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プロローグ
「月乃」
少し高めの優しい声が聞こえる。
なんだか、心地よい。
「月乃...」
右手に温もりを感じて顔を上げると、見知らぬ女の人の顔がぼんやりとそこに見えた。
私よりも少し小さな男が女のもう片方の手を握っているのが目に入って、私は女も男の子も誰かはなんて知らないのに、胸に強く痛みを感じた。
「月乃...月乃...」
ここで私は女の声が震えていることに気がついた。繋いだ手に力がこもる。何か言おうとするけど、上手く声が出せない。その続きを、私は聞きたくないのに。
「ごめんね。」