プロローグ
「ちわー! 入部したいんですけど!」
Web小説研究会という紙が張り付けられたドアが開き、蒼井赤音の声が部屋の中に響く。その部屋にはデスクトップPCや単行本が置かれた机が所狭しと並んでいる。
奥にはメガネをかけた男性がパイプ椅子に座り、PCを操作していた。彼は蒼井の声に画面から目を上げる。
「入部希望者? どうしてまたうちみたいなマイナーな会に?」
全員で3人というWeb小説研究会の会長である野崎望は当然の疑問を投げかける。宣伝もしていなかったので、不思議に思っている。
「チラシを見てきたんですっ!」
「チラシ?」
蒼井はそう言って一枚のチラシを見せる。
そのチラシには『集まれ! 底辺作家! キミも小説家になろうで小説家になろう! コツさえ分かれば貴方も人気作家! 気になる方はWeb小説研究会へ☆』という文句とポップなイラストが書かれていた。
「この前、Web小説研究会の人から渡されて……」
「はぁ、あいつ……また、変な物を」
野崎はチラシを見てため息をつく。
「私、小説家になりたくて投稿してるんですけど。ポイントとかあんまりもらえなくて。これを見て希望が出てきました! コツがあるんですか?」
蒼井が目を輝かせながら聞いてくる。
「まぁ、あるっちゃあるが……」
「先輩! 私に小説家になろうのコツを教えてください」
蒼井の勢いに、
「はぁ、そんなことより小説読みたいんだがな……まぁ、教えてもいいが、最初は基礎からだな。コツを教えるにしても全体の話をしないといけない」
「望むところです!」
そんなこんなで、野崎望と蒼井赤音の小説家になろうの講義が始まるのです。