第一話
朝、髪を染めている時間が、一番落ち着く。新しい自分になれるようで、強い自分になれるようで、言葉ではたとえられない心地良さが、私の身体を包んでくれる。
肩に届くか届かないかくらいの毛先を、少し、染めるだけ。そんな毎日のささやかな儀式が、私を守ってくれている。
軽く髪を揺らして、今日の私を確認する。鏡に映る赤い毛先に満足して、小さく息を吐いた。
赤色。それは、血液の色。私は生きている。
赤色。それは、危険の色。私に近付かないで。
赤色。それは、革命の色。私は何者にも屈しない。
玄関のチャイムが鳴って、すぐさま母さんの声が飛んできた。時間通りだ。
「紅葉、早くしなさいよ。亮介くんが待ってるでしょ」
母さんが松原くんと世間話を始めないように、すばやくブレザーを羽織る。ブレザーのボタンは留めない。イメージは、母さんのコレクションしているビデオの中の、ひと昔前のスケバン。スカートは出来るだけ長く、セーターを腰に巻き、ルーズソックスはだらしなく穿く。そして、大きめのマスクで鼻と口をすっぽり覆う。
この姿の私は、誰にも負けない。誰もが私を遠ざける。
「おはよ、藍澤」
彼、松原亮介を除いては。
こんにちは、白木 一です。
高校時代に書き溜めていた恋愛小説となっております。
初めに忠告しておきますが、かなり痛いです。
いつもよりはハイペースで投稿できると思いますので、よろしくお願いいたします。
あらすじが、売れない少女漫画みたいですが、気にしないでください……。
白木 一の黒歴史が、今、始まる。