届かない告白。
放課後、靴箱に紙切れが入っていた。
周りに人の気配がないことを確かめてから、紙切れに目を落とす。
『ごめん、先に帰る。何かあったらメールくれ。
rmatsubara.xxxxxx……
俺は大丈夫だから。
P.S.噂になってる人は、たぶん俺の姉ちゃんだと思う。
心配させたかもしれない。ごめん。
でも、このことは秘密にしておいてほしい。頼む。
松原亮介』
ほっとした。
たくさんの人に囲まれて、追いまわされて、亮介くんが辛い思いをしていないか心配だったから。
『秘密』の理由は気になるけれど、亮介くんが大変なときに訊くのはためらいがある。それに、彼を信じると決めた。亮介くんと同じように、向こうから話してくれるのを待とう。
家に帰って早速メールした。
『教えてくれてありがとう。
私は、亮介くんを信じてるから。』
送信から一分と経たず、返信が届いた。
『何で秘密か知りたくないか?
土曜日の昼頃、うちに来てほしい。
紅葉を姉ちゃんに会わせたいんだ。
住所は
蒼浦町二丁目一番地のマンションで三階二号室。
俺も紅葉のこと信じてるよ。
好きだから。』
危うくスマホを取り落とすところだった。
亮介くんを好きだと意識してから、メールの文章だけれども、彼に好きだと初めて言われた。
思わず枕に顔をうずめる。顔から火が出ると言っても過言ではないほど、胸は高鳴り、頭に血が上っているのがわかる。
たった二文字の言葉なのに、知ってるはずの言葉なのに、私の知らない言葉みたいだ。
堪えきれないまでに膨れ上がった想いが、溢れてしまう。
枕に顔を押し付けたまま、「好き」と呟いた。
「ちょっとぉ。紅葉、聞いてるの。お夕飯できたって何度も言ってるでしょぉ」
これでもかとフリルにまみれたエプロンを着た母が、ノックもせずに扉を開けた。
「ばっ! 勝手に人の部屋、入ってこないでよっ!」
「どれだけ呼んでも紅葉が来ないから、わざわざ私が来てあげたのに。そんなことより顔真っ赤だけど、大丈夫? 熱でもあるんじゃないの?」
「ないっ! ないからっ! 何でもないからっ!!」
「ならいいけど……。とにかく、ご飯できたからね」
「すぐ行く!」
母さんはしばらく私の部屋を見回すと、何も言わずに一階へおりていった。さっきとは別の意味でドキドキした……。
再びメール画面を開く。
何て返せばいいのだろう。
一分ほど画面とにらみあい、『私も』と打ち、すぐに消した。
無理だ。いくらメールだとしても、まだ、伝えられない。
三分後、考え抜いた末にできた文章は、
『楽しみにしてる』
たった一言だけだった。
やっぱり私は意気地なし。
こんにちは、白木 一でした!
妄想がっちりぶつけられて幸せなので、
後書きはおわりです。




