魔女のお仕事。
「すごいよ! 完璧だった! 紅葉ちゃんは舞台度胸があるみたいだねっ。今までで一番のできだった!」
「――っ!?」
十二時四十五分、ある空き教室にいた私は、知りあいのお姉さんに襲われていたのだった……。
「姉ちゃん……、そろそろ紅葉放してやれよ」
「えー? ひょっとして妬いてるの?」
「ちっ、違うわっ! 紅葉が苦しそうにしてるだろっ!」
「きゃっ、ごめんね……紅葉ちゃん。生きてる?」
本当に死ぬかと思った……。
ドアがノックされて、開けたら、蘭さんに押し倒された。一連の流れを終えるのにわずか三秒。そこから抱き締められることおよそ三十秒。
蘭さんが離れても、まだ蘭さんに抱き締められているみたいだ。鼻の奥に残る蘭さんの匂い。甘酸っぱい柑橘系の香り。
死んでも、いい。
「勝手に弟の彼女を殺すなよっ! てか、何で紅葉は幸せそうな顔してるんだよ!?」
「亮介くん、うるさい」
ハグの余韻にひたっているの。邪魔しないで。
「何で俺が怒られたんだ……」
「残念ね、亮介。おねいちゃんの方が魅力があるってことよ。ねぇ、紅葉ちゃん? いっそ、おねいちゃんとお付き合いしちゃいましょ?」
首に回される蘭さんの腕。再び匂いが強くなる。
亮介くんと比べると柔らかくて、スベスベで、もちもちで。同じ女性だとは思えない。神様に愛されているのではないかと想像してしまうほど、次元が違う。
幸せすぎて思考が停止してしまいそうだ……。
蘭さんとお付き合い……恋人……いいかもしれない……。
「姉ちゃん、いい加減にしろっ! 紅葉は、俺の、彼女だ!!」
教室が水をうったように静まりかえった。
一拍遅れて、亮介くんの顔が赤くなる。私の身体も熱くなる。
蘭さんの匂いが離れ、背中を押された。
「そうだよねー、紅葉ちゃんは亮介くんの彼女だもんねー。はい、紅葉ちゃん、未来の旦那様がお待ちですよー」
だっ……。
私は、まだ高校生で、けっ結婚なんて、考えてないっ。早いし、想像できないし、ましてや亮介くんが……私の……。
「おっ、おい、紅葉!? 目の焦点が合ってないぞ!? てか、姉ちゃん。いや、松之葉さん、出番だ!」
「はいっ――ん? 亮介、何してるの?」
「それはこっちのセリフだ。今日ここに来た理由、忘れてないだろうな?」
「あー、そうだったね。じゃあ、紅葉ちゃん。着替えましょうか」
はっ! もう十三時だ。まだお昼ご飯も食べていない。
それに――。
「あの、助っ人の方がまだいらっしゃっていないみたいなんですけれど、大丈夫ですか?」
蘭さんも亮介くんもきょとんとしている。
どういうことだろう。意味が通じていない? いや、蘭さんが電話で仰っていたことなのだから、伝わっていないはずがない。少なくとも蘭さんが知らないなんておかしい。
もしかして、逆? 来られないという連絡が、私に伝わっていなかったのだろうか。
それもありえない。ここ数週間前からメールチェックと着信履歴の確認は逐一行っている。一日に最低でも十二回は。だから、蘭さんと亮介くんからの連絡を見逃す確率はゼロ。
なら、どうして二人は不思議そうにしているのだろう。
そもそも、助っ人が来るという話自体が私の勘違い?
まさか、そんなはずは……。
「ひょっとして、紅葉、聞いてないのか?」
肩をつつかれたと思ったら、亮介くんが私を指差して、その指を蘭さんに向けた。
「今日一日、紅葉の助っ人をする松之葉蘭だ。そういうわけだから、よろしく。とりあえず飯にするか」
蘭さんはにこにこしていた。
こんにちは、そして、お久しぶりです、白木 一です。
本日から投稿再開します、よろしくお願いいたします。
と、マジメな挨拶をしておりますが、本編は少々……。
恋愛妄想暴走列車な作者についてきていただきたいです……。
本当に、よろしくお願いいたします
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