真打ち参上。
家に帰ると母さんがいたけれど、私は無視して二階に上がった。こういうとき、母さんは何も言わない。私から口を開くのをただ待つだけ。
いい年して恋バナ好きの少女趣味で、でもそんな大人なところもちゃんと持っている母さんが、私は好きだ。
来るはずはないと思いながら、もし来たらという小さな期待から、私はベッドに飛び込むことを我慢した。しかし、ベッドに腰かけてぼうっとしているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。
インターホンが鳴った。
まぶたを上げると見慣れた天井が映る。傍らの目覚ましの長針は、帰ってきた時刻から一センチしか進んでいなかった。意識を一階に集中し、誰が訪ねてきたのかをうかがう。
玄関の扉が開き――、何か言葉を交わしている――。
『ぎゃぁ〜〜〜〜!』
母さんが家中に響き渡る大声で叫んだ。悲鳴というよりは、おそらく歓声に近い。いや、うん……絶叫だった。
階段を上る足音――。
私は起き上がると居住まいを正し、来客に備えた。
ドアノブが揺れて扉が開く。
私は部屋に入ってきた人物の顔を見て――、
「キャァ〜〜〜〜!」
絶叫した。
「話は亮介から聞いた。後のことは、おねいちゃんに任せなさいっ」
部屋の入り口に仁王立ちで、華やかな服装とは不釣り合いの黒いキャップを被った蘭さんが、開口一番言い放った。
「紅葉、説明なさいっ! どうして家に蘭ちゃんが来たのよっ!」
蘭さんが家を出てからわずか数秒。母さんが叫びながら部屋に飛び込んできた。
説明しろと言われても、私も事情を飲み込めていない。撮影の合間を抜け出してきたらしく、あっという間に帰っていったのだ。
蘭さんは私に勇気を出せと、応援するからと、ある『作戦』を告げた。
それは言葉通りに、私の勇気が、私自身が試される、夢物語な話だった。
けれど、たとえ夢なのだとしても、私は蘭さんの提案に乗るほかなかった。
彼女の、楓の呪いに打ち勝つには、私が強くならないといけない。変わる勇気を持たなくてはならない。こんなところで臆していては、亮介くんと並べない。一生をかけても亮介くんとは釣り合えないまま。
努力せずに得た結果は『本物』じゃない。
私の好きな亮介くんは、自分から変わった。
動機は不純かもしれないけれど、好きな人と釣り合うために、亮介くんの隣にいられるように、私も変わろう。
『勇気さえあれば、誰でも変われる』
こんにちは、白木 一です。
夕方頃に、もう一作品、更新するかもしれません。




