人魚姫の宝石箱。
「なあ、いつになったら昼飯にするんだ?」
亮介くんは不機嫌そうに机に腰かけていた。
すっかり忘れていた。緊張やら興奮やらで昼食の存在が頭から抜け落ちていたらしい。
「亮介、何か買ってきてよ。その間に紅葉ちゃんをお着替えさせるから。紅葉ちゃん、食べたいものある?」
「――いらないです」
「もう、遠慮しなくていいってばー。何食べたい?」
遠慮しているわけでも、お腹が空いていないわけでもない。その必要がないから。
今日この日のために、コンテストの他にも準備していたことがあるから。
「お弁当、作ってきたのでいらないです――四人分ですけれど」
蘭さんは口に手を当てて仰々しく驚いた。
亮介くんはぽかんと口を開けて呟いた。
「模擬店あるのにわざわざ面倒なことしなくて――も゛っ!?」
蘭さんの拳が飛んだ。
亮介くんには悪いけれど、自業自得。
「亮介、おいしい? どう、おいしい? 紅葉ちゃん手作りのお弁当、おいしい?」
「はい、おいしいです。すごいうまいです。模擬店なんて必要ないです」
こんなやり取りが既に十回も繰り返されている。
暴走した蘭さんを止めるのが亮介くんの役目らしいけれど、力関係ではお姉さんである蘭さんの方が上で違いないのか。
蘭さんに頭の上がらない亮介くんが、新鮮な感じがして、かわいい。
それと、蘭さんの機嫌を損なうと後が怖いことも知った。
「「「ごちそうさまでした」」」
一人分多めに作ってしまったけれど、蘭さんも亮介くんもおいしそうに食べてくれて、完食だった。空っぽのお弁当箱を見るだけで、作ってよかったと思う。
「じゃあ、俺、展示回ってくるわ。終わったら観客席で待ってるから」
亮介くんは立ち上がって出口に向かう。
その背中に蘭さんの声が投げられる。
「紅葉ちゃんの変身、見なくていいの?」
彼は振り返って言った。
「あっちで楽しみにしとくからいい。あと、弁当の味付け、結構好みだった。おいしかったよ、紅葉」
言葉の力はすごい。
心のこもった言葉には、他の人の心をも動かす力を持っている。たとえそれが、悪意であったとしても。
亮介くんのおいしかったの一言で、私の心も満たされる。喜んでくれたのだと、お腹を満たせてあげられたのだと知れて、嬉しい。
また作ってあげたいと思う。
食べてもらいたいと願う。
次は、私が、心を込めた言葉を贈る番だ。
こんにちは、白木 一です。
最近まともな後書きをかけていないなと思いながらも、今日もまともに書けません。
次話がコンテスト編最終話です。
次章からテイストガラリと変わります。
そして、私の生活も変わります。
来週はヘルウィークといっても過言ではないでしょう。
次話は投稿できると思いますが、次章の投稿には時間をいただくことになるかもしれません……。
今月は全然更新できておりませんが、本当に申し訳ないです。
とりあえずエタらない宣言をしておきますな脳内お花畑、恋愛脳の痛い気100%の私の作品をどうぞよろしくお願いいたします。




