悲恋な幕引き。
深い考えなどなかったのだろう。私と楓が同級生だったから話題に出した、ただそれだけだと思う。
しかし、沈黙を貫いていた彼女は、その質問をずっと待っていたとでも言うように口角を上げ、口を開いた。
「紅葉とは友達だったけどぉ、もう愛想はないかな。今は紅葉がどう壊れていくのかしか興味がないの。いっつも強がってぇ、あのときも壊れたかなと思っても元通りだしぃ」
毒を隠した甘さが耳に流れ込む。止まらない。止められない。
「昔から、人の好きなのを盗むのが得意だったもんねぇ。そこの松原くんが誰と付き合ってるかとかどうでもいいんだけどぉ、マスクを外して一緒に歩いてたってことは、松原くんは紅葉の彼氏なんだね? 手を繋いで仲良さそうだったのに……また誰かから盗ってたんだぁ。ずるいなぁ、紅葉はかわいくて」
やっぱり、と誰かがこぼした。三人ともがそう言ったのかもしれない。私にはそれどころではなかった。
目の前が真っ暗になった。誰にも見つからないように、気配も弱い自分も必死で隠してきたのに、また彼女のせいで台なしだ。亮介くんの心遣いさえ無駄になってしまった。
もう終わりだ。亮介くんがそばにいるとわかっているけれど、心強いと感じられても所詮私は独りぼっちで、クラスの雰囲気は彼女たちに支配されている。無言の圧力が、私を否定しているのだと主張する。
勝てるはずがない。
諦めるしかないのだ。
好きなのに、言えていないのに、諦めるしか……。
不意に誰かの手が伸び、意識が引きずり戻された。
まだ終わっていない。彼女に壊される結末を迎えるのならば、いっそ私の手で幕を下ろそう。私は私のできることをしよう。
亮介くんに迷惑はかけられない。
私が好きでいられたら、それで、それだけでいい。
私は立ち上がり、お弁当を手早く鞄へ仕舞う。鞄の持ち手を強く握りしめながら教室を逃げ出した。
楓から逃げるために、そして、亮介くんから逃げるように、私は二度目の早退をした。
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