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モミジ、色づく。  作者: 白木 一
第四章 モミジ狩り。
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鬼退治。

 亮介くんにつかまれたミカの手が、私からそっと離される。


「我慢しようと思ったけど、やっぱ無理。あんな話BGMにしてると、せっかくの昼飯が不味くなる。そもそもさ、お前のこと知らないんだけど。帰ってくれなくなったって、あれ、どう考えてもストーカーだろ。毎回まくの大変だったぞ」


 亮介くんの目は笑っていなかった。

 彼の本気に気付いたミカがおずおずと、


「えっと……、手、放してくれない?」


 亮介くんは無言で手を開いた。

 怒る彼を前にしても、亮介くんに触れられて嬉しかったのだろう、ミカは赤くなってうつむいていた。代わりに眼鏡の人が亮介くんに牙を剥いた。


「私たち、藍澤さんと松原くんが付き合ってるのかを訊いただけよ? ミカがマスクを取ろうとしたのだって、話をするマナーに見えなかったから、教えてあげようとしただけで――。それに、どうして松原くんが藍澤さんをかばうの? 彼女だから?」


 楓はずっと、笑顔のままで黙っている。


「も、藍澤が彼女かそうじゃないか、お前らにどんな関係があるんだ? 他人の噂話がそんなに楽しいのか? 噂されるやつの気持ちになったことないだろ。お前らが想像できないほどに辛いんだぞ、本人は」


「関係あるわ!」


 ミカがヒステリックに叫んだ。だってだってと、言い訳をする子どもみたいに続ける。


「私は松原くんが好きなの。松原くんの彼女に、恋人になりたいのよ」


 突然のミカの告白に教室中がざわめいた。好奇に包まれた空気が、亮介くんをはやすものとミカを励ますものの二つにわかれる。

 私はというと、嫉妬していた。告白された亮介くんにではない。それもないわけではないけれど、ミカの強さに嫉妬した。

 成り行きで亮介くんの彼女になれて、一緒に登下校して、何度かデートもした。私は亮介くんが好きで、でも、好きをちゃんと伝えられていない。言おうとしても、その度に彼女の笑顔がちらついて立ち止まってしまう。

 届けられない想いがくすぶって、いつも心がもやもやしている。

 大勢の人の前で、堂々と告白したミカの強さが羨ましかった。


「ごめん。無理。お前のこと、絶対に好きにはならない。簡単に人を傷付けられるやつは嫌いだし、それに、お前は俺の外側しか見ていないだろうしさ」


 亮介くんはあっさり振った。

 表情に出さず、心の中でほっとする私。


「そこの縁木ゆかりぎさんが広めているように、付き合っている人がいることは否定しない。でも、彼女は俺の内面をちゃんと見てくれている。お前たちと違って、俺の苦しいところも理解しようとしてくれて、一緒に気持ちを共有できる優しい人なんだよ」


 不意打ちの褒め言葉に頬が熱くなる。そう買い被られるとくすぐったいのだけれど、好きな人に褒められて悪い気はしない。


「何よ! そんなの分からないでしょ、相手が何考えてるかなんて! 松原くんの内面が好きって言えばいいの? あなたの気持ちを理解してあげるって言えば、私を好きになってくれる? なるわけないわよね。どうせそういうものなのよ、私を振るための建前でしょ? 今の彼女しか目に入っていなくて、私の方が松原くんを幸せにできるのに、バッカみたい!」


 亮介くんを悪く言わないでよ。あなたこそ、亮介くんの何を知って、そんなこと言えるの?

 私が馬鹿にされるのは構わない。その程度の痛みなど苦しくもなんともないから。しかし、亮介くんを傷付けるのは、馬鹿にするのは、許せなかった。

 ここで切れてしまっては、今までの亮介くんの心遣いが無駄になってしまう。歯をくいしばり、溢れそうな言葉を飲み下す。



 吊り目の人が、ミカの怒りに当てられて、熱くなった。


「藍澤さんも何か言いなよ? 付き合ってないなら否定すればいいじゃん。違うって言えば終わるじゃん。藍澤さんがなぁんにも言わないから、こうして目立っちゃってるんだよ? もしかして、目立ちたがりだったりする? マスクもその赤い髪も、全部作戦だった? ごめんね、気付いてあげられなくって。ミカたちと気持ち悪いねって噂するのに夢中だったの」


 目の前の人と、記憶の楓が一瞬重なる――。


「けどさ、もう気付いちゃったから、次からは触れないようにするよ。みんなで藍澤さんのこと、無視するね?」


 ――いや、違う。この人は楓じゃない。

 楓は私の考えていることを見透かした上で、私の心をえぐる言葉を、容赦なく選んで突き刺してくる。この人は勘違いをしている。私の仮面は、目立たせないためにあるのだから……。


「なあ、友達を傷付けて、何も感じないのか? お前らそれで、人間やれてるんだ?」


 心外だわ、とミカは言った。


「私たちだって人間よ? でも、何にも感じない。蟻を踏み潰す度に哀しんでる人に会ったことある? そんな人存在しないわ。それとおんなじ。藍澤さんは、友達じゃないもの」


 それなら私に興味を持たないでよ。蟻がどう生きようと、そんなの蟻の勝手でしょう。

 好きにさせてよ。



 眼鏡の人がふと、


「縁木さんはどう? 中学校が同じだったんでしょ? 仲は良かった?」


 彼女に話を振った。



 楓の顔が、歪んたように見えた。

こんにちは、白木 一です。

不測の事態でものすごくがんばりましたし、眠たいですし、かばんさんやフレンズの勇姿を見届けないといけないので、これを後書きにします。

セルリアン、エンディング直前、固まって、泣きました。

Twitterで宣伝してから、寝ます。

こんな自堕落な白木 一と、私の作品を、これからもよろしくお願いいたします。

おやすみなさい。

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