第三話
夢を、見ていた。
光に憧れ、追い求めても、光が私を拒絶する。どんなに憧れても、変わるなんてできなくて、私は輝く世界から目を背けてしまうのだ。
二度と憧れてしまわないように、まずは、仮面で自分を隠した。世界が騒いだのはほんの一瞬で、単なる変化として認識されたようだった。仮面自体は珍しいことでもなくて、当たり前のようにつけている住人が一定数いるのだから仕方ない。
私の存在を壊すために、今度は仮面を赤く染めた。でも、二度目の世界のざわめきも、ほんの一瞬で静まった。まとわりつくような喧騒が、次第に遠くへ離れていって、やっぱり私は独りになった。
何をしても変わらない。だから私はもういいやと、見放されたから諦めて、私の方から見限った。
そうして、世界から私の存在が消えた。何もない世界は真っ暗で、慣れないうちは歩くことさえ不安で堪らなかった。
私がいるのは、一筋の光さえ届かない真っ暗な世界。見えない。触れられない。唯一感じることができるのは聴覚だけ。けれど、何もない世界にこだまする無秩序な声は、もはや雑音にしか聞こえなくなっていた。
独りぼっちの世界なら、私を傷つけるものなんてどこにもない。
やっと私は平和な世界で生きていける。
──はずだった。
真っ暗な世界は、狭くて、息苦しくて、とても寂しかった。気付いたら、世界の壁はどんどん迫ってきて、私は押しつぶされる寸前だった。
身動きすらとれず、私は私を諦めることにした。真っ暗な世界とともに消えることを受け入れた。何もない世界に独りでいると、生きているのか死んでいるのか、その区別さえつかないから。
だからいっそ、消えてしまおう。
突然、仮面が剥がされる。
眩しさに目をつぶっても、光が容赦なく瞼をすり抜けて、私の目に突き刺さる。痛み、ではなく、感じられたのは温かさ。ずっと忘れていた感覚。
いつ振りかの光に戸惑い、恐れながら、私はゆっくりと瞼を持ち上げた。
目の前に、三十センチにも満たない距離に、松原くんの顔があった。
「おはよ、藍澤」
こんにちは、白木 一です。
急に短くなりましたね……。
まあ、次はこれより長くなりますけれど。
自分の中でちょうどいい区切りとなると、週刊連載の漫画を意識してしまってこんな感じになってしまいます。
明日からの一週間にかけて、かなり急展開を迎えます。とだけ、お伝えいたします。
下手なことは言わない……。
次話も、よろしくお願いいたします。