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モミジ、色づく。  作者: 白木 一
第三章 シスターコンプレックス王子様。
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藍色の石がつなぐ糸。

 亮介くんの彼女の噂は、鎮まるどころか白熱するばかりだった。彼女を目撃したという証言がどんどん挙がり、休み時間になるたび亮介くんは追われている。

 毎朝の登下校も私に迷惑がかからないようにと、亮介くんから暫く控えようと言われた。

 私から始めたことではないからどうこう言える問題じゃないけれど、少し寂しい。

 毎晩メールしたり電話したりはしている。彼との繋がりが切れてしまったわけじゃない。

 でも、物足りない。

 初めての感情にもやもやとしているうちに、約束の土曜日が訪れた。



 どんな人かは知らないけれど、亮介くんのお姉さんに会うのだからと、髪は染めていない。日差しが強いのもあって、代わりにつばの広い麦わら帽子を被っている。

 こうして髪を染めずに外出することへの抵抗が、以前より薄れた気がする。極力外には出ず、髪を染め、マスクをつけ、自分でも私が誰かわからないようにならないとダメだったのに。過去のしがらみから、少しでも抜け出せた証なのだろうか。

 着ている服は私の唯一の晴れ着。名前さえ知らない亮介くんの知り合いに買ってもらった、ANエヌ=ZERAゼーラの水色のワンピース。

 足下は白いミュール、母さんから借りた薄桃色のハンドバッグを持つ右手には、最近買ったブレスレット。深い青色のラピスラズリという宝石があしらわれている。雑誌に載っているのを見つけて、つい買ってしまった。デザインのかわいらしさと、誕生石だったこと、憧れていたこと、そして、石の冷たさに惹かれたのである。何もかもを突き放しそうな、その冷たさに。

 調べてみるとラピスラズリには、幸運を呼び込んだり、災難を遠ざけたりする力があるらしい。うのみにするほど信心深くはないけれど、信じてみるのもいいかもしれないと思った。



 亮介くんの家まで歩いていると、あることに気付いた。気付いてしまった、の方が正しいかもしれない。

 亮介くんの家は、蒼浦高校から、百メートルも離れていなかった。

 つまり、亮介くんが私の家に寄ってから登校することは大変な遠回りなのだ。

 普段そんな素振りを一切見せず、笑顔で私を待っていたなんて。恥ずかしさや切なさが私の心いっぱいに広がって、堪えられなくなる。

 彼に会ったら、まずはありがとうを伝えよう。



 額の汗をハンカチで拭い、共用玄関のインターホンで亮介くんを呼び出す。

 すぐに部屋と繋がり、


『どうぞ』


 という女性の声と同時に、自動でドアが開いた。

 素っ気ないけれど、若い人だとはわかった。おそらくこの人が亮介くんのお姉さんなのだろう。

 緊張でうまく声が出せず、カメラに向かっておじぎをしてマンションに入る。

 玄関の前に立ち、インターホンを押そうとするより先に、扉が開いた。

今度は驚きで声が出せなかった。


「初めまして、紅葉ちゃん。とりあえず入って入って」


 固まって動かない私を引きずるように、その女性ひとは私を家に招き入れた。

 知っているようで知らなかった、眩しい笑顔が咲いた。

 目の前にいるのは、雑誌やテレビの中でしか会えないと思っていた女性ひと

 ラピスラズリのブレスレットをつけていた人。

 中学生の頃から憧れていた女性ひと

 モデルであり俳優でもある、松之葉まつのはらんさん、その人だった。

こんにちは、白木 一です。


雨すごかったです。

台風どこかへ去ったのに、台風一過にはならず、でした。


しばらくは、ツインズ・ラブホイッスルのエンドレスリピートで執筆します。

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