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モミジ、色づく。  作者: 白木 一
第三章 シスターコンプレックス王子様。
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届かない告白。

 放課後、靴箱に紙切れが入っていた。

 周りに人の気配がないことを確かめてから、紙切れに目を落とす。


『ごめん、先に帰る。何かあったらメールくれ。

rmatsubara.xxxxxx……

俺は大丈夫だから。

P.S.噂になってる人は、たぶん俺の姉ちゃんだと思う。

心配させたかもしれない。ごめん。

でも、このことは秘密にしておいてほしい。頼む。

松原亮介』


 ほっとした。

 たくさんの人に囲まれて、追いまわされて、亮介くんが辛い思いをしていないか心配だったから。

 『秘密』の理由は気になるけれど、亮介くんが大変なときに訊くのはためらいがある。それに、彼を信じると決めた。亮介くんと同じように、向こうから話してくれるのを待とう。



 家に帰って早速メールした。


『教えてくれてありがとう。

私は、亮介くんを信じてるから。』


 送信から一分と経たず、返信が届いた。


『何で秘密か知りたくないか?

土曜日の昼頃、うちに来てほしい。

紅葉を姉ちゃんに会わせたいんだ。

住所は

蒼浦町二丁目一番地のマンションで三階二号室。

俺も紅葉のこと信じてるよ。

好きだから。』


 危うくスマホを取り落とすところだった。

 亮介くんを好きだと意識してから、メールの文章だけれども、彼に好きだと初めて言われた。

 思わず枕に顔をうずめる。顔から火が出ると言っても過言ではないほど、胸は高鳴り、頭に血が上っているのがわかる。

 たった二文字の言葉なのに、知ってるはずの言葉なのに、私の知らない言葉みたいだ。

 堪えきれないまでに膨れ上がった想いが、溢れてしまう。

 枕に顔を押し付けたまま、「好き」と呟いた。


「ちょっとぉ。紅葉、聞いてるの。お夕飯できたって何度も言ってるでしょぉ」


 これでもかとフリルにまみれたエプロンを着た母が、ノックもせずに扉を開けた。


「ばっ! 勝手に人の部屋、入ってこないでよっ!」


「どれだけ呼んでも紅葉が来ないから、わざわざ私が来てあげたのに。そんなことより顔真っ赤だけど、大丈夫? 熱でもあるんじゃないの?」


「ないっ! ないからっ! 何でもないからっ!!」


「ならいいけど……。とにかく、ご飯できたからね」


「すぐ行く!」


 母さんはしばらく私の部屋を見回すと、何も言わずに一階へおりていった。さっきとは別の意味でドキドキした……。

 再びメール画面を開く。

 何て返せばいいのだろう。

 一分ほど画面とにらみあい、『私も』と打ち、すぐに消した。

 無理だ。いくらメールだとしても、まだ、伝えられない。

 三分後、考え抜いた末にできた文章は、


『楽しみにしてる』


 たった一言だけだった。

 やっぱり私は意気地なし。

こんにちは、白木 一でした!

妄想がっちりぶつけられて幸せなので、

後書きはおわりです。

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