カゾク想いの魔女。
蘭さんの略歴をあげてみたものの、住んでいる世界が違うとしか言いようがない。
まさに夢のような話なのだ。
蘭さんと出逢えたことも、蒼浦高校にいることも、同じ空気を吸っているということも、何もかも全てが奇跡。
それどころか、スーパースターが私の助っ人?
ありえない。
都会外れの街にある高校の、文化祭の行事の一つのためだけに、蘭さんがわざわざいらっしゃったというの?
何とも恐れ多すぎて反応に困ってしまう。
喜ぶべきか、泣くべきか、むしろ帰っていただいてお仕事をしてもらわないと。
そもそもスケジュールは大丈夫なのだろうか。私の助っ人を引き受けてしまったばかりに、大勢の人に迷惑がかかってしまっては……。
「なあ、姉ちゃん。もしかして、伝えてなかったりとかしてないよな?」
「うん、紅葉ちゃんが驚くと思って」
「いや、そこは伝えとくべきだろ……。紅葉が姉ちゃんのファンだって知ってるくせに」
「だから、驚くと思って」
「逆効果だよ! ――仕方ないし、時間もないし。紅葉、何か食べたいものあるか? 模擬店で買っくるけど」
身体が揺さぶられる。
そうだ、悩んでいる場合じゃない。
「蘭さん、お仕事は、お仕事は大丈夫なんですか?」
「お仕事? あるよ?」
蘭さんは拍子抜けするほどあっさり答えた。
それならば、こんなところで時間をムダにしてはいけない。私一人と、蘭さんを待つ多くの人たち。秤にかけるまでもなく、蘭さんは蘭さんにしかできないことをするべきなのだ。
お引き取り願おうと口を開くも、蘭さんのほうが速かった。
「紅葉ちゃんたちのコンテストが終わったら、トークショーするの。私」
先にも述べたけれど、蘭さんの人気は世界にまで轟いている。
その人気が高じてしまい、蘭さんの参加するイベントのチケットは予約でさえ即完売。当日券にいたっては、入手できる確率が宝くじの一等を当てるよりも著しく低い、とまで言われている。
そんな蘭さんの、生の松之葉蘭さんのイベントに、参加できる日が来るだなんて……。
しかも、それが、高校の文化祭のステージで行われるのだ。嘘だとしか思えないほどの異常事態が、蒼浦高校で発生する。
ふと疑問が浮かぶ。
どうして、わざわざ蒼浦高校の文化祭に、蘭さんがゲストとして参加できるのだろう。いくら松之葉蘭の人気をもってしても、たとえ弟の通う高校だとしても、腑に落ちない。
まさか私のためだけに、なんて勘違いはしないけれど、気にはなる。
「蒼浦は私の母校でもあるからね。校長先生にはお仕事の都合で迷惑をたくさんかけたから、その恩返しの意味もあるんだよ。だから、これは私のボランティア」
遠慮がちに尋ねると、これまた簡単に答えてくれた。
やっぱり一番は紅葉ちゃんのためだけどと、蘭さんは私の頭に手の平をのせた。
髪をすくような優しい手付きが心地いい。
心が洗われるというのだろうか、気分が安らいでいく。もしも私にお姉さんがいたならば、蘭さんみたいな人が――いや、蘭さんがいいと思った。
ケンカはするかもしれないけれど、頼りになってすがれる存在。
そんなお姉さんがいれば、私は仮面を被ることもないのだろう。
「困ったときは、辛くなったら、いつでも私に助けを求めてもいいの。本当のおねいちゃんだと思ってもいい。助けてあげる、助けてくれる、助け合う、それが本当の友達ってやつでしょう?」
「――はい」
ああ、蘭さんはやっぱり憧れの人だ。いつでも私に力をくれる。
「はい、しんみりは終わり! 今は友達よりもイモウトが欲しいしね」
冗談ともつかないその言葉に、彼女の笑顔に、つられて笑う。
蘭さんとお話しする時間は楽しい。失いたくない。
亮介くんのそばにいるためにも、この時間を守るためにも、私は強くならなければダメなんだ。
こんにちは、白木 一です。
ストックを削るばかりの毎日が続いております。
仮面ライダークロノスになりたいです。
誰かに護ってもらえる生活もいいなぁと妄想しながら、これからアルソックに守られてきます。
何だこの後書きは……。
これからも白木 一の作品を、よろしくお願いいたします。




