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2.それは本当に友達か? 管仲伝02

 これは例え話だ。


 もし、あなたが貧乏で、母子家庭であったとする。


 いつも一緒につるんでいる友達のほうは、そこそこの家の出身で、あなたのことを差別したり、悪口を言ったりすることはない。どちらかというと、親切にしてくれる。例え、あなたが友達に嘘をついたとしても。


 あなたは、その友達と二人で商売をする。ちょっとばかり、儲けもでた。友達は自分よりも金を持っている。自分は貧乏だ。二人ではじめた商売だけれど、自分のほうが分け前を多く取る。でも、友達は文句も言わない。


 その友達の為に、何度か知恵を貸してやった。相手のために、良かれと思って意見した。ところが、いずれも裏目に出てしまい、友達は困ったことになってしまった。だが、やはり友達は何も言わなかった。


 自分は仕事の上司に何度も左遷された。


 勝負時に、何度も負けた。生き恥をさらした。


 それでも友達は、自分を一度も非難することはなかった。



 例え話として、わかりやすく書いてみたが、これが管仲伝の最初に書かれている管鮑の交わりの概要だ。


 さて、ここであなたに問おう。


 果たしてそれは、友達といえるのか、と。



 物事を見る時、相手の立場に立って考えなさい、と人はよく言う。


 なので今度は、逆の立場になって例えてみよう。



 あなたは、友人に金を貸してくれと言われた。あなたは小金を持っているが、友人は貧乏である。あなたは気の毒に思い、友人に金を貸してあげた。


 ところが、友人はちっとも貸した金を返してくれない。誘われて、一緒に商売もした。少しばかり儲けることもできた。ところが友人は嘘をつき、儲けた金のほとんどを独り占めし、自分には少ししか渡してくれなかった。



 さて、そこであなたは何を思うだろうか?


 金は返して欲しい。そう思うのは当然だ。


 でも、相手は貧乏だ。しかも、母子家庭。暮らしも厳しそうだ。大変なのはわかる。


 一度に返すのが無理なら、少しずつでかまわない。借りたものを返すのは当たり前のことだ。もし、返せないというのなら、それなりの誠意を見せてほしい。お金がないというのなら、それも仕方がない。気持ちだけでも見せてもらいたい。そう思わないか?


 人間誰しも、自分の生まれや育ちは選べない。だからといって、環境を理由に、相手を騙したり嘘をついたりしていいわけではない。


 自分の置かれている立場を、何か(誰か)のせいにするのは、とても簡単だ。でも、自分のやったことの言い訳に使うのは、どうなのだろう?


 しかも、相手は何度も同じようなことをするやつ。やったことを悪いことだと自覚していない、あるいは、わかっていてもやめられないのか?それとも、こちらをなめている、あるいは、なんでも聞いてくれる人だと思っているのか?


 あなたなら、どう対処する?


  友達付き合いをやめる、怒って訴える。本当にその友人と対等でありたいと思うなら、相手のことを大事に思うのなら、怒って説教するかもしれない。そのような不正行為、他人の信用を失うようなことはやめろと言わないか?


 簡単に金を貸してくれて、それを返さなくても何も言わない友人。何か起業するとして、それに簡単に出資してくれて、あまつさえ事業に失敗してもそれを咎めない。それどころか、それなりに収益をあげて、利益を殆ど独り占めしたとしても、文句一つ言わない相手。


 あなたはそれを、友人と思うか?


 それは、とても都合のいい友人だ。別名、それをカモともいう。


 ところがここに、そういう友人関係でありながら生涯付き合いを続け、激賞された者がいる。


 なぜ誰もそこに違和感を感じないのか、私は不思議でならない。


 己の貧乏や母子家庭を当然のようにもっともらしく言い訳に使う男、管仲。


 そんな彼を表舞台の第一線に立たせ、何度も騙されても文句一つ言わず、友達やめなかった鮑叔。


 私は、この男に底の知れぬ不気味さを覚える。なんというか、ぬるりとしたウナギのような気味悪い感触だ。



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