イモウト。
「好きな人ができたんだって」
拍子抜けするほどあっさりと、蘭さんは答えを口にした。
「コンビニに来たお客さんに一目惚れしたあげく、気を引きたい一心で格好つけたことを言ってしまった、なんて恥じらってたわ。今の紅葉ちゃんと同じ、真っ赤な顔で。あら、心当たりでもあるのかしら。ねえ?」
うふっ、とハートマーク付きの微笑みが添えられる。
嫌だ! こんな色恋沙汰が主食のおばさんみたいな、どことなく私の母さんと似ている蘭さんを、私は見たくない!
しかし、今ので変なスイッチが入ってしまったのか、蘭さんの様子がおかしくなったまま戻らなくなる。
「正直どう思ってるの? 亮介のこと。お似合いのカップルだとおねいさんは思うけど。
一応付き合ってるみたいだけど、告白の言葉が脅し文句じゃあダメよね。亮介あの見た目で結構うぶだから、心配していたのよ?
あれ? そんなことない?
違う違う、紅葉ちゃんに馴れ馴れしいのは私のアドバイスがあったからよ。綺麗系で爽やかなイケメンが肉食系って、定番だけど萌えちゃうよね。
大事な愛しい弟に、好きな人ができたのよ? 姉として応援しないわけがないじゃない」
既にエンジンがかかってしまっているせいで、私には止められない。
憧れよりも帰りたい気持ちが止まらなくなってきた。
この空気から、状況から、解放されたい。いっそこれが夢だったらよかったのに。
なおも蘭さんのマシンガントークは続き、銃口が私に向いた。
「紅葉ちゃんの肌、とっても綺麗ね。そこいらの子とは透明度がまるで違う。それに高校生とは思えないほど垢抜けていて、大人っぽい。私のマネージャーや社長さんに紹介したいくらい。
芸能界に興味ない? 紅葉ちゃんならあっという間に売れる、絶対よ。将来仕事に困ったら相談に乗るわよ。まあ、早いに超したことはないけれど。考えといてね。
それにしても、こんなにかわいい子に目をつけるなんて、亮介見る目あるわね。流石、私の弟。
あーあ、紅葉ちゃんみたいな妹が欲しいなぁ。ねえ紅葉ちゃん、いっそのこと私のイモウトになっちゃいなよ。二年後の高校卒業と同時にさ。
どう? 亮介の経済力に不安があれば、私が養ってあげるのもありね」
な、何を言い出すのだ!?
蘭さんの妹になるということは、つまり……その、そういうことで…………。
とにかく、私、まだ、十六歳なんですがっ!?
将来の夢もこれからの進路も決まっていないのに、気が早すぎる!
亮介くんとの関係も、始まりは渋々付き合っていて、デート以降気持ちが変わったと言っても、そんなに先を見通したものじゃない。
亮介くんが好きで、彼の優しさが嬉しくて、一緒にいると楽しい。それだけで幸せになれる。
亮介くんをもっと知りたいとは思うけれど、今が精一杯で、未来に目を向けたことはなかった。
蘭さんの妹に、つまり、亮介くんの――。
「紅葉ちゃんが家族になったら、松原紅葉かぁ。いい響きね」
松原紅葉。悪くないかもしれない。淑やかな大和撫子のように感じられて、いい。
はっ、私は何をしているんだ。好きな人の名字と自らの名前を合わせて喜ぶだなんて。頭がおかしくなったのかと言われても、否定できない。
「藍澤亮介もいいわね」
誰か、蘭さんを今すぐ止めて!
私にはどうすることもできない。止めるどころか巻き込まれてしまいそうで、それに、もう影響を受け始めている。
このままでは危険な扉を開けてしまう。
後戻れなくなってしまう。
だが、新世界への扉が開くことはなかった。
彼の声が、私を現実へと引き戻した。
「松之葉さん、出番ですよ」
「あ、はいっ! って、あら、お帰り。亮介」
よく通る返事をした蘭さんの視線の先には、なぜかものすごく怒っている亮介くんが、立っていた。
それはそうと、何? 今のやりとり。
こんにちは、お盆休み? 何それ?? な、白木 一です。
お盆休みも普通にお仕事ありましたよ?
一流企業にはあるみたいですけれど。
さて、久し振りの投稿ですが、早速暴走しております。
おねいさん、もとい、松原姉、私そっくり恋愛暴走トレインでした……。
私の場合はただキュンキュンしたいだけなのですが、蘭さんには一応そういうふうになった理由があります。
その辺りはおいおい、ということで。
脳内お花畑、恋愛脳の痛い気100%な私の書いた恋愛小説を、どうぞよろしくお願いいたします。




