戦最終決戦! 栄えある第一試合の選手紹介をするぜ!』
観客に負けないほどハイテンションだ。
『Aブロック代表、ウィル! 歳は十五! 出身はなんとパース! ホームグラウンドだ! 得意戦術は近接格闘。気になる天命は……舞踏格闘家っ! これは期待できるぞ!』
天命が発表された瞬間、わっと盛り上がる会場。
珍しい天命というのがいいのだろう。ウィルを応援する声も沢山聞こえてくる。
『本人の意気込みは、「絶対に勝って、勇者と共に旅をする!」だそうだ! 顔だけじゃなく心もイケメンだな! 俺も応援したくなっちまうぜ!』
あいつの顔がイケメンなのは認めるが、心は変態だぞ。
『続いてBブロック代表、ジン! 歳は同じく十五! 出身はどっかの孤児院だそうだ! 適当だな! 得意戦術は……魔法混合近接格闘? 魔法も使って戦うのか! こりゃ面白そうだ! そして天命が…………魚? 魚って、これ天命なのか?』
すると、会場がざわついた。
魚という天命を聞いてもしっくりこないらしい。
ぶっちゃけ俺もしっくりきてはいないが、魚と言い張る他ないのだ。
さもなくば、聖女様に三枚に下ろされてしまう。怖い怖い。
――なんだその天命
――ふざけてんじゃねえぞ!
――ウィル様応援してますー!
――魚なんてやっつけちゃえー!
観客席からいくつも声が届いてくる。
ウィル大人気だ。
『天命はまあいいか! 本人の意気込みは「まあ頑張る」だそうだ! あんまやる気がなさそうだな! 試合は真面目にやってくれよ!』
実況の声が響くと共に、観客からのブーイングが増える。
こんな中でウィルを倒したらどうなるんだろ、と思っている内に、闘技場の中心へとたどり着いた。
正面で向かい合うウィルに話しかける。
「ウィル、大人気だな。俺負けようか?」
するとウィルは、いつになく真剣な表情で言った。
「関係ない。関係ないよ。人気があろうと、天命がなんだろうと、どう意気込んでいようと、この試合には全く関係ない。僕は勝ちに行くよ。全力で、殺す気でね」
マジみたいだ。
目がギラギラと光っている。
その目には、舞踏格闘家という天命で悩んでいた選抜戦前の頃の迷いは、無い。
透き通っている。
恐怖も緊張も見えない。
ただ、圧倒的な気迫と集中だけがそこにある。
(……闘気を纏ってる。たった二日で、心が成長したな)
勇者は途方もないポテンシャルを秘めているが、ウィルはもしかすると、それに劣らないほどのものを持っているのかもしれない。
「それじゃあ、俺もちゃんと勝ちに行くからな」
「いや、それじゃだめだ。君も殺す気で来て」
「え?」
「じゃないと、満足、できそうにない」
「ちょっと、お前大丈夫か? これ試合だぞ?」
「僕は、全力のジンを見てみたいんだ」
いやいや、流石にここで全力は。
と思った直後、実況がでかい声で言った。
『それじゃあ第一試合――はじめえええっ!』
すぐさま、ウィルが動き出した。




